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目覚め
しおりを挟む今私は巨大なビカビカ虫と対峙している。
何故巨大化したのかは分からない。
しかし、私は戦わなければならない。
何故なら
私の後ろにはロイがいるのだ。
子供の頃からロイを守ってきたのだから!
私の武器は殺虫剤と小さな虫たたきしかない。
奴は強敵だ。
やるしかない。
私はビカビカ虫に向かって走り出す。
捕まった…噛まれる!
後ろでロイが叫んでいる。
「リリーーーーー」
はッ!
噛まれた!
ロイは?
私はベッドで寝ていたようだ。
辺りを見回すと、ロイが私の手を握っていた。
「ロイ!大丈夫だった?食べられなかった?」
ロイは顔色が悪く、真っ青ではなく真っ白だ。
「リリー、リリー、」と私のことを抱きしめながら名前を何度も呼んでいる。
「ロイ、私ここにいるよ。大丈夫だよ。
そういえば、ここどこ?私どうしてここにいるの?巨大ビカビカ虫は?」
その時、ルイジェルド殿下がやってきた。
「虫はいない、夢でも見たんだろう。リリーちゃん、意識が戻ったんだな、良かった。」
「殿下、私はどうしたのでしょう?」
「講堂で倒れたのだ。女子生徒に噛まれてな。」
「噛まれた…あ、そうだ、急に抱きつかれてその後…」
「倒れてすぐにロイが君を運んで治療を受けた。痛みはないか?」
「痛みは…少しありますが、大丈夫です。」
「そうか、すぐ引き離したらしいので深くは噛まれなかったらしい。跡も時間がたてば消えるようだ。」
「私を噛んだ人はあれからどうしたのですか?」
「すぐに医師が鎮静剤を打ち別室に隔離した。彼女も香水と石鹸を使っていたようだ。あのタイミングで興奮状態になるとは…もっと早く対応していれば怪我などしなかったのに…すまなかった。」
殿下が頭を下げたので、慌ててやめてもらう。
「いえ、殿下のせいではありませんし、私はもう大丈夫です。」
「とにかく大事なくて良かった。
そしてロイ、いつまでくっついてる!いい加減離れろ!」
そうなのだ。
私の意識が戻ってから抱きついて離れないのだ。
「ロイ、痛いよ。」
バッと勢いよく離れたロイの顔色は白くはないがまだ青い。
「ごめん、痛かったね」とロイ。
「大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
「僕こそごめん、側にいれば怪我なんかさせなかったのに…。」
「いやいや、あれは誰にも止められなかったよ~怖かったけど。」
またロイが抱きしめて、
「僕だって噛んだことないのにぃぃーーー」
いや、噛むなよ!
「ロイも元気になったし、もう少し休んで今日は帰ってくれて構わないから。ロイも一緒に帰れ。じゃあ、オレはこれで!」
そう言って殿下は出て行った。
「そういえば、意識がなくなる瞬間、後ろから誰か拳を振り上げてるのが見えたような気がしたけど、誰だったんだろう…。」
「僕はリリーが倒れてから駆けつけたからその場面は見てなかったけど、リリーに噛みついた奴を殴り飛ばしたのが誰かは知ってるよ。その子が殴らなかったらもっと深く噛まれてたし最悪噛みちぎられた可能性もあった。」
「そうなんだ…その人にお礼しないとね。」
「そうだね」
「リリーはもう少し休んだら?付いてるから。」
「ううん、もう帰るよ、ロイも疲れたでしょ。」
「確かに疲れた。じゃあ、帰ろうか。抱っこして帰る?」
「絶対イヤ!」
「残念…」
帰る前に、助けてくれた人にお礼を言いに行こうと二人で向かった。
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