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成長したい
しおりを挟む長期休暇が終わり、段々と卒業に向けて皆が
卒業してからの進路に向けての準備を始めた。
学院を卒業してからの就職先へ各自実習に行く生徒が多い。
騎士は騎士団へ、文官は王宮へ、医療は病院へなどそれぞれだ。
家を継ぐ人や卒業と同時に結婚する人は学院でいつもの授業を受ける。
私とロイは卒業したら結婚するので学院で授業だ。
シアも婚約者と結婚するらしいので私達と一緒だ。ロイはシアも学院残り組だと知り、悪態をついていた。
シアに婚約者がいたのが衝撃だった。
どんな人なのか気になるが教えてくれなかった。今度聞き出そうと思っている。
今日は忙しいのか近くにいない。
トリーはほとんど王宮にいる。
王子妃教育は順調だけど大変そうで、なかなか会えない。
ロイは殿下に呼ばれていない。
私…友達少なかった・・・
ランチどうしよかな…
「リリーちゃん、どうしたんだい?」
と用務員のおじさんが声をかけてきた。
ランチが一人だと言ったら一緒に食べようと言ってくれたうえに、おじさんのサンドイッチを食べていいと言う。
なんていい人なんだろう!
なので今おじさんと用務員室の小さなテーブルを外に出して二人でランチをしている。
「おじさん、このサンドイッチ美味しい!」
「おじさんの奥さんが作ってくれたんだよ、たくさんあるからいっぱい食べていいよ。」
と言ってくれて食べながら奥さんの話しを聞いた。
おじさんの奥さんは事故で足が不自由になってしまったのだそうだ。
おじさんは奥さんが生活しやすいようにと家の中を自分で改装したり、定時で帰れる仕事に転職したりしたんだとか。
「そうなんだ…おじさん凄いね、奥さんの事愛してるんだね。」
「事故にあったと連絡来た時に初めて、奥さんが居なくなることもあると実感したんだね。それまでは居るのが当たり前だと思ってたから。だからやってあげられる事は何でもやろうと決めたんだよ。」
「どうしよ、おじさん私泣きそう…」
「リリーちゃんは優しい子だね。
おじさんは奥さんにしてあげられる事があるだけで楽しいんだから、泣く事なんかないよ。」
そう言っておじさんは頭を撫でてくれた。
「とっても美味しかったって伝えて下さいね。今度は私が何か作ってきますね!」
「それは嬉しいな。奥さんに持って帰るよ。」
ご馳走様をしてテーブルを片付けてから用務員室を出た。
私も頑張ろうと思って歩き出した時、誰かが何処かで泣いてるのが聞こえた。
多分植え込みからなので、会員の誰かだろうから呼んでみた。
「今日は誰ですか~出てきて下さ~い」
ガサガサっとなり、出て来たのは、
・・・誰?
「えーと会員の方ですか?」
と聞けば、最近入った会員の方でした。
でも見た事がある人です。
誰だったかな…
「お名前聞いても良いですか?」
「はい。キャサリン・グロウです。」
キャサリン…キャサリン・グロウ…キャサリン…
「あ!キャサリンさん!同じクラスなのに気付かなかった、ごめんなさい。」
「いいえ、私もひたすら勉強しているので。」
「あの時噛まれて休んでからキャサリンさん、急に変わりましたよね?」
そして、あの後あった事を聞いた。
今はその時の治療をしてくれたお医者さんの所を手伝っているんだとか。
あれから必死に勉強をして将来はその診療所で働きたいと頑張っている…偉いなぁ。
「でもどうして会員になったの?まだロイのファンなの?」
「いえ、ロナルド様ではなくリリーナ様のファンになりました。」
と言って、会員になった経緯を教えてくれた。
タニヤさんvs守る会の時は会員ではなかったそうだ。とにかく勉強ばかりで周りを、一つも見てなかったんだとか。
ふと周りを見ると学院の生徒が、見張りをしたり、妨害をしたりとなんだか楽しそうだった。
そのアイデアを出し、妨害を考え、皆んなと笑って一喜一憂している姿が可愛らしくて私のファンになり会員になったんだそうだ。
なんだか恥ずかしい…。
で、今日は当番で私付きだったが、おじさんの話しに感動し泣いていたと。
うんうん、私も泣きそうだった。
頑張ろうっても思ったよ~!
あのビカビカ虫の時は香水もつけ過ぎだし、
アクセサリーもジャラジャラしていたけど今は化粧も薄いし香水もつけてない。
キャサリンさんと歩きながら一緒に教室に戻った。
キャサリンさんもタニヤさんも、今は友達になれた。
友達になりたいと思えるほど二人が変わったからだ。
私は何か変わっただろうか…
みんな少しずつでも成長しているのに私は何一つ変わっていない…
私が成長するにはどうすればいいんだろう…
いつも誰かがやってくれて気付けば終わっている。
今まで何やってたんだろう、私…。
一人でやれる事はやらなきゃ。
真面目に授業を受けて、私はロイを待たずに家に帰った。
その日、ロイを待たなかった事を死にたくなるほど後悔する事になる。
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