帰らなければ良かった

jun

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番外編 新人達は楽しくて仕方ない〜結婚式の裏側

新人騎士ハンスは親孝行出来て嬉しい

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俺はファルコン騎士団三番隊ハンス・ナーディス、18歳、ナーディス子爵家の次男だ。

ナーディス家の領地は農業が盛んだが、それといって特産もない領地だったのだが、極秘任務を言い渡されてから、領地を行ったり来たりを繰り返した。

それは領地で作っている苺が、今回丁度いいと白羽の矢が立ったからだ。

領地で取れる苺はかなり酸っぱい、そして粒が小さい。
なのでジャムに加工するのがほとんどで、そのままではあまり食べないのが普通だ。
もちろん甘い苺も一部あるが、圧倒的に酸っぱいものが多い。

極秘任務のいう名の結婚式の準備はマジで忙しくて、正直勘弁して~と思った時もあったが、お近付きになりたくてもなれなかったお偉方とも顔見知りになり、気軽に挨拶してくれるようにもなり、一年で一番楽しかった。

そして、加工するより、そのままで、それも高値で大量に買ってくれる事になり、父も母も大喜びなのだ。
兄も、もうすぐ結婚でまとまったお金が入るのはかなり嬉しかったようだ。

あれほどあった苺が底をつきそうになった時は焦った。
今は良いが、全部なくなったらジャムにする分がない。
すると、団長達が陛下に相談し、領地に苺用のハウスを作って下さった。
温度調節も出来るし、水も適度に適量をあげることが出来る、素晴らしいハウスを五棟も作ってくれた。
そのおかげですぐに苺の栽培をする事が出来た。
こんな田舎で何も自慢出来るものがなかったのに、苺の改良も出来るようになったら、もっとジャム以外にも加工出来るかもしれない。

なんだか申し訳ないから、

「団長、なんだか申し訳ございません…たくさん実家の領地を助けて頂きまして…。」

「何を言ってる、ハンス。あの苺がなかったら、この計画は頓挫していた。
よくぞあったとホッとしたんだ。
お礼を言うのはこっちだぞ。だから気にするな。」
と言ってくれた。

団長…好き。

初めてうちの苺を持ってきた時、ブライアン副団長に、苺に練乳をかけて食べてもらった。

いちご飴にすれば飴が甘いので酸っぱいのは丁度いいんだが、そもそも酸っぱいのが嫌いなら変えなければならないからね。

苺を食べた副団長は、

「嘘、何コレ⁉︎酸っぱいけど美味い!
俺、酸っぱいの好きなんだよね。」
と美しい顔で、瞳をキラキラさせてそんな事言われたら、好きになっちゃうよね。

苺が合格になり、イチゴ飴も順調に出来ているが、ラッピングが進まない。
袋も破れたり、ぐちゃぐちゃになったりで、すぐ無くなり、備品庫に取りに行った。

そこで俺は天使にあった。

ピンクの髪に、ピンクの瞳。
フリフリの白いドレスを着た美少女が、備品庫にいた。

ビックリしてすぐドアを閉めて走って逃げた。
だって、あんな美少女見た事ない。

詰所に戻り、

「今…び、びしょ「ハーーーーーンス!苺の事で相談があるんだけど良いだろうか!」」

「は、はい。大丈夫ですけど、ヤコブ先輩大丈夫ですか?そんなに走ってくるほど急ぎだったんですか?」

「そうなんだ…ちょっと、焦った…みんなもごめんな、急に大声出して。」

詰所にいた同期達も、キョトンとしている。

「ハンス、すまないが今から急いで苺追加したいんだ、悪いが1箱だけなんだが、取りに行ってもらえないか。知り合いの偉い人がどうしても欲しいって言うんだよ、ほんとすまない、ほら、早く行ってこい。」

そう言って、俺を詰所から出し、

「ごめんな、急ぎなんだよ、追加料金出すから。頼む。」

ヤコブ先輩の頼みなら仕方ない。

「分かりました。行ってきます!」

そんなに俺の所の苺に興味を持ってくれてる偉い人がいるなんて!

俺はすぐに取りに行った。取りに行った帰り道で思い出した、“あ、美少女!”。

あーー帰っちゃったよな…
誰だったんだろう…
でもサムエルに似てたから親戚かな…

後で聞いてみよ!

その後サムエルになかなか会えなくて、やっと捕まえて聞いても知らないって言うし、誰だったんだろう…。


そして、結婚式当日行われた披露宴の余興で、あの美少女がヤコブ先輩と現れた!

そして、なんと、スカートを・・・パンツが・・・ハアーーーーなんて素晴らしい!

と思ったら…サムエルの女装だった。
それにしてもサムエル…あの男、ブライアン副団長とは違う美形なのは知っていたが、あれほどだったとは…。

でも、領地の苺が王宮への大きな販売ルートをこれからも出来て、両親や兄にも喜ばれて、本当に良かった!



親孝行なんていつになることやらと思ってたけど、こんなに早く親孝行出来た事が一番嬉しかった。

副団長、リーダー、おめでとうございます!
そして、ありがとうございました!












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