隠していない隠し部屋

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キャルティの決断

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いけ好かない王太子が帰った後、残った私達は一斉に息を吐いた。
息を止めていた訳ではないが、やはり緊張はしていたようだ。

「ちょっと、アレなに⁉︎なんなの、あの態度⁉︎見た、ジョバンニ、あの目見た⁉︎笑ってたけど私の事思いっきり敵認定したわよね⁉︎」

「うん、見た。お前、キャルティにデカい声で喋れって悪知恵教えてたから、怒ったんだよ。咄嗟によく言えたな、あんな事。」

「だっていきなり来て二人きりなんて、非常識だもの。キャルティさん、あんなに震えてたのよ、可哀想じゃない!」

「エルザ、相手は王太子だよ、不敬罪って言われても文句言えないんだからな。
気をつけなさい。」
とお父様に注意された。

「だってなんか気に入らなかったんだもの!
“俺、王太子。何の文句もないよね?ある訳ないよね?”って目で語ってた!」

「確かに何気に威圧感あった。」とジョバンニ。

「クリスハート様は剣の腕も良いんだぞ。
たまに騎士団で訓練に混ざってるのを見るしな。
ダニエルも言っていたが、おそらく普段見せてる姿と本来の姿は違うのだろう。
ブライアン様とは会う事もあるが、私は騎士団の姿と噂に聞く姿しか知らない。
少し警戒した方がいい。」

お父様が不穏な事を言う。
もっと早く言ってほしい。
ま、聞く前に来られちゃったんだけど。
でも、確かに噂と雰囲気が違った。

「だとしても明後日また来るんですよね?
どうするんですか?」

「さっきの話しの続きを聞きたい。キャルティ嬢、邪魔が入ってしまったが、どうする?」
お父様がキャルティさんに優しく質問した。

さっきとは違い、キャルティさんは真っ直ぐお父様を見つめ、

「最初は産みたいと思いました。
さっきもそう答えようと思っていました。
でも王太子殿下に会って、考えが変わりました。子供は…堕します…。
王太子殿下の子は産みたくないですし、
シルビオ様の子も私には産めません。
私の身体を気遣ってくれる皆さんには申し訳ないのですが、少しでも王太子の子の可能性がある子がお腹にいるという事に私が耐えられません。
シルビオ様の子供を死なせてしまう事になってしまいますが、王太子殿下の薬を飲みたいと思います。」
と覚悟を決めたキャルティさんの瞳は揺れる事もなく不安はないようだった。

「分かった。では皆にそう伝えよう。
明後日、王太子殿下が来たらそのように言いなさい。悪いようにはならないと思うよ。」

「はい。色々ありがとうございました。」
とキャルティさんは頭を下げた。

そして、
「サバーナ侯爵様、エルザ先輩、ジョバンニ様、本来ならば私など捨て置かれる立場にもかかわらず、こうして優しくして頂ける事、心から感謝しております。

2度と奥様のいる方と関係を持つような事は致しませんし、安易に身体の関係になるような事も致しません。
もちろんシルビオ様に近付く事も致しません。
本当に申し訳ございませんでした。」

カフェで号泣していた人だとは思えないほど落ち着いた淑女の礼をした。

「そうね、本当に好きな人とだけそういう事はした方が幸せよ。
ま、貴方もシルビオの事が本当に好きだったのでしょうけど。」

「・・・すみません。もうお相手のある方には近付きません、こんな怖い思いはもうしたくありませんから。」
キャルティさんはもう未練はなさそうだ。


大概、浮気する人や寝取る人ってその時は本気だったって言うけれど、じゃあ別れてから始めれば良いのにって言うと、一度きりだけと思ってたって言う。
それの何処が本気なのだと思う。
シルビオと婚約している時にあった事だ。

寝取られる側の事を考えてはくれないし、浮気した男より相手の女性が責められる方が多い。
それはどうしてか。その女が妻や恋人に喧嘩を売るから。
私の方が貴方より愛されてるのよアピールをしてくる。
そんなことされたら男を責める前に相手の女を責めたくなるのも仕方ないというもんだ。
今回キャルティさんは、それをしなかった。
だから私はキャルティさんを責める前にシルビオに文句が言えた。
だからといってキャルティさんに文句がないとは言わないが、彼女はもうシルビオの事を断ち切った。
だったら後は私とシルビオの問題とシルビオとキャルティさんの問題だ。

なんとなく自分の中で今回の浮気問題は決着がついた・・・・のだろうか…。

だから一度、冷静にシルビオと話そうと決めた。















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