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執事は見た
しおりを挟むイーガー家執事セバスチャン視点
私はイーガー家の執事をしているセバスチャンというものでございます。皆さんはセバスと呼んでおります。
私も以前は“影”をしておりましたが、怪我で引退致しました。
私は天涯孤独の身、行き先もなく途方に暮れていました所を旦那様こと長官に拾われました。
有難いことです。
ジュリア様とは一緒に任務についた事もありますが、嫌でした。怖かったので。
あの方、鬼強いので一人で殲滅させて高笑いするんです。
“影”は目立ってはいけないのに、高笑いするんですよ、あの人。
怖いです。
仲間内で“赤い悪魔”と呼んでいるのがバレて三途の川を渡りそうになり、“赤い悪魔”は禁句になりました。
ちなみに、ジュリア様は赤目だから“赤い悪魔”なのではなく、血を浴びて真っ赤になった姿を揶揄してるあだ名です。
ジュリア様が若を身籠ったのを機に引退した時はホッと致しました。
血みどろで高笑いする妊婦…
胎教には良くありませんからね。
実際、
その状況を目の当たりにした、陛下も、陛下の王太子時代のご学友も、未だ夢に見るとのことです。
密かに長官や陛下、最近では若も「魔王」とお呼びになっています。
私は魔王とは呼べませんので、敬意を表して「魔王様」とお呼びしています。
その魔王様は侯爵夫人としての日々を送っておりましたが、つい先日久しぶりに魔王降臨とばかりに若と長官を叱りつけておりました。
私はそれを部屋の隅で聞いておりましたところ、急に自分の名前が出たのでございます。
…震え上がりました。
カトリーヌ様こと“お嬢”の監視兼警護を仰せつかりました。
失敗は許されません。
魔王様に「セバスなら安心」と言っていただけた時は少し泣きました…。
そして翌日からお嬢に気づかれぬよう一緒に学院に付いて行きました。
学生というのは元気ですね。
見ていて気持ちが良いです。
特にお嬢のご友人のリリーナ様はとても皆様に人気がお有りで、すれ違う人、すれ違う人何かしらお声をかけられております。
良いご友人をお持ちのようで安心致しました。
そんなお嬢はルイジェルド殿下と一緒におられます。
あのお嬢が王子妃…
太ももに短剣、背中と足首に小型ナイフを仕込んだ王子妃…
なんだか喜んでいいのか悲しんでいいのか分かりませんが、感慨深いです。
そんなお二人を見ていますが、
朝から甘い…甘いです…。
こんなお嬢見た事がないので、こっちが恥ずかしいです。
任務でこれより激しいものも見てきましたが、身内はキツいです。
そんなお二人でしたが、お昼休みに口論になりなにやら不穏な空気です。
魔王様の予想通りに、お嬢はロックハート家に忍びこむつもりだったようです。
流石母親ですね。
ルイジェルド殿下は猛反対しています。
喧嘩にならなければいいのですが…。
と思っていたら案の定、放課後喧嘩しております。
近くでリリーナ様達が様子を伺っていますが、半分は楽しんでいますね。
あら~お嬢、泣いてしまいました。
お嬢泣くんですね、初めて見ました。
あの厳しい訓練を小さな時から受けても泣かなかったお嬢が泣いています…。
殿下どうするんですか、泣かせたのが魔王様にバレたら大変ですよ!
あ、リリーナ様が止めに入りましたね、良かった。
少し落ち着いたようです。
リリーナ様達が何処か行こうとした時、
殿下がお嬢を抱きしめました。
優しく説得しております。
心配だったのですね…お嬢をとても大切にして下さっているのが分かります。
私も泣いてしまいました…。
ご友人達が覗かれている事に漸く気づいた殿下は照れていましたが、それでも離れることなくお嬢を抱きしめていました。
いやあ~良いものを見せて頂きました。
お嬢は納得したのか、自分は何もしないと約束されていました。
この後二人はどうするのでしょう…私、付いてていいんでしょうか?もう帰っていいでしょうか?
とりあえず少し離れて様子見ます。
甘いです…とても甘いです…
します?するんですか、チュッってするんですか?・・・・するんですね…
では私は目を閉じておりましょう。
私、帰っていいですか?
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