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トレルリ神民国~魔道具師のたまご~
魔道具講師 四~五日目
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四日目の彫金講座では、金属を魔力受容体に変化させる工程の段階で「ムリムリムリムリムリムリムリっ!」と、サロ君を泣かせた。
魔石粉を金属に練り込んだだけなのに、ちょっと大げさだと思う。
この工程だって、誰かが魔鉄化させたものか天然物を買ってくれば必要ないのに……
「ちなみに金属の魔力受容体は、素材に関係なく『魔鉄』です」
「材質によって違うんじゃないのか? よく『魔銅』とか『魔銀』ってのも聞くけど……」
叫び疲れてグンナリしてたサロ君が、ちょっぴり復活しつつ訊ねてきたのに首を横に振る。
「『魔銅』とか『魔銀』なんて呼び方をすることもあるけれど、そっちは正式名称じゃない」
――というのが魔神様のお言葉です。
とはいえお店で見た感じ、むしろ正式名称じゃない方のが主流みたいになってる気がするんだけど。
「正式名称だろうが、そうじゃなかろうが、通りが良い方でいいんじゃね?」
「まあ、ソレはそうなんだけど……。一応、正式名称は『魔鉄』ってことでお願いします」
でないと、あとで魔神様がメンドクサイのだ。
五日目に教えたのは陶器の扱い方。
基本的には素焼きで買ってきて、魔化させてから側面や底を彫って、魔石インクを充填。絵付けをしたり釉薬を塗ったりして焼いてもらったものに魔石を取り付ければ完成だ。
「なんか、コレは普通っぽいっ!」
「普通とは、こはいかに……?」
――わたし、普通のことしかさせてませんよ?
魔鉄を作るのだって、わたし以外にできる人はたくさんいる(ハズだ)し、刺繍も彫金もスキルとして身につけている人は多い。むしろ、腕前としてはわたしより上の人のほうが多いハズだ。
まるで普通じゃないことをしているように言われるのは不本意だと口をとがらせていると、サロ君は苦笑しながら「全部を実践して見せられんのがヘン」だと指摘してくる。
「コレはさ、石筆で書くのとあんまり変わんないからフツーっぽい」
どうやらサロ君的には、素焼きに先を尖らせた鉄筆で魔法文字を彫る作業は、石筆と同じような感覚らしい。
「楽しそうだけど、あんまり細く穿つのはオススメできない」
「なんで?」
「あとから魔石インクを充填するのが大変だし、調子にのって深く彫りすぎると貫通しちゃうから」
「……どっちも困るっ」
慌てて慎重に彫り進めるサロ君。
――わたしも、気を散らさずに集中せねばっ。
「……なあ、フェリシア」
「うにゅ?」
「まさか、ツボとかも作れるとか言わないよな?」
「………………イワナイヨ」
「マジかっ!?」
実のところ、素焼きになる前の段階――粘土をこねるとこから始めることも出来なくもない。
ただ、魔石粘土を作るのは面倒だし時間がかかる。なので、作り方だけを口頭で教えて終わらせることにした。
説明しただけでも、なんか、サロ君の目がうつろになってたんだけどきっとキノセイ。
「ウチの村の子供達は誰でも、泥遊びの延長で素焼きのツボを作らされたことがあるんだよ。だから、焼く前までは分かります」
「えええ……辺境の村、すげーな…………」
わたしとにぃにが育ったのが北の方にある辺境の村だと話してあるので、サロ君の中で辺境の村へのマイナスイメージがまた一つ増えたっぽい。もともとの評価があまり高くなかったっぽいから、マイナス評価に終りが見えないね。
「わたしの場合、自作のツボを焼きたくなったら、精霊さん達に『良きに計らえ』って言えばやってもらえるかもしれないけど――今のところ予定はないなぁ……。そもそも、わりとやることがたくさんあるから、そこまでする余裕がないんだもの」
「え……何がそんなに忙しいん??」
主に、聖域の整備が忙しい、かな。
ただ、コレを言うわけにはいかないので別の話で誤魔化しておく。
「お部屋に戻ってからも、補充用のお札を作ってるんだもの。休む暇もないよぉ~……?」
「ああ……リアーナが張り切りすぎて毎日完売してんだっけ……」
「売れるのは嬉しいんだけど、補充がねぇ……」
なので、昨日は露店をお休みにしてもらった。
それならちょうどいいとばかりに、にぃにが槍を作るための木材を採りにサロ君のお兄ちゃんのジャン君と一緒に森に行ってしまったんだけど――持って帰ってきた木材を乾燥させる作業にかり出されて、迷惑だったというのはナイショのことだ。
今日は二十四枚ずつ持っていってもらったんだけど……残ってるといいなぁ……(切実)。
売れすぎて困ることがあるとは思わなかったよ。
「それはそうと、粘土から作る場合の利点は、生乾きの状態で魔法文字を刻めるってことかな。たぶん、素焼きよりも刻みやすいと思う」
「ふぅん……」
興味なさそうなので、今日はここまでっ!
魔石粉を金属に練り込んだだけなのに、ちょっと大げさだと思う。
この工程だって、誰かが魔鉄化させたものか天然物を買ってくれば必要ないのに……
「ちなみに金属の魔力受容体は、素材に関係なく『魔鉄』です」
「材質によって違うんじゃないのか? よく『魔銅』とか『魔銀』ってのも聞くけど……」
叫び疲れてグンナリしてたサロ君が、ちょっぴり復活しつつ訊ねてきたのに首を横に振る。
「『魔銅』とか『魔銀』なんて呼び方をすることもあるけれど、そっちは正式名称じゃない」
――というのが魔神様のお言葉です。
とはいえお店で見た感じ、むしろ正式名称じゃない方のが主流みたいになってる気がするんだけど。
「正式名称だろうが、そうじゃなかろうが、通りが良い方でいいんじゃね?」
「まあ、ソレはそうなんだけど……。一応、正式名称は『魔鉄』ってことでお願いします」
でないと、あとで魔神様がメンドクサイのだ。
五日目に教えたのは陶器の扱い方。
基本的には素焼きで買ってきて、魔化させてから側面や底を彫って、魔石インクを充填。絵付けをしたり釉薬を塗ったりして焼いてもらったものに魔石を取り付ければ完成だ。
「なんか、コレは普通っぽいっ!」
「普通とは、こはいかに……?」
――わたし、普通のことしかさせてませんよ?
魔鉄を作るのだって、わたし以外にできる人はたくさんいる(ハズだ)し、刺繍も彫金もスキルとして身につけている人は多い。むしろ、腕前としてはわたしより上の人のほうが多いハズだ。
まるで普通じゃないことをしているように言われるのは不本意だと口をとがらせていると、サロ君は苦笑しながら「全部を実践して見せられんのがヘン」だと指摘してくる。
「コレはさ、石筆で書くのとあんまり変わんないからフツーっぽい」
どうやらサロ君的には、素焼きに先を尖らせた鉄筆で魔法文字を彫る作業は、石筆と同じような感覚らしい。
「楽しそうだけど、あんまり細く穿つのはオススメできない」
「なんで?」
「あとから魔石インクを充填するのが大変だし、調子にのって深く彫りすぎると貫通しちゃうから」
「……どっちも困るっ」
慌てて慎重に彫り進めるサロ君。
――わたしも、気を散らさずに集中せねばっ。
「……なあ、フェリシア」
「うにゅ?」
「まさか、ツボとかも作れるとか言わないよな?」
「………………イワナイヨ」
「マジかっ!?」
実のところ、素焼きになる前の段階――粘土をこねるとこから始めることも出来なくもない。
ただ、魔石粘土を作るのは面倒だし時間がかかる。なので、作り方だけを口頭で教えて終わらせることにした。
説明しただけでも、なんか、サロ君の目がうつろになってたんだけどきっとキノセイ。
「ウチの村の子供達は誰でも、泥遊びの延長で素焼きのツボを作らされたことがあるんだよ。だから、焼く前までは分かります」
「えええ……辺境の村、すげーな…………」
わたしとにぃにが育ったのが北の方にある辺境の村だと話してあるので、サロ君の中で辺境の村へのマイナスイメージがまた一つ増えたっぽい。もともとの評価があまり高くなかったっぽいから、マイナス評価に終りが見えないね。
「わたしの場合、自作のツボを焼きたくなったら、精霊さん達に『良きに計らえ』って言えばやってもらえるかもしれないけど――今のところ予定はないなぁ……。そもそも、わりとやることがたくさんあるから、そこまでする余裕がないんだもの」
「え……何がそんなに忙しいん??」
主に、聖域の整備が忙しい、かな。
ただ、コレを言うわけにはいかないので別の話で誤魔化しておく。
「お部屋に戻ってからも、補充用のお札を作ってるんだもの。休む暇もないよぉ~……?」
「ああ……リアーナが張り切りすぎて毎日完売してんだっけ……」
「売れるのは嬉しいんだけど、補充がねぇ……」
なので、昨日は露店をお休みにしてもらった。
それならちょうどいいとばかりに、にぃにが槍を作るための木材を採りにサロ君のお兄ちゃんのジャン君と一緒に森に行ってしまったんだけど――持って帰ってきた木材を乾燥させる作業にかり出されて、迷惑だったというのはナイショのことだ。
今日は二十四枚ずつ持っていってもらったんだけど……残ってるといいなぁ……(切実)。
売れすぎて困ることがあるとは思わなかったよ。
「それはそうと、粘土から作る場合の利点は、生乾きの状態で魔法文字を刻めるってことかな。たぶん、素焼きよりも刻みやすいと思う」
「ふぅん……」
興味なさそうなので、今日はここまでっ!
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