上 下
118 / 123
トレルリ神民国~魔道具師のたまご~

魔道具講師 四~五日目

しおりを挟む
 四日目の彫金講座では、金属を魔力受容体に変化させる工程の段階で「ムリムリムリムリムリムリムリっ!」と、サロ君を泣かせた。
魔石粉を金属に練り込んだだけなのに、ちょっと大げさだと思う。
この工程だって、誰かが魔鉄化させたものか天然物を買ってくれば必要ないのに……

 
「ちなみに金属の魔力受容体は、素材に関係なく『魔鉄』です」

「材質によって違うんじゃないのか? よく『魔銅』とか『魔銀』ってのも聞くけど……」


 叫び疲れてグンナリしてたサロ君が、ちょっぴり復活しつつ訊ねてきたのに首を横に振る。


「『魔銅』とか『魔銀』なんて呼び方をすることもあるけれど、そっちは正式名称じゃない」


――というのが魔神様のお言葉です。

 とはいえお店で見た感じ、むしろ正式名称じゃない方のが主流みたいになってる気がするんだけど。


「正式名称だろうが、そうじゃなかろうが、通りが良い方でいいんじゃね?」

「まあ、ソレはそうなんだけど……。一応、正式名称は『魔鉄』ってことでお願いします」


 でないと、あとで魔神様がメンドクサイのだ。




 五日目に教えたのは陶器の扱い方。
基本的には素焼きで買ってきて、魔化させてから側面や底を彫って、魔石インクを充填。絵付けをしたり釉薬を塗ったりして焼いてもらったものに魔石を取り付ければ完成だ。


「なんか、コレは普通っぽいっ!」

「普通とは、こはいかに……?」


――わたし、普通のことしかさせてませんよ?

 魔鉄を作るのだって、わたし以外にできる人はたくさんいる(ハズだ)し、刺繍も彫金もスキルとして身につけている人は多い。むしろ、腕前としてはわたしより上の人のほうが多いハズだ。
まるで普通じゃないことをしているように言われるのは不本意だと口をとがらせていると、サロ君は苦笑しながら「全部を実践して見せられんのがヘン」だと指摘してくる。


「コレはさ、石筆で書くのとあんまり変わんないからフツーっぽい」


 どうやらサロ君的には、素焼きに先を尖らせた鉄筆で魔法文字を彫る作業は、石筆と同じような感覚らしい。


「楽しそうだけど、あんまり細く穿つのはオススメできない」

「なんで?」

「あとから魔石インクを充填するのが大変だし、調子にのって深く彫りすぎると貫通しちゃうから」

「……どっちも困るっ」


 慌てて慎重に彫り進めるサロ君。

――わたしも、気を散らさずに集中せねばっ。


「……なあ、フェリシア」

「うにゅ?」

「まさか、ツボとかも作れるとか言わないよな?」

「………………イワナイヨ」

「マジかっ!?」

 
 実のところ、素焼きになる前の段階――粘土をこねるとこから始めることも出来なくもない。
ただ、魔石粘土を作るのは面倒だし時間がかかる。なので、作り方だけを口頭で教えて終わらせることにした。
説明しただけでも、なんか、サロ君の目がうつろになってたんだけどきっとキノセイ。


「ウチの村の子供達は誰でも、泥遊びの延長で素焼きのツボを作らされたことがあるんだよ。だから、焼く前までは分かります」

「えええ……辺境の村、すげーな…………」


 わたしとにぃに・・・が育ったのが北の方にある辺境の村だと話してあるので、サロ君の中で辺境の村へのマイナスイメージがまた一つ増えたっぽい。もともとの評価があまり高くなかったっぽいから、マイナス評価に終りが見えないね。


「わたしの場合、自作のツボを焼きたくなったら、精霊さん達に『良きに計らえ』って言えばやってもらえるかもしれないけど――今のところ予定はないなぁ……。そもそも、わりとやることがたくさんあるから、そこまでする余裕がないんだもの」

「え……何がそんなに忙しいん??」


 主に、聖域の整備が忙しい、かな。
ただ、コレを言うわけにはいかないので別の話で誤魔化しておく。


「お部屋に戻ってからも、補充用のお札を作ってるんだもの。休む暇もないよぉ~……?」

「ああ……リアーナが張り切りすぎて毎日完売してんだっけ……」

「売れるのは嬉しいんだけど、補充がねぇ……」


 なので、昨日は露店をお休みにしてもらった。
それならちょうどいいとばかりに、にぃに・・・が槍を作るための木材を採りにサロ君のお兄ちゃんのジャン君と一緒に森に行ってしまったんだけど――持って帰ってきた木材を乾燥させる作業にかり出されて、迷惑だったというのはナイショのことだ。
今日は二十四枚ずつ持っていってもらったんだけど……残ってるといいなぁ……(切実)。
売れすぎて困ることがあるとは思わなかったよ。


「それはそうと、粘土から作る場合の利点は、生乾きの状態で魔法文字を刻めるってことかな。たぶん、素焼きよりも刻みやすいと思う」

「ふぅん……」


 興味なさそうなので、今日はここまでっ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

妖精王オベロンの異世界生活

悠十
ファンタジー
 ある日、サラリーマンの佐々木良太は車に轢かれそうになっていたお婆さんを庇って死んでしまった。  それは、良太が勤める会社が世界初の仮想空間による体感型ゲームを世界に発表し、良太がGMキャラの一人に、所謂『中の人』選ばれた、そんな希望に満ち溢れた、ある日の事だった。  お婆さんを助けた事に後悔はないが、未練があった良太の魂を拾い上げたのは、良太が助けたお婆さんだった。  彼女は、異世界の女神様だったのだ。  女神様は良太に提案する。 「私の管理する世界に転生しませんか?」  そして、良太は女神様の管理する世界に『妖精王オベロン』として転生する事になった。  そこから始まる、妖精王オベロンの異世界生活。

夜霧の騎士と聖なる銀月

羽鳥くらら
ファンタジー
伝説上の生命体・妖精人(エルフ)の特徴と同じ銀髪銀眼の青年キリエは、教会で育った孤児だったが、ひょんなことから次期国王候補の1人だったと判明した。孤児として育ってきたからこそ貧しい民の苦しみを知っているキリエは、もっと皆に優しい王国を目指すために次期国王選抜の場を活用すべく、夜霧の騎士・リアム=サリバンに連れられて王都へ向かうのだが──。 ※多少の戦闘描写・残酷な表現を含みます ※小説家になろう・カクヨム・ノベルアップ+・エブリスタでも掲載しています

美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する

くみたろう
ファンタジー
いつもと変わらない日常が一変するのをただの会社員である芽依はその身をもって知った。 世界が違った、価値観が違った、常識が違った、何もかもが違った。 意味がわからなかったが悲観はしなかった。 花嫁だと言われ、その甘い香りが人外者を狂わすと言われても、芽依の周りは優しさに包まれている。 そばに居るのは巨大な蟻で、いつも優しく格好良く守ってくれる。 奴隷となった大好きな二人は本心から芽依を愛して側にいてくれる。 麗しい領主やその周りの人外者達も、話を聞いてくれる。 周りは酷く残酷な世界だけれども、芽依はたまにセクハラをして齧りつきながら穏やかに心を育み生きていく。 それはこの美しく清廉で、残酷でいておぞましい御伽噺の世界の中でも慈しみ育む人外者達や異世界の人間が芽依を育て守ってくれる。 お互いの常識や考えを擦り合わせ歩み寄り、等価交換を基盤とした世界の中で、優しさを育てて自分の居場所作りに励む。 全ては幸せな気持ちで大好きなお酒を飲む為であり、素敵な酒のつまみを開発する日々を送るためだ。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

処理中です...