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深夜の襲撃
しおりを挟むロイ視点
陛下と父上達が襲われてから部屋にリリー達と籠っている。
最初こそ動揺していた母上達も今は落ち着いている。
リリーも落ち着いたようだ。
父上達が動き回っている中、僕も手伝いに外に出たいがリリーが不安がるので出るに出られない。
外はバタバタしていているのに何も分からない事に苛立つ。
そこへ殿下が来て
「済まない、ロイを少し借りるがいいだろうか。」
とリリー達に問い、頷いたのを確認し僕を連れ出した。
「済まない、少しここに居てくれ…」
と言い、深く息を吐いた。
「殿下、大丈夫ですか?」
「意外とキツイな…ハロルドやカイル殿達と今後の対応などを話しているが、父上が襲われたという事実はさすがに応えるな…手が震える…まだまだだな、俺は…。」
「殿下、当たり前ですよ。父親が、それも国王が襲われたのですよ、手も震えます。僕も同じです。父上が何の抵抗も出来ず死ぬところだったのですから。」
と手を見せた。
「お前もか。フゥー少し落ち着いた。
ロイも何かやっていた方が落ち着くぞ。手伝え。」
と言って父上達の所に連れて行った。
「ロナルド来たのか。シェリル達は大丈夫か?」
「最初は動揺してましたが今は落ち着いています。」
「そうか。済まなかったな、心配かけた。」
「いえ、無事で良かったです…」
「ロイにもこれからの流れを説明してくれ。皆の協力が必要だ。」
「分かりました。」
父上が今後の事を説明してくれた。
この大所帯での移動は危険な為、ここで敵を向かえ撃つらしい。
相手の詳しい情報がない為、今調べている最中でそれが分かり次第配置につけるよう話し合っているところのようだ。
「今いる人数で警護と殲滅、捕縛をしなければならない。
ハロルド、サイモン、護衛について来た四名の内二名が敵に対応してもらう。
俺に付いてるハンスと護衛二名、カイル殿、アラン殿、ロイは女性陣とランソル家、父上と俺がいる部屋で待機し、万が一敵が来た時は俺も含めて戦う。大勢だと分かった時はまた練り直そう。」
少し休憩し皆でサイモン殿の帰りを待っている時、ジュリア様がいない事に気付き、大騒ぎになった。
ハロルド様は意外と冷静で、おそらくサイモンの所でしょうと言っていた。
ジュリア様って肩刺されたって聞いたんだけど…と思ったが口には出さなかった。
父上達が「あ~そうだわ~」という顔をしていたので。
案の定しばらくしたらジュリア様は戻ってきて、陛下に報告に行っていた。
陛下の寝室から、
「その怪我で何してるんだ、ジュリア!」
という声が聞こえた。
陛下が出て来て、
「ロータスが私の知ってる者かはまだ確認出来ていないが、私達を襲った者達で間違い無さそうだ。今、サイモン達が見張っている。戻り次第、皆で作戦を練り直す。
ハロルド達も交代で休んでおけよ。」
と言って寝室に戻った。
それぞれ家族の所へ顔を出し、これからの事を説明した。
父上達は母上達に泣かれ、ようやく落ち着かせた後再び陛下の部屋の応接室に集まった。
だいぶ時間が経ってからサイモン殿が戻った。
報告では確認出来た人数は五人、一人はロータスと呼ばれる人物でリーダー格らしい。
他の四人は捕まえた者達と同じく直近の部下なのだろうという事、
その部下達は露天風呂で襲ってきた者達と力は同等であればこの人数でも対応しきれるだろうとの事だ。
リーダーと数人で買い出しに出た帰りに宿の周辺を探っていたそうだ。
小屋の中にはこの宿の見取り図もあったと言うなら、また狙ってくる可能性はかなり高くなった。
陛下は働き通しのサイモン殿に休むように勧め、サイモン殿も部屋を出て行った。
「ハロルド、応援の護衛はいつ頃到着する?」
「日の出前には到着するかと。」
「日の出かあ…間に合うと思うか?」
「どうでしょう…夜中に来る可能性もあるので…。ですが、昼間襲ってから誰も戻って来ない状況では普通来ないでしょう、切羽詰まって闇雲に突っ込んでくる事がなければ。
もしも考えもなしに突っ込んでくるなら向こうに勝ち目はないですね。」
「夜中に襲撃される事を想定して配置につけ。今後は眠れないな…済まない。」
「王なのに謝ってばかりですね、今日は。」
「俺の我儘のせいでこうなったんだ、反省するだろう。」
「さっさと終わらせて今度こそゆっくり露天風呂入りましょう。」
それからは殿下の言っていた配置に着いた時に、殿下付きの影の人が戻ってきた。
「こちらに向かってます。」
既に使用人は帰らせていたし、代理の家族も僕達のいる部屋に移動させた。
ハロルド様、サイモン殿、護衛二人が配置に着いた。
この宿は平家作りだ。窓からも侵入は出来る。部屋の内側の窓の所に影の人。
部屋の前には護衛二人。
部屋の外側にハロルド様、
サイモン様は全体的に敵の動きを見るため隠れているだろう。
灯りは最小限にここだけ敢えて点けている。
しばらくすると、外に金属音が響く。
ドサドサと倒れる音。
男の騒ぐ声。
緊張感が増した。
影の人の殺気が増した頃、外が男の騒ぎ声だけになった。
え?もう終わったの?と思った頃、影の人が
「マジか⁉︎」と呟いたと思ったら、
窓からハロルド様が
「全員捕縛し気絶させました。」
と声をあげた。
皆、息を止めていた様で全員が息をはいた。
陛下が女性陣とランソル家を護衛に別の部屋への移動を指示し、ハロルド様とサイモン殿、飛び出した影の人が捕縛した五人を連れてきた。
「陛下、怪我なく無事に捕縛出来ました。」
と報告したのはジュリア様だった。
深夜の襲撃はこうしてあっという間に終わった。
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