帰らなければ良かった

jun

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番外編 辺境伯の小さなお墓

おばちゃまと“にいに”との別れ

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3歳になって、またゲイルおじいちゃまの所に行った時に、おばちゃまとお友達になりました。
隠れて会っているので、ほんの少ししかお話し出来ないけど、おばちゃまはとっても嬉しそうに僕のお話しを聞いてくれるから、僕もとっても嬉しいです。

4歳になった時に、母さまのお腹に赤ちゃんがいるって教えてもらいました。
なので、父さまとゲイルおじいちゃまの所に行った時、とうとう父さまに見つかってしまいました。

「どうしてライールはあそこに行ったの?」

父さまが少し怒った顔で僕に聞いてきました。

「にいににお願いされたのです…。にいにの小さなお墓を作ってくれたおばちゃまとお友達になってほしいって。
おばちゃまがお墓を作ってくれたから、にいには僕とお話し出来るようになったと言いました。
でも、父さまも母さまもおじいちゃまもおじちゃまもまだ怒っているから秘密にしてって・・・・。
ごめんなさい…おばちゃまのせいでにいにがいなくなっちゃったのに、おばちゃまとお友達になってごめんなさい・・・。
でも、ひとりぼっちで毎日にいにのお墓に“ごめんなさい、ごめんなさい”って言ってるから、僕だけでもお友達になってあげてって・・・・。
父さま…ごめんなさい・・・・」

「シアールにお願いされたのかい?」

「僕が2歳の時にお願いされました…」

「シアールのお墓があるの?」

「お墓だと思ってお花とパンを毎日お供えしているって。
たくさんたくさんのお洗濯物をたった一人でやっています。
でも、僕のお話しを優しいお顔で聞いてくれます。
とっても楽しそうに聞いてくれます。
だから…僕…」

「・・そうか。分かったよ。
父様は黙っていなくなったから心配したんだよ。怒ってるわけじゃない。
次は父様か母様、お祖父様や伯父様にちゃんと言ってからなら行っていいよ。
約束出来る?」

「はい。次はちゃんと父様に言います。」

父さまは頭を撫でながらそう言ってくれました。




5歳になった時はシャーリーが生まれてまだ小さかったから、また父様とおじいちゃまの所に来ました。

今度は父様にちゃんとおばちゃまの所に行くと言えました。
父様が、

「これも持っていきなさい。」

と言って綺麗に包んであるクッキーを渡されました。
だから、お花とクッキーを持っておばちゃまの所に走っていきました。

おばちゃまは僕が来るのが分かるのか、必ずお墓の所で待っています。

今年はクッキーも渡せます。
ロドニーおじちゃまは、
「女性にはお菓子を渡すと喜ぶぞ」
と教えてもらっていたので、おばちゃまも喜んでくれるかな。

隠れる事がなくなったので、おばちゃまとたくさんお話しが出来ました。
シャーリーが生まれた事、剣の訓練も毎日ちゃんとやってる事、お勉強もいっぱいやってる事、にいにが隣にいる事、おばちゃまはニコニコしながら聞いていたけど、にいにが隣りにいると言った時、泣いてしまったからどうしようと思いました。

またねっておばちゃまと別れておばちゃまが見えない場所までいったら父様がいました。

「父様?」

「たくさんお話し出来たかい?」

「はい!たくさんお話し出来ました。父様はここで何をしていたのですか?」

「こっそり見ていた。仲良しなんだな、彼女と。」

「はい!」

「そっか…良かったな。」



それからも毎年おばちゃまに会いに行った。
シャーリーが2歳になった時に、初めて連れて行った。
シャーリーはにいにの事が見えないけど、声は聞こえてるみたい。
シャーリーが危ない事をしそうな時や、寂しい時はにいにが側にいてくれてる。
もちろん僕の側にもいてくれる。
でも、にいには僕と同じ位の背丈で止まったまま。
来年は僕の方が大きくなりそうです。


僕が11歳になった時、おばさまの家が出来ました。

もう罪は償ったから自由にしていいって言ったけど、にいにのお墓があるからここに居させて欲しいと、
ここに“にいに”がいるならここにいたい、一人は寂しいからと。


だからおばさまはずっとそこにいた。
毎日花とパンを供えて。


母様と父様、お祖父様と伯父様もおばさまの事はもう許している。
だから、会いには行かないけど、僕にいろんな物を持って行かせる。

何度かおばさまのお父さんも来た事があった。
遠くからおばさまを見ていた。

僕に、

「娘の友人になってくれてありがとう…」

と言って頭を下げたので、みんなでオロオロしてしまった。

それから僕がおじさんの手紙をおばさまに持っていったりした。

この頃にはほとんど“にいに”の姿は見えなくなった。
声もたまにしか聞こえない。
でも、いつも側にいてくれるのは分かった。

“にいに”の木はだいぶ大きくなった。
大木ではないが、とっくに僕の背を抜かしている。




俺が22歳になった時、おばさまが亡くなった。

前の日までは変わらず仕事をしていたらしい。

その日の朝、久しぶりに“にいに”の姿を見た。

『ライール、もう僕は行くね。今までありがとう。大好きだよ。』

そう言って少年のままの“にいに”は消えていった。





「兄上、私も大好きです。ずっと側にいてくれてありがとうございました。」















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