帰らなければ良かった

jun

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極秘任務

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ヤコブ視点


俺達、ファルコン騎士団は今、極秘任務遂行中だ。

一カ月前、団長とラルス団長が団員を集めて、

「皆にやってもらいたい事がある。これは極秘任務になる。」

と言った。

「他言無用だからね。もし、この事が他に漏れたら・・・分かってるよね?」


団員達はザワザワし出した。


「静かに!これからその任務を説明する。」

団長がそう言って極秘任務の説明をした。

「イーグルの団員にも同じ任務を言い渡したから、みんな上手くやってくれると助かるよ。これだけ人数がいたら、誤魔化せるでしょ?色々と。」


なるほど、確かにそうだ。
一定の人物がいつもと違う事をしていたら目立つが、大勢がやっていれば気付かない。

「各隊リーダー、副リーダーを残し、後は解散。」

集まっていた団員達は速やかに解散した。


ファルコン、イーグルには一番から三番までの部隊がある。
三番は新人の部隊なので、重要任務には駆り出されないが、今回は別だ。

団長とラルス団長が、残った俺達に、

「一番隊は今回、ヤコブがリーダー代理となる。副リーダーは、モーリスにやってもらう。」

「はい!団長、モーリスを呼び戻しますか?」

「後でモーリスに伝えてくれ。先に細かい打ち合わせをする。」

そう言って、騎士団の会議室に連れられて、
それぞれの部隊の配置、最重要人物の護衛と誘導、献上品の準備、会場設営の段取り、関係者各位への連絡等、通常の仕事をこなしながらの極秘任務は、かなり骨が折れそうだ。

だが、団員全員、この任務は絶対成功させると思っているに違いない。

もちろん俺もだ。

俺達一番隊は、最重要人物の一人の護衛と誘導、後は会場設営や手の足りない部隊を手伝う形となった。

実はこの重要人物の誘導が一番大変だろうと言われた。
この人物にバレるのが一番マズイからだ。
なので、もう一人の誘導を団長が担当する事になった。


これからの一カ月、ファルコン、イーグル総力を上げて、任務を達成すべく頑張る所存である!

と気合いを入れたのは昨日。


そして、今、俺は追い詰められている。

「ヤコブ、なんか隠してる?」

「隠してますよ、言える訳ないでしょ、当日のお楽しみです!」

「いや、違くて、他にない?」

「俺は今、それどころじゃないんですよ~、やる事いっぱいあるんすから!」

「そっか…ごめん。」



フゥーーーーーー。


背中を嫌な汗が流れる。

この人は本当に勘がいい。
正直今は近くにいたくない。
だが、仕事中だ。

「シシリー先輩、イーグルのチャーリー先輩の所に行ってきます。」

「なんで?」

「なんでって、チャーリー先輩に呼ばれてるからですよ。」

「そうなの?いつ?」

「朝ですよ、何か急ぎの仕事ありますか?」

「ううん、大丈夫。お昼そのまま取ってもいいよ。」

「あざーす!」

そう言って、すぐ廊下に出た。

俺は走った、少しでもあの人から遠くへと。

後は頼んだ、モーリス!

モーリスは、次期副リーダーとして執務室で仕事をしている。
なので、シシリー先輩と二人きりだ。

今頃、“嘘でしょ?”と心の中で思っているだろう。

だが、初日にこれではヤバイ。

チャーリー先輩に知恵を貸してもらおう。


イーグルに駆け込み、一番隊の執務室のドアをノックした。

「ファルコン一番隊副リーダー、ヤコブです!」
と声をかけると、

「どうぞ~」と聞こえたので、ドアを開け速やかに中へ入り、

「ヤバいです、チャーリー先輩!あの人、探りを入れてきました。」

「お前はなんて言ってここに来たんだよ。」

「先輩に朝から呼ばれてたって。」

「よし、いい答えだ。アイツはなんでこうも勘が良いかな~、めんどくさい奴だな!」

「助けて下さい!初日からこんなの、一カ月も神経が持ちません!」

「でも、お前がやらないと失敗するぞ。」

「だから知恵を借りに来たんですよ!」

「ヤコブ、シシリーはお前が何かを隠していると疑ってるんだろ?」

「はい、なので前に言っていた結婚式の余興の事なので言えないって言いました。」

「なら、お前、その余興の練習をシシリーに見つからないように練習してましたっていう体で、何かやれ!」

「なんですと?」

「だから、お前が一生懸命に余興の練習をしている所をチラッとシシリーに見せろってこと。“これを隠したかったから、ヤコブの様子はおかしかったのか”ってシシリーは思うから。」

「俺は、余興なんてしませんけど。」

「お前な、それだけ何回もシシリーに言ってるなら、なんか準備してないとマズいぞ。」

「え・・・マジですか?」

「マジだ。」

「何やったらいいんですか!極秘任務もあるのに、今からそんな凄い事出来ないですよ!」

「任せろ、俺に秘策がある。」


そして、チャーリー先輩に教えてもらった秘策はすぐに準備と練習が出来そうなものだった。
さすがチャーリー先輩!これならなんとかなりそうだ!

「さすがです、先輩!」

「だろ?」

「ありがとうございました!」


俺は食堂に行って、余興に必要な物を借りてから、執務室に戻った。


「あれ?休憩取らなかったの?」

「俺は後ででいいんで、お先にどうぞ。」

「あ、そう、で、チャーリーは何だったの?そして、その荷物は何?」

「俺が悩んでたので、知恵を貸してくれました。これは…秘密です!」

「そうなの?」

「はい!さすがチャーリー先輩です!」

「そう、よく分からないけど良かったね。じゃあ、先に休憩入るね」

そう言って、シシリー先輩は昼休憩に行った。



「ヤコブ先輩、酷いです!さっき逃げましたよね?俺、リーダーと二人きりなんて初めてなんですよ!すっごく気い使われて、ちょっと惚れそうになったじゃないですか!」

「お前、そんな事大きな声で言うな!副団長に聞こえたら、ホントに大変なんだぞ!」

「リーダーいないのに、ここに来るわけないじゃないですか!」

「あ、それより、俺、余興の練習する事になった。」

「はあ?」

それから、先輩に教えてもらった事を話した。

「なるほど、隠し事はそれだと思わせるんですね。」

「そういうこと!」

「ここで練習するんですか?」

「ここでしか、見せるところないだろ。
一回だけだ!休憩終わって帰って来たタイミングでやる。後は俺に任せろ!」


セッティングして、その時を待つ。

モーリスにドアから顔を出し、シシリー先輩がこっちに向かってきたらすぐドアを閉める。
それと同時に俺の出番だ。

「先輩、来ます!」

モーリスがドアを閉めたと同時に、俺はテーブルクロスを引いた。

ガシャガシャガチャーン

グラスが割れた音と同時にシシリー先輩がドアを開けた。


「何コレ?どういうこと?何しての?」

「あ、あの…これは…その…先輩がいないうちに、練習しようと思って・・・すみません!すぐ片付けます!モーリス!」

「はい、俺も手伝います!」

「え、あ、あー、アレかな、その、ごめん…。」

「すみません…俺、上手くいかなくて…それで…」

「あー良いの良いの、なんかごめんね、楽しみしてるから、ね、大丈夫だから!」

「すみません…頑張ります…」

「ほら、危ないから、みんなで片付けよ!」


三人で片付けた後、
「なんか、ごめんね、ヤコブ。あんまり無理しないでね。」
と労ってくれた。

少し心が痛い。

でも、これでコソコソしていても疑われないだろう。



ありがとうチャーリー先輩!


本番当日まで、極秘任務頑張ります!











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