43 / 125
エスコート
しおりを挟むリリーナ視点
あれから一週間、傷跡もほとんど消え、学院の臨時休校も今日で終わる。
のんびり出来た・・・とは言えなかった。
結局、あの嵐のような一日の翌日、
お祖父様に拉致られ、三日間、お祖父様とお祖母様に揉みくちゃにされた。
お父様とロイが迎えに来なければ帰れなかっただろう。
ロイがお祖父様に
『リリーの可愛らしさ』
のレポートを提出し合格を貰えて、ようやく帰してもらえた。
なんじゃそれ!
ちなみにお父様は不合格で、再提出で合格を貰えた。
やっと帰ってこれたと思えば、疲れからか熱を出し寝込んでしまった。
正直、寝込んだ時が一番ゆっくり出来た気がする。
ベッドを出れたのが今日だ。
一応、大事をとっておとなしくしている。
休みの間に、アンネリッタさんとカトリーヌさんから手紙が来ていたのに返事が出来なかったので、
急いで返事を書き、送ってもらった。
最近、暇だ。
今までは、虫対策であれやこれやと武器を考えていたのに、それももう必要ないので、少し気が抜けている。
考えてみれば、10何年好きでもない、見たこともない虫をロイを守る為だけに撃退グッズや虫除けグッズを作ってきた。
携帯折りたたみ虫たたき。
持ち運べる虫除けテント一人用。(これはロイに却下された)
子供用虫たたき。
これらは、意外にも需要があり、商品化した。
小さな子供がいる家庭に大人気なのだ。
なので、今はする事がない…
勉強はボチボチやろうと思っております…ハイ…。
なのでボォーっとしていたら、お母様が
「リリー、お買い物行きましょ!」
と誘ってきた。
「リリーとお買い物久しぶりね。」
「そうだね~何を買おうかな~」
「何がいいかしらね、まずは美味しいケーキを食べてお茶でも飲みましょ!」
「うん、その時決めよ!」
とお喋りしてる間に街に着いた。
人気のカフェにお母様と入ると、いっぱいで座れず、別のお店に行こうとした時、
見慣れた銀髪が目に入った。
「あれ、ロイ?」
「まあ、偶然!運命ね~・・・・・・って、似てるけど違うみたい、さあ、行きましょ、お母様、喉が渇いたわ、早く行きましょ!」
「え、え、待ってお母様、ロイだったら声かけたいの!」
「ちょっと待って、混んでるから外に一度出ましょ。お母様物凄く視力がいいから代わりに見てみるわ。外で待ってて!」
と外に出され、お母様はお店のドアからチラッと覗いた。
「全然違ったわ!もう見れないくらいに不細工だったわ!お母様気分が悪くなっちゃったから早く行きましょ!」とグイグイ背中を押す。
「お母様大丈夫?」
「大丈夫‼︎…じゃないからお茶飲みに行きましょ!」
グイグイ
「お母様押さないで…」
背中を押してるお母様を見た時、
お店からロイが女性と出て来た…
「・・・・・・・」
「あちゃー」
結構店から離れていたので、ロイは気付かなかったようだ…
ロイが私以外をエスコートしてるのなんて初めて見た…
アレ?なんだろう…
気持ち悪い…
「リリー、大丈夫?」
お母様が喋ってるが、
心臓がドクンドクンして、頭もドクンドクンと響いていて、よく聞こえない。
「リリー、帰りましょ。」
と手を引かれ、馬車に乗った。
馬車の中でも、屋敷に戻っても、それは治らず、食事も取らずにベッドに入った。
夜にお母様が、眠れるからとほんの少しのお酒が入った紅茶を持って来てくれた。
それを飲んで、目を閉じたらいつの間にか眠ってしまった…
〈アランとマリアの寝室〉
「リリー、大丈夫かしら…可哀想に顔色が真っ白だったわ…」
「ロイ君に限って浮気はないだろう。3歳でリリーを見初め、5歳でプロポーズだぞ。年がら年中一緒にいて、いつ浮気する暇あるんだよ!」
「それでも初めてよ、ロイ君がリリー以外の女性と二人でいるのなんて!
今まで幾多のアタックにも屈せず、
リリー以外は虫と思っているロイ君が、エスコートしてたのよ。
ショックも受けるわよ!」
「まあな…明日から学院だろ?
迎えに来たら気まずいな。
来ないって事にはならないと思うけど。」
「そうね…来ない事はないだろうけど、心配ね…」
その不安が的中するなんて、二人も予想出来なかった。
20
お気に入りに追加
764
あなたにおすすめの小説
夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。
MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。
記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。
旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。
屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。
旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。
記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ?
それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…?
小説家になろう様に掲載済みです。
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
私のことは気にせずどうぞ勝手にやっていてください
みゅー
恋愛
異世界へ転生したと気づいた主人公。だが、自分は登場人物でもなく、王太子殿下が見初めたのは自分の侍女だった。
自分には好きな人がいるので気にしていなかったが、その相手が実は王太子殿下だと気づく。
主人公は開きなおって、勝手にやって下さいと思いなおすが………
切ない話を書きたくて書きました。
ハッピーエンドです。
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
【完結】殿下の本命は誰なのですか?
紫崎 藍華
恋愛
ローランド王子からリリアンを婚約者にすると告げられ婚約破棄されたクレア。
王命により決められた婚約なので勝手に破棄されたことを報告しなければならないのだが、そのときリリアンが倒れてしまった。
予想外の事態に正式な婚約破棄の手続きは後回しにされ、クレアは曖昧な立場のままローランド王子に振り回されることになる。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる