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陛下は怖がり
しおりを挟むカイル視点
今、陛下の執務室の隣りの応接室に学生時代のメンバーが集まっている。
国王陛下のイアン様、ロンバーグ公爵のリチャード、イーガー侯爵のハロルド、ワソニック伯爵のアラン、そしてグランディ侯爵こと私、カイルだ。
「急の招集によく集まってくれた。
例のロックハート家の夜会の件が片付いた。特にカイルのところは被害者がいるからな。
直接話したかったのもあるが、お前達に聞いて貰いたい話しがあった、済まないな。」
「いえ、それにしても随分早かったですね。」
「魔王が急かしたからだ、息子のサイモンを。」
「「「え⁉︎」」」
「降臨したんですか?」
「避難した方がいいですか?」
「誰がやられたんですか?」
「待て待て、ウチの奥さんの事なんだと思ってる!」
「「「「魔王」」」」
「・・・ウチの奥さん怖いけど可愛い所もあるぞ…この前久しぶりに怒られた…カトリーヌに余計な事言ったって…サイモンも。」
「お前のせいか!目を付けられたらどうするんだよ!トラウマなんだぞ!」
「悪気はなかったんです…」
「サイモンが急がなかったら此処に来たぞ、あの人!」
「すみません…」
「とにかくルイジェルドとサイモンで、ロックハート男爵と夫人は捕縛した。
薬草と薬も確保出来た。
これから被害者の数を特定し、
被害を確定したものから内密にこちらで対応して行く。
その後の届けを出す出さないは個人の問題だからな。
男爵夫婦はその間は隔離して、夫人の治療を行なっていく。
少しでも話しが出来る状態になれば良いんだがな。」
「何故男爵はこんな事をしたんですか?」
そもそもこんな事がなければレイモンドは再婚なんかしなかった。
ロザンナも平民にはなるが穏やかに暮らしていただろう。
「男爵夫人は頑なにロザンナ夫人を、“息子を死なせた犯人”と思い込んでいた。
息子の病死が受け止められなかった夫人は精神を病んでしまった。
似た女性は全てロザンナ夫人に見えていたようだ。
何度辱めても何度も夜会にやってくると言っていたそうだ。
その女性と一緒にいた男も、謂わば一括りにされたんだな、そんな女と一緒にいるならってな。レイモンドはホントにたまたま隣りにいただけなのに狙われた…他の者もそうだそうだ。
飲み物は執事が渡していた。
執事も夫人が可哀想だからだとさ。」
「そんな…そんな事でレイモンドは…」
そんな理由で…可哀想だからってこんなのあるか!
「陛下、男爵の処分はどうするのですか!」
「カイルが怒るのは当然だ。弟が被害にあったんだからな。
だがあの状態の夫人に、正しく処罰を与えるのは難しい。
夫の男爵がいたら少し落ち着くがいないと、ひたすらロザンナに対して罵詈雑言を吐いている。なので男爵も処分出来ない。
せめて正常な会話が出来るまでは待って欲しいんだ。
治らない時は夫婦揃って毒杯だ。
大勢の人生を狂わせた。
これは決定事項だ。
これで納得出来るか、カイル。」
「はい…分かりました。レイモンドとロザンナには私から伝えます。」
「済まないな、頼む。」
「しかし、なんだかスッキリしませんね…」
とアラン。
「そうだな…そもそもロックハートの息子がメイドに手ぇ出したのが原因だろうが。
若くして亡くなったのは気の毒だが、だからって…。しかも病んでる相手に怒りも向けれない…」
とリチャード。
「男爵はどんな様子なんですか?」
とハロルド。
「ルイジェルドが尋問した時は、全て自分がやった事で、夫人を止められなかった自分が悪いと言っていたそうだ。
今はおとなしく夫人の世話をしている。」
「そうですか…聞いたら余計モヤモヤしました。」
「「「「「・・・・・」」」」」
「ところで、陛下はこの話だけで我々を呼んだ訳ではないですよね?」とリチャード。
「そうだ。
リチャードはまだ知らんだろうが、ルイとハロルドの娘のカトリーヌが婚約することになったのだが、ルイはヘンリーの片腕として王宮に留まる事になってただろ。
て事はカトリーヌも王宮で暮らすって事だろう?」
「そうですね」
「カトリーヌが住むなら来るよな、魔王…」
「来る…でしょうね…たまに。」
「・・ルイに爵位を与えてもいいだろうか?」
「・・・」
「…陛下の話したい事ってコレ?」
「皆に聞いて欲しかったんだよ…」
「陛下、ジュリアは怒らせなければ可愛いですよ。」
「「「「そう思ってるのはお前だけだよ」」」」
とハロルド以外が声を合わせた。
「イアン、もう帰るわ。」とリチャード。
「イアン、俺も帰ってレイモンドに報告するから。」と私。
「イアン、怖いから爵位って…ないわ。」
とアラン。
「私は良いと思いますよ、ルイジェルド殿下は優秀ですし、学院の件も今回の件も速やかに対応出来てましたし。」
とハロルド。
「イアン、ここで決めることじゃないのは明らかだよ。」とアラン。
「怖かったんだよ、相談したかったんだよ!」
「はいはい、それじゃあまた何かあったら呼んでください。」
とそれぞれ帰っていった。
陛下は後ろで
「また呼ぶからーーーー」
と叫んでいた。
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