109 / 125
怪我
しおりを挟むサイモン視点
「陛下ーーーーーーー!」
と叫んだ時、黒い影が陛下を庇った。
一人の敵は交わしたが、手練れの一人に肩を刺された母がいた。
「母上!」
「集中しろ!陛下は私がお守りする!」
「御意」
そこからのイーガー家は強かった。
父上と僕の殺気が倍増し、敵が怯んだ。
母を執拗に狙う手練れを父上が相手をし、
僕と母は怯んだ敵を倒していった。
手練れのみになって、三人で向かおうとした時、
「降参!参った」
と剣を捨てた。
手練れをすばやく縄で縛り、戦闘は終了した。
「ジュリア!」
と陛下が駆け寄る。
「ジュリア、済まない、私のせいで傷を負わせた…」
「陛下、ご無事で良かった。これくらい大丈夫でございます。それよりも服を着てください、丸見えです。」
「丸見えよりもお前の怪我が先だ。ハロルド、ジュリアを早く運んで医者に見せろ!
他の者は捕らえた者どもを連れて行け!女性陣の警護も忘れるな!
カイル、お前が指揮を取れ。
私とルイが動くのは邪魔になろう。
部屋で指示を出す。
アランも手伝ってやってくれ。」
と一気に指示を出した。
護衛達に残党を任せ、陛下の護衛に付いた。
「サイモン、済まない…ジュリアに怪我を負わせてしまった…。」
「いえ、母は陛下を守る為、城からずっと付いていたようです。陛下を守れて喜んでますよ。」
「・・・私は何をしていたのだろうな…
ジュリアを恐れ、傷付けてきた…。
今度は身体に傷を付けてしまった…
王として失格だな…。」
「陛下、母は元陛下の影ですよ、あんなもの傷の内に入りません。明日には動き回ってますよ。」
「ハロルドにも悪い事をした…。カイルにもアランにも…。」
「悪いと思うならもう我儘はやめてください。アイリス様に捨てられますよ。」
「そうだな…ジュリアにはまた命を救われた。何か褒美をしないとな!」
「喜びますよ。さあさあ早く戻りましょう。」
陛下の部屋へ戻ると、殿下達がいた。
「父上!」
と殿下が駆け寄る。
「大丈夫だ。」
「何があったのですか!サイモンの様子がおかしかったので心配しておりました。」
「先の残党が襲ってきた。」
「⁉︎父上、怪我はないのですか?他の皆は?」
「サイモン、説明してやれ。奥方達も心配だろう。」
「了解しました。」
殿下達に説明が終わると
「ジュリア殿が間に合って良かったです…。本当に良かった…。
でもほとんどが捕まり、もう勢力もあると思えない今、何故襲ってきたのでしょう?」
「取り調べで聞くしかないだろう。だが、ジュリアを執拗に狙っていたのが一人いたな。」
「ジュリア殿を?」
「ああ、ジュリアが私を庇って肩に傷を負った。ハロルドが付いている。
あの手練れ、ハロルドにヤラレるかもな。サイモンもか。」
「父上に任せますよ。でもあのしつこさはひょっとしたら母上が狙いだったのかもしれません。後で母上に見覚えがないか確認します。」
「陛下、主人達は大丈夫だったのですか?」
「怪我はないが、裸だったので何も武器がなかった。
私の盾となり、恐ろしかったであろう。
危険な目に合わせ申し訳なかった。」
「いえ、陛下の側近となった身、覚悟は出来ておりましたでしょう。お気になさらず。」
とシェリル様が言う。
「もうこんな目には合わせない。城から警備の者が着き次第私は戻るゆえ、他の皆はゆっくり温泉に入り、休んでくれ。
サイモン、何か連絡があったら教えてくれ。」
と言って寝室に入ったので、僕は残り陛下の護衛をした。
殿下付きの影に他の方達の護衛を頼み、殿下は陛下の元に行き、指示を仰いでいた。
母上の怪我は大丈夫だろうか…
そんな事を考えていると、父上が来た。
「陛下は?」
「寝室に殿下といます。母上の怪我は?」
「ジュリアにとっては大した事はないんだろうが、しばらく左腕は使えんな。
しかしジュリアはいつこっちに来た?お前は知っていたのか?」
「僕も知りませんでしたよ、来る途中で会いましたが。
ここに来たら既にあの状況で父上に報告なんかする暇なかったですよ。」
「アイツは全く…。しかしジュリアがいなかったら危なかった。まだまだ修行が足りんな、俺らは。」
「そうですね、母上には敵いません。」
「交代する、ジュリアの所に行って来い。」
そして、母上の所に行った。
「母上、大丈夫ですか?」
「こんな傷大した事ないわ。でも歳ね~あんなのも避けられないなんて。ちょっと訓練し直しね。」
「これ以上強くなってどうするんですか、少しじっとしてて下さいよ。」
「・・・陛下、私の事心配してくれてたんだけど、あれって気のせいじゃなかったわよね?」
「気のせいじゃないですよ。物凄く心配してましたし、反省してました。母上に今まで傷つけてきたうえ、身体にまで傷つけてしまったって。」
「陛下がそう言ったの?ホントに?」
「本当ですよ。多分陛下はもう母上を恐れてはいません。」
「ホントに?本当に?」
「しつこいなあ、本当ですよ!」
「良かった~~。長かった~身体張った甲斐があるってもんね!」
「そうですね、早く元気な姿を見せてやって下さい。」
「明日には動けるわ。明日ご挨拶に行かなきゃ!」
「はいはい、わかりました、もう休んで下さい、傷が開きますから!
あ!母上、あの手練れに見覚えは?」
「あの襲撃の時一人逃した。そいつかもしれない。」
「それでは。」
陛下に心配してもらえた事が嬉しくてはしゃぐ母に安心して部屋を出た後、残党の所へ向かった。
「お前、名前は?誰の指示?」
「・・・・・」
「陛下殺してどうすんの?何したいの?」
「別に陛下なんかどうでもいい。俺はあの女を殺りたかっただけだ。」
「どうして?」
「・・・」
「知ってんの?あの女の事。」
「昔、やり合った事がある…」
「へえ~あの人強いのによく助かったな」
「傷は負わされた…運良く逃げられた。
今まであんな深傷を負ったことなんかなかった。だから、またやり合いたかった、それだけだ。」
「ハア~それだけで陛下襲ったの?凄いね、馬鹿なの?」
「好きに言え。あの女はやっぱり凄え、またやり合いたい。」
「やれねえよ。他の奴等はなんで?」
「知らねえよ、他の奴らの事は。
俺はたまたま飲み屋で誘われただけだ」
「ふう~ん、たまたま…でもお前を狙って誘ったんでしょ、お前意外と有名人?」
「別に…有名なんかじゃねえよ…」
「別名あったりする?」
「・・・・」
「まあ、いいや、じゃあ今日はこれで。」
やっぱりコイツは母上狙いだったか…
父上が知ったらコイツ、ヤバいな…
そして他の残党の所へ向かった。
57
お気に入りに追加
863
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
【完結】婚約者を譲れと言うなら譲ります。私が欲しいのはアナタの婚約者なので。
海野凛久
恋愛
【書籍絶賛発売中】
クラリンス侯爵家の長女・マリーアンネは、幼いころから王太子の婚約者と定められ、育てられてきた。
しかしそんなある日、とあるパーティーで、妹から婚約者の地位を譲るように迫られる。
失意に打ちひしがれるかと思われたマリーアンネだったが――
これは、初恋を実らせようと奮闘する、とある令嬢の物語――。
※第14回恋愛小説大賞で特別賞頂きました!応援くださった皆様、ありがとうございました!
※主人公の名前を『マリ』から『マリーアンネ』へ変更しました。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる