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ローリー
しおりを挟む学院が休みの今日、シアがマシューさんに会う日だ。
結局隠れてシアに付いて行くのは変装した私とロイになった。
私とロイが変装すると聞きつけた『愛でる会』メンバーと殿下が急に張り切りだし、
衣装選びを始めた。
私は髪をおさげにし、お仕着せを着て“メイド”風に。メガネもかける。
ロイの変装は、
メンバー、殿下がああでもない、こうでもないと話し合った結果、
“お嬢様風”になった。
どんなに服を着替えても滲み出る煌びやかさ、神々しさが消えない。
それならそれを活かそう!となり、ドレス着用と決定した。
ロイは抵抗しまくった。
殿下が、
「じゃあ、オレに付いてるサイモンに行かせるけど。」の一言で諦めた。
着替えは家でさせてくれと懇願した。
シェリルおば様に相談したら、
「娘が欲しかったのよ~でも私のドレスじゃロナルドは着れないわよね…任せなさい!」
と仕立て屋を呼び、既製品のドレスを山程持って来させた。
ロイは最初こそ嫌がったが、
試着したら「あれ、意外とイケるかも」とか言って衣装選びに参加した。
そして今、シアがマシューさんと待ち合わせているカフェに私とロイはいる。
私の横に座り優雅に紅茶を飲んでいるロイこと“ローリー”は女神のように微笑んで
「リリーもお座りになったら?」
と言っている。
恐ろしいほどに美しい。
さすがのシアも笑うどころか、拝んでいる。
殿下がよくロイに、
「オレが目立たないから隣りに来るな」と言っていた気持ちがわかった。
「滅相もございません。私は使用人ですので。」
「そんなことないわ。わたくしがあなたの僕なのよ。」
「お嬢様、何を言っているのか分かりません。」
なんて遊んでいるとマシューさんがやって来た。
私達がいる席はシアの後ろだ。
コソコソしてるより堂々としてた方がバレないだろうとなり、ここに座った。
シアはこちらに背中を向けている。
真正面では眩しくて耐えられないそうだ。
「シンシア、待たせた。」
「いえ」
「話しとはなんだい?解消の話しは終わったはずだが。」
「・・・マシュー様には他に好きな女性がいるのにどうして私に拘るんですか?
さっさと解消してそちらの方と一緒になればいいじゃないですか!
どこに文句があるのか分かりません。」
シアがいきなり本題に入った。
「他に好きな人などいないよ。シンシアの勘違いだと言っているだろう。」
「知らない人がいない程噂になっているのに?」
「皆、勘違いしているんだ。僕はシンシアが好きなのだから。」
「人前で堂々と仲睦まじい姿を見せつけといてどの口が言ってるんですか!じゃあ、その方と今後一切会わないと約束出来ますか!」
「出来るよ、それでいい?」
「私は婚約者以外の人と口付けするような人と結婚なんかしたくありません。」
「あれは向こうがしてくれと頼まれたからしただけで僕からしたわけではないよ」
「屁理屈です。やった時点でそれは不貞です。浮気です。裏切りです。また頼まれたらするって事ですよね?」
「シンシアがしないでと言うならしないよ。」
「・・・それじゃあ、私との約束を断り他の女性に会っていたのはどうしてですか!」
「会わないと死んでやると言われたから会いに行ったんだよ。死なれては困るからね」
「そこまで想われる事をしたんですか!」
「何もしてないよ、勝手に彼女が僕を想っているだけだよ。」
「・・・・・・・・」
「分かってくれた?僕はシンシアが好きだから別れないよ。
この間は婚約解消なんて言うから思わず叩いてしまった。
でも、急にシンシアが僕を避けるようになって会えなくなったからイライラしてしまったんだ。済まなかったね。」
イライラするのはこっちだ。
本気で悪いことをしたと全く思ってないんだ、この人。
それに本当にシアの事が好きなのか分からない。嫌いではないんだろうけど、本気で好きなのかは分からない…。
すると急にマシューさんが真っ赤になった。
え?どうした?どこ見てる?
・・・・・・・・・“ローリー”だ…
真っ赤になったマシューさんはローリーを見ている。
ローリーはというと、
それはそれは美しくマシューさんを見つめて微笑んでる。
そして、
「あら、ごめんなさい、あまりに素敵な人だったので見つめてしまったわ。ごめんなさい。ニコ」
と流暢に話しかけた!
シアも思わず振り返った。
「あ、あの、いえ、大丈夫です!」
「そう、だったら良いのだけれど…。
それにわたくし、はしたないことに貴方達のお話聞こえてしまったの。ごめんなさいね。」
「あ、こちらこそ、お耳汚しをしてしまい申し訳ありません。」
「わたくしこれも何かのご縁だと思いますの。良ければ相談にのらせて頂きたいと思いますの、意外と他人が入ると解決出来るのよ。フフフ」
「それは・・・」
「マシュー様!話しを聞いてもらいましょう!」
「え?」
「今のままでは話しが一向に進みません。
この方に話しを聞いて貰えば何か解決策があるかもしれません!」
「え、そうかな…」
「そうです!そうしましょう!」
そうして、
シンシア、マシュー、“ローリー”の三者会談が始まった。
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