私の婚約者の苦手なもの

jun

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目覚め

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昨日、いつ寝たんだろう…あれ、昨日何してたっけ?

今何時だろう?

もうこんな時間だ。


ロイが来ちゃうから急がないと・・・・・



ロイ…


いや、いや、いや、イヤーーーーーーーーー


バタンとドアが開き、お父様とお母様が入ってくる。

「お父様、ロイは?ロイは?」

お母様が私を抱きしめて
「落ち着いて聞いてね。ロイ君は無事よ。
昨日病院に行った事は覚えてる?」


「ぼんやりしててよく覚えてないの。でも頭を打ったとか血がたくさん出たとかはなんとなく覚えてる…」


「ロイ君の事気になるだろうから先に話すわね。治療を終えて今は病院にいるわ。まだ意識は戻ってはいないけど、死んでしまったりはしないわ。分かる?リリー。」


「うん…。」


「あなた、知らせを聞いてから何も話さなくなってしまって、誰が話しかけても一言を話さず、動かなくなってしまったのよ。
カトリーヌさんとシンシアさんも貴方を心配して何度も話しかけたのよ。
みんな心配したのよ…」
と言って泣いてしまった。


「お母様、ごめんない…。私、ロイが事故に遭ったと聞いて、何も分からなくなってしまって…。」
と言った後、涙が出た。
泣き出した私をお父様がお母様ごと抱きしめてくれた。
お父様も泣いていた。

「心配したよ、リリー。」

しばらく三人で泣いてから病院での話しを聞いた。

昨日の私は知らせを聞いてから全く話さなくなり、動きもしなくなっていたそうだ。
病院に着いても、泣く事もせず、誰に話しかけられても黙ったままで、人形のようだったと。
ロイにはまだ会う事が出来ず、動かない私をお父様が抱き上げ帰って来てくれた。
帰って来た途端、ロイの所に行くと暴れる私に薬を飲ませて眠らせたそうだ。

その時の事を私は覚えていない。

ただロイが来る前に行かないと、と思っていた事は覚えている。


会えないかもしれないけど、病院へ行こうと三人で病院へ向かった。




ロイのいる病室の前まで行くとカイルおじ様とレイおじ様がいた。


「カイルおじ様、レイおじ様!」
と駆け寄った。
「リリーちゃん!」とカイルおじ様が私を抱きしめ、元に戻って良かったと何度も言っていた。
レイおじ様も良かったと言って頭を撫でてくれた。
ロイの事があるのに私の事まで心配をかけてしまっていた事に申し訳なくて泣いてしまった。
「おじ様心配かけてごめんなさい。」
と謝り、お父様とロイの事を聞いた。

昨日夜中になって漸く病室に入ってロイの顔を見れた事。
直ぐ病室から出されてしまったが、
「ちゃんと息をしていた」とお父様を抱きしめ泣いていた。


学院へは休むと連絡を入れ今日はずっとここにいるつもりだ。

シェリルおば様もやって来て
「リリーちゃん、良かった」とまた泣かれてしまい、また泣きながら謝った。

お昼前になって、少しだけ病室に入れた。

ロイはベッドで静かに眠っていた。

頭にも身体にも包帯が巻かれていた。

おば様に近くに行ってあげてと言われロイの側に行き、手を握った。

いつも繋いでいる手は少し冷たい。
握っても握り返しては来ない。

涙が出た。

ロイの頬を撫でた。
ほんのり温かい事にホッとした。

そっと額に口付けたが、やっぱり起きない。

ロイの耳元で
「ロイ、もうお昼だよ、起きて。」
と囁いてからおじ様達と交代した。


部屋を出て医師にロイの状態を聞く。

処置はすべて終わっており、目が覚めるのを待つだけで、異常が無ければもういつ目覚めてもおかしくはないのだそうだ。

病室にも自由に入ってよくなり、
一度帰って来るとカイルおじ様とお父様が病院を出た。

おば様とお母様と私で昼食を食べてすぐ病室に戻った。

三人で目が覚めるようロイに話しかけた。

「ロイ、いつまで寝てるの。リリーちゃん泣いてるわよ。」

「おば様、もう泣いてません。」

「そうよ、ロイ君。昨日は酷かったのよ。リリー、動かなくなっちゃってお人形みたいになったのよ。ロイ君、愛されてるわね~早く起きなさい。」

「お母様やめて、言わないで!」

「そうなの?私、ロイだけが好き好き騒いでるのかと思ってたけど、リリーちゃんはちゃんとロイの事愛してたのね~」

「おば様もやめて、なんか恥ずかしい!」

「そうよ、昨日帰ってからなんて、
“会いに行かないとロイが怪我してるのに走って来ちゃう”って暴れて大変だったんだから~」

「あら、可愛い。」

「だからやめて、お願い!」

「ロイ君いつもリリーの所に走って来るものね~逃げられると思ってるのかしら?」

「そう思ってるのよ、この子。バカよね~」

「ちょっとロイ、早く起きて、お願い、私恥ずかしくて死んじゃう!」
と手を握った。

よく見ると顔が赤い。
あれ?手、握り返してる?


「ロイ!」
と声をかけると

「五月蝿いし、恥ずかしい。」




そこからは大変だった。

ロイを囲み、おいおい泣いて、その騒ぎで先生が駆けつけ、私達は病室を出された。
急いでお父様とおじ様に連絡した。
そういえばレイおじ様は?と思い、見回すと側にいた。
「誰も気付いてくれないから悲しかった。」
と言っていた。

廊下で待っているとトリー達が来て、また泣いて、殿下も少し泣いていた。
シアが凄く泣いて、私が心配で堪らなかったと抱きしめて離さなかった。
殿下が無理矢理離してくれたが、まだ泣き続けていた。

トリーは
「良かった、本当に良かった」
と何度も言いながら泣いていたので抱きしめようとしたら、殿下に先を越された。

五月蝿い!と病院の人に怒られ、みんな一先ず落ち着いた所にお父様とおじ様が来た。

それからまたおじ様が泣き出して、釣られておば様が泣いてお母様も泣いてお父様も泣いて…結局、殿下以外全員泣いて、また怒られた。

静かにしなければ病室には入れないと言われて、やっと静かになった。





そして、ロイの診察が終わり病室に全員が入った。






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