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探りを入れてみましょう
しおりを挟むパールと私室でお茶を飲みながらお喋りをしていると、ジョバンニがシルビオが起きたと知らせてくれた。
シルビオの執務室へジョバンニを先頭に行くと、執務室の中から、
「入れ」とシルビオの声がし、ジョバンニがドアを開けてくれた。
執務室に入り、シルビオにあの謎の空間を聞こうと思うが、ジョバンニがいる所では聞きたくない。
「ジョバンニ、二人で話したいんだけど、少し出てもらえる?」
「私がいては何か問題でも?」
この人はいつもこうだ。
妻の私が夫に近付くのが何より嫌なのだ。
だったらお前が妻にでもなったらいいと何度言おうと思ったことか!
面倒なので、
「じゃあ、いいわ、戻ります。ごきげんよう!」
と言って執務室を出ようとすると、
「待て。用事があってきたんだろう?」
「ジョバンニは私が貴方に近付くのが嫌だそうなので戻ります。」
来るんじゃなかったと思い、足早に執務室を出た。
後ろでシルビオが何か言っていたが無視だ。
絶対ジョバンニはシルビオが好きなんだと思う。友人や家族としてではなく恋愛対象として想っているに違いない。
同性の恋愛に何の嫌悪感もないが、アイツだけは応援なんかしない。
シルビオとどうなろうと関係ないが、あの態度はおかしいと思う。
シルビオも注意するべきだ!
プンプンしながら私室に戻っていると、
「エルザ!」とシルビオが追ってきていた。
ゲッ⁉︎と思ったが顔には出さず、
「シルビオ、どうしたの?」と態とらしく聞いてみた。
「どうしたのって、エルザが俺の所に来たんだろ?」
「ジョバンニのいる所では話したくなかったのよ。夜で良いわ、仕事中なのにごめんなさい。」
「少しくらいなら大丈夫だ。俺の部屋でお茶でも飲もう。」
好都合だわ!シルビオの私室に入った事はあるけど、じっくり見た事はないし、私室には滅多に行かないから謎の空間を探る良い機会だ。
「ありがとう、シルビオ。」
二人でシルビオの私室に行き、ジョバンニにお茶を頼むと、案の定ヤツは出ていかず部屋に残った。
「ハァ~」と態とため息をつくと、シルビオが気がついた。
「ジョバンニ、済まないが二人にしてくれるか?」と言うと、
「いつも私はおりますが、どうしてもと言うならば。」
と偉そうに出て行った。
「ねえシルビオ、あの人はどうしてあんなに偉そうなの?
なんであんなに貴方が好きなの?
恋人?昔から恋人なの?
だったらもう離婚しましょ、その方が貴方も幸せよ。私実家に帰るわ。」
「待て待て!恋人でもないし、離婚もしない!」
「じゃあなんであんなに偉そうなのにシルビオは怒らないの?
私がバカにされてるのよ!
あの人はいつもそうなのよ!」
「ジョバンニは乳兄弟だし、子供の頃から一緒に育ってきたんだ。
つい近しい感じになるのかな、と思う。」
「前から思ってたんだけど、絶対ジョバンニは貴方を恋愛対象として見てるわよ。
私を毛嫌いしてるもの、昔からね!」
そう、アイツは昔から私を嫌っていた。
何かと意地悪されるのに、大人が見てると澄ました顔で、さも私は真面目にしておりますって感じで、誰も私が訴えてもジョバンニを叱ってくれなかったのだ。
許すまじ!
実はジョバンニとは、“はとこ”、いわゆる親戚だ。
滅多に会う事はなかったが、たまーにウチに遊びに来ては、私に攻撃をしかけ、結局取っ組み合いの喧嘩になり「お前なんか大嫌いだー!」とお互いが叫んで帰る、という一連の流れを毎回していた。
ジョバンニの両親がシルビオの家の執事、乳母兼メイド長だった為、ジョバンニも執事見習いとなり、遊びに来る事も無くなった。
なのに、何の因果か私はシルビオと結婚し、ジョバンニと毎日顔を合わせる事になってしまった。
パールはジョバンニが遊びに来なくなってから家に来たので、私とジョバンニが付き合いのない親戚だとしか知らない。
「な、なんで俺とジョーがそんな関係になってるんだよ!
俺はエルザに一目惚れして結婚したんだろ!」
「とにかくアイツは私の事が嫌いだって事!
それより、聞きたい事があるの。」
「何?」
「私に何か隠している事ってある?」
「ないよ、どうして?」
「そんな気がしたの。ないならいいわ。」
「エルザ、何か気になるのかい」
もうちょっと探ってみたいけど、私に隠すと決めているなら変に突くと警戒されてこの部屋に入れなくなるかも。
「ううん、大丈夫よ。ごめんね、シルビオ。」
シルビオは私を気にしながらも部屋まで送り、執務室に戻って行った。
部屋で待機していたパールは、
「エルザ様、どうでした?」とすぐ聞いてきた。
「うーん、はっきり聞いて誤魔化されたら余計隠されてしまいそうだから聞けなかったわ、ジョバンニもいるし。」
「ジョバンニ様…あの人はガードが固そうですね。」
とにかくこれから探っていくしかないなと決めた。
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