隠していない隠し部屋

jun

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俺の子じゃないってば!

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翌日の目覚めは頗る良い。
夜中、ドアをドンドン叩く音を聞いたような気がしたが、気にせず眠った。

食堂に行くと、不機嫌なシルビオが座っていた。
「シルビオ、おはよう。」とご機嫌に声をかけると、
「・・・・・・・・おはよう」

随分間が開いたが、挨拶はしてくれた。

美味しい朝食を食べ、戻ろうとすると、
「エルザ、話しがあるんだが、いいだろうか…」

「今日は予定があるの。ごめんなさいね。」

一体話しとは何だろう。
どうせ、“違うんだ”だの、“俺が愛してるのはエルザだけなんだ”だの、聞き飽きた言葉を言うつもりなんだろう。
でも、私は大人だから聞きましょう!

「でも、少しなら時間はあるわよ、今、大丈夫?」と言えば、
「ありがとう、エルザ」と言って、私の部屋に行こうとするので、
「悪いけど、シルビオの部屋か執務室で良いかしら?私の部屋、今お掃除中なの。」
と言って、無理くりシルビオの執務室に行った。

ソファに座らされ、
「エルザ・・・大事な話しがあるんだ…その…なんだ…とても、言いづらいんだが…その…」

「彼女が妊娠したの?」

「え?知ってたの?」

「ハァ~そんな言いづらそうにしてたら予想もつくわよ!
はい、分かりました、離婚ですね。
荷造りが出来次第出ていきます。
お世話になりました。慰謝料の件はお父様に任せます。では、お元気で。
貴方は最後まで私を大事にはしなかったわね。
愛してるのは結局自分とキャルティだったというわけね。
ホンットにシルビオなんか大っ嫌い!
2度と顔見せんな!」

立ち上がり、執務室を出るとジョバンニがいた。
「聞いてた?」と聞けば、
「ああ…」としか言わないジョバンニ。

「じゃあね、ジョバンニ。たまには遊びに来てよ。なんやかんやであんたがいたから楽しかった。」

私は徹底抗戦する前に負けた。
涙は出ないが、悔しかった。

荷造りが終わって、シルビオから貰った物は全て残して、実家から持ってきたものだけを送ってもらうようジョバンニに頼んで、私とパールは馬車に乗った。
シルビオはジョバンニに押さえつけられて、こっちには来れなかったが、何か叫んでいた。
どんなに言っても、妊娠させたのならもう離婚は免れない。
あんなに叫ぶなら浮気なんてしなきゃいいのに。
中出しして、子供作って、それで愛してるなんて…バカにすんな!

馬車から玄関の方を見ると、ジョバンニを振り切ってこっちに走ってくるシルビオが見えた。
「出して、出して、早く!」と御者に叫ぶがシルビオはすぐ側まで来た。
でも中から鍵をかけて中にはいれない。

「開けて、エルザ、話しは終わってないんだってば!開けて!」

「早く出して!
話しなんてないわよ!一体愛人、妊娠させて何の話しがあるって言うのよ!
顔見せんなって言っただろうが!」

御者がオロオロしている。

「ダメだ、絶対馬車を出すな!出したらクビだ!」

「だったウチで雇うわ、さあ早く出して!」

「聞いてってばエルザ!キャルティは妊娠してるけど、どう考えても俺の子じゃないから!」

「ハア⁉︎言うに事欠いて、俺じゃない⁉︎
バカににすんなよ、私はこの間、あの部屋から出てくるのを見たのよ!
濃厚なキスも見たし、次の日あの部屋に入って、臭い、事後の匂いを嗅いだわ。
気持ち悪くて吐きそうだったわよ!」

「エルザ、あの部屋の事知ってるの?」

「知らない人なんて誰もいないわよ!」

「でも俺の子じゃない!ちゃんとキャルティも言ってた、俺の子じゃないって!」

「はあ⁉︎何それ⁉︎妊娠初期に何やってんの⁉︎
シルビオは知っててヤってたの⁉︎最低!」

「だからちゃんと聞いて!ちゃんと話すから!」

ジョバンニがシルビオの後ろから、

「エルザ、降りてちゃんとシルビオの話しを聞いてみろ。
俺もいるから、2人きりにはしないから!」
とジョバンニが言うと、

「待て、ジョー。何その言い方。まるでお前が旦那みたいな言い方だな!」

お前にそんな事言う資格ないわ!
と言いたかったが、グッと堪え、

「降りるから離れて。絶対、シルビオは私に触らないで。指一本でも触ったら短剣で喉、刺して自害するから!」
トランクから短剣を出して、鞘を抜く。

「やめて、エルザ!触らないから、絶対触らないから!しまって、せめて鞘に戻して!」

「シルビオが離れない限りここから出ないわ。ジョバンニ、早くシルビオを連れてって!」

ヒーナス家の門の所での派手な夫婦喧嘩は、後に『逆鱗エルザの乱』と語り継がれた。














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