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新しい家
しおりを挟むあのトリーちゃんと殿下のケンカからは何事もなく、平穏な日々を送り、
気付けば今日から夏の長期休暇になる。
今年はトリーちゃんやシンシアちゃんと色々とやりたい事があったけど、トリーちゃんは王子妃教育が始まるのでシンシアちゃんと遊ぼうと思う。
ロイはどこにでも付いてくるのでいつもと変わらない。
とりあえず、
今日はお母様とタニヤさんの新しい家に遊びに行こうと思っている。
あれからタニヤさんは、別邸を出てお母様と二人で新しい家に住んでいる。
離婚はまだしていないけど、タニヤさんのお母様がもう限界だったらしい。
タニヤさんも結局学院を辞めて別の学校に行っている。
余程学院が嫌だったのか、辞める事が決まると前より元気になった。
その後、話してみたら意外とシンシアちゃんと気が合うのか、二人で盛り上がっていた。
ついでに私とも仲良くなった。
ロイは近付いてこないけど。
レイおじ様とタニヤさんのお母様の事件が解決したのはお父様から聞いた。
タニヤさんも聞いたようだけど、
「大人ってやる事がえげつないよね」
と言ってケロっとしていた。
私のお母様とタニヤさんのお母様はたまにお喋りする仲になったらしく一緒に行ってくれることになった。
ちなみに
殿下は忙しかったのかゲッソリしてたけど、
トリーちゃんに甘えて元気になってた。
夏休みはトリーちゃんが王宮に毎日来るので喜んでいる。
「リリーナちゃん久しぶり~!」
「タニヤさんは今日も元気そうだね。」
と玄関前で待っていてくれたタニヤさんと再会を喜んでいた。
タニヤさんのお母様のロザンナさんが出てきた。
「マリア様、リリーナ様、今日はこんな所まで足を運んで下さり申し訳ございません。
お久しぶりでございます。」
と丁寧に挨拶してくれた。
「ロザンナさん、そんな堅苦しい挨拶なんていらないわ。変わりないですか。」
「ロザンナさん、こんにちは。」
「はい。お陰様でタニヤと二人元気に暮らしております。」
「ねえ、家に入って入って!」
「すみません、どうぞ中へ。」
そう言われて中に入ると、小さいけど過ごしやすそうで、小物も可愛く素敵な部屋だった。
「まあ、可愛らしい部屋ね。これは二人で選んだの?」
「そうです。お母さんと二人で選んで、とっても楽しかったです。」
「そう~良かったわね。」
とタニヤさんは嬉しそうに話している。
学院にいた時のタニヤさんは、いつも怒ってるか騒いでるかで、友達になれるとは思わなかったけど、今のタニヤさんは元気で明るい女の子だ。
「リリーナちゃん、私の部屋に行こう!」
と誘われついて行く。
タニヤさんの部屋は二階らしい。
二階はタニヤさんの部屋とお母様の部屋がある。
「入って入って。」
「うわあ~凄く…可愛い部屋だね。」
「そうでしょ~!」
物凄く・・・ピンクだった…。
「座って座って!」
小さなテーブルと椅子がある。
ピンクだ。
「うん、ありがとう」
そこへロザンナさんがお茶とお菓子を持ってきてくれた。
「リリーナ様、どうぞ。
タニヤはこんな子ですが、どうぞよろしくお願いします。」
「はい、タニヤさんは面白いので好きです。お茶、ありがとうございます。」
それではとロザンナさんが部屋を出て行った。
「リリーナちゃん、お母さんのこと助けてくれてありがとう。」
とタニヤさんが頭を下げた。
「私何もしてないよ!お母様達、大人が動いてくれたからだよ。」
「お母さんから聞いたの。最初にリリーナちゃんのお母さんが、話し聞いてくれたって。
お母さん、あの事があってからどんどん元気が無くなっていって、
おじいちゃんお父様が死んじゃって助けてくれる人いないし、
私も友達とは離れちゃったしで、訳わかんなかったんだよね。」
「急にいろんな事があったからね」
「うん、急に学校辞めさせられて、新しいお父様が出来て大きな屋敷に最初は喜んだけど、怒られてばっかりだったし、お母さんは笑わなくなったし…
そしたらまた別の屋敷に行かされて、学校も厳しくて…。
今考えると怖いね、殿下を追いかけ回すなんて。でも滅多に出来る事じゃないから、良い思い出だね!」
「タニヤさん、大変だったんだね…。」
「でも今はこの家でお母さんも笑うようになったし楽しいから大丈夫!」
「貴族じゃなくなるけどいいの?」
「いいのいいの、貴族は面倒だしね。私は平民が楽だから良かったよ。」
「そっか、なら良かった!」
「うん!でもたまにおじいちゃんお父様思い出す。可愛がってくれたから。」
「おじいちゃんお父様…おじいちゃんなんだかお父様なんだか分からない呼び方だね」
と二人で笑った。
その後、お母様達のところに戻り、挨拶して帰ることになった。
「今日はありがとうございました。また遊びに来て下さい。」
「リリーナちゃん、また来てね!」
「タニヤさん、ロザンナさん、また来るね」
と言ってお母様と帰った。
今度はシンシアちゃんと来ようと思う。
シンシアちゃんなら、
“おじいちゃんお父様”の事をもっと上手く突っ込んだだろうなと思った。
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