上 下
111 / 123
トレルリ神民国~魔道具師のたまご~

魔道具講師 一日目 その4

しおりを挟む
 さてさて、リアーナちゃん率いる、露店販売組の今日の成果は大銅貨十五枚と銅貨が三十七枚となかなかのものだ。ちなみに、大銅貨十五枚がにぃに・・・の分。
自分でお店を出さずにこれだけ稼げるんだったら、悪くない。


「明日はもっと売ってくるから、期待しててね。お姉ちゃんっ」

「もっと売る~!」

「リアーナちゃんとアーダちゃんは頼もしいなぁ」


 リアーナちゃんとアーダちゃんの頭を撫でて、お駄賃と一緒にミルクケーキを三つ渡す。


「ジャンさんもありがとう。明日もよろしくお願いしますっ」


 ジャン君は年上だから、頭を下げて同じものを渡して感謝の気持を込めて笑いかけた。


「お、おうっ、まかせとけっ」

「はい、頼りにしてます」


 どんなにしっかりしてても、リアーナちゃんは六歳だ。加護の儀をきちんと終えてるお兄ちゃんがいてくれないと、露店販売を丸投げなんてできません。一人だけもらえないと可哀想なので、羨ましそうな顔をしているサロ君にもミルクケーキを渡して、暇な時間にやるべきことを指示したらさっさと自分達の部屋に退散だ。

 出された宿題に、サロ君は微妙な顔をしていたけど――この課題。
真面目にやれば、二月もしないうちに魔力が一ランク上がりますよ?
魔神様のお墨付きなので、頑張ってほしいと思います。



 なんとなく、疲れた気分でベッドの上をゴロゴロしているうちに、部屋の外からにぃに・・・達の声が聞こえてくる。

――お買い物の時間だっ!

 大喜びでベッドから飛び降りドアを開け、手前の方にいたにぃに・・・に飛びついた。


「おかえりなさいっ!」

「ぅわっ!?」

「おお? だいかんげ~じゃんっ」

「やはり、一人で残すべきではなかったか……」


 頭をグリグリとにぃに・・・の胸にこすりつけ、マーキングをしていたらクリナムさんが難しい声で呟く。

――違うよ、違う。
  違います。
  フェリシアは、ただ、ちょっとだけ甘えたい気分なだけです。
  決して、一人でお留守番するのが寂しかったわけじゃない。

 そう思うのに、順番々にギューっとされたら、否定の言葉が消えてなくなる。

――わたし、さみしかったのかな?

 抱きしめられてホッとしてるんだから、本当は寂しかったのかもしれない。
クリナムさんに抱き上げられて部屋に戻ると、「俺、フェリシアちゃんのホットケーキ食いたいっ」とピエリスさんがいい出したので、お出かけ前に聖域でお茶を飲むことになった。
きっと、わたしが落ち着く時間が必要だと思ったんだと思う。ちょっぴり涙がちょちょ切れちゃったので……


 お菓子を食べつつみんなが話してくれたのは、にぃに・・・の狩りや、クリナムさんの薬草集めの成果と、ピエリスさんからは魔獣の分布について。
 今日はそこそこ大きめな魔獣の群れを狙ったそうで、にぃに・・・はとても満足げ。普通体験は必要ないからとゴネて、全力で狩りを楽しんでいるらしい。
そのおかげでわたしも、魔石の材料が大量に手に入ってウッハウハだ。
全部、斡旋所で買い取ってもらえる額の半分の値段で、わたしが買い取らせていただきましたとも。
だってねぇ……斡旋所の買取価格って、下手すると魔石を買うのと同程度の金額にしかならないのだ。それなら、まるごと自分で使ってしまった方がいい。
ちなみに、半額なのは、お肉はみんなで食べる確率が高いから。
いざとなれば、生肉を大量消費してくれる従魔もたくさんいるし、わたしが全額出しても良かったんだけどね。


「夜のウチに、中身を抜いて皮を剥いときゃいーかね?」

「うにうに。ソコまでやってもらえたら、暇な時間に保存できるようにしちゃいます」


 ベーコンとか、ハムとか。
加工して、お札を貼っておけばかなり保つよね。
日持ちのする煮込み料理にして、凍らせとくのも悪くない。
なにはともあれ、明日の午前はその作業で潰れてくれるのがまた良いことだ。
お札を書くのにも、ちょっぴり飽き的始めてるので……売り物用のお札を作るのは、サロ君に教えてる間だけで良い気がする。

――お料理に夢中になりすぎないようにしないと。

 部屋にリアーナちゃんが呼びに来たときに、わたしがいないのは不自然だもの。


「あと、明日は私も宿に残る予定だ」

「うにゃ?」

「採ってきた薬草の保存や下処理をしないとな」

「こいつ、群生地を見っけたもんだから、調子に乗ってすんげー採ってさ。一晩じゃ終わらないんよ」


 植生をかえない程度にガッツリ採ってきたと言ってたので、ソレには納得。


「あと、明後日は俺もグーちゃんもお休みっ!」

「寝起きするためだけなら、町で宿を取る必要もないからね。せっかくだからもう少し町歩きも楽しみたいでしょ」

「にゃるほど……?」


 確かに、なんのかんので秋の門や夏の門は見てすらいない。
明後日の午前中は、一緒にお店を冷やかして歩こうと言われれば断る理由もないよね。


「あのね、わたしのことなら気にせずに狩りとか採集に出かけて良いんだよ?」


 とは言ってみたものの、四人で町を歩くのはやっぱり楽しそう。
お耳パタパタ、シッポをクルクルしながら順繰りに顔を見ていくと、にぃに・・・はちょっぴり呆れた半笑い、ピエリスさんには『分かってる』と言わんばかりのニヨニヨ笑顔で、クリナムさんからは励ますような笑みを向けられた。


「じゃあ……明後日は、町の散策・第二弾だねっ」


 明後日が、わたし、とっても楽しみです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

妖精王オベロンの異世界生活

悠十
ファンタジー
 ある日、サラリーマンの佐々木良太は車に轢かれそうになっていたお婆さんを庇って死んでしまった。  それは、良太が勤める会社が世界初の仮想空間による体感型ゲームを世界に発表し、良太がGMキャラの一人に、所謂『中の人』選ばれた、そんな希望に満ち溢れた、ある日の事だった。  お婆さんを助けた事に後悔はないが、未練があった良太の魂を拾い上げたのは、良太が助けたお婆さんだった。  彼女は、異世界の女神様だったのだ。  女神様は良太に提案する。 「私の管理する世界に転生しませんか?」  そして、良太は女神様の管理する世界に『妖精王オベロン』として転生する事になった。  そこから始まる、妖精王オベロンの異世界生活。

異世界で黒猫君とマッタリ行きたい

こみあ
ファンタジー
始発電車で運命の恋が始まるかと思ったら、なぜか異世界に飛ばされました。 世界は甘くないし、状況は行き詰ってるし。自分自身も結構酷いことになってるんですけど。 それでも人生、生きてさえいればなんとかなる、らしい。 マッタリ行きたいのに行けない私と黒猫君の、ほぼ底辺からの異世界サバイバル・ライフ。 注)途中から黒猫君視点が増えます。 ----- 不定期更新中。 登場人物等はフッターから行けるブログページに収まっています。 100話程度、きりのいい場所ごとに「*」で始まるまとめ話を追加しました。 それではどうぞよろしくお願いいたします。

夜霧の騎士と聖なる銀月

羽鳥くらら
ファンタジー
伝説上の生命体・妖精人(エルフ)の特徴と同じ銀髪銀眼の青年キリエは、教会で育った孤児だったが、ひょんなことから次期国王候補の1人だったと判明した。孤児として育ってきたからこそ貧しい民の苦しみを知っているキリエは、もっと皆に優しい王国を目指すために次期国王選抜の場を活用すべく、夜霧の騎士・リアム=サリバンに連れられて王都へ向かうのだが──。 ※多少の戦闘描写・残酷な表現を含みます ※小説家になろう・カクヨム・ノベルアップ+・エブリスタでも掲載しています

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

怠惰生活希望の第六王子~悪徳領主を目指してるのに、なぜか名君呼ばわりされているんですが~

服田 晃和
ファンタジー
 ブラック企業に勤めていた男──久岡達夫は、同僚の尻拭いによる三十連勤に体が耐え切れず、その短い人生を過労死という形で終えることとなった。  最悪な人生を送った彼に、神が与えてくれた二度目の人生。  今度は自由気ままな生活をしようと決意するも、彼が生まれ変わった先は一国の第六王子──アルス・ドステニアだった。当初は魔法と剣のファンタジー世界に転生した事に興奮し、何でも思い通りに出来る王子という立場も気に入っていた。 しかし年が経つにつれて、激化していく兄達の跡目争いに巻き込まれそうになる。 どうにか政戦から逃れようにも、王子という立場がそれを許さない。 また俺は辛い人生を送る羽目になるのかと頭を抱えた時、アルスの頭に一つの名案が思い浮かんだのだ。 『使えない存在になれば良いのだ。兄様達から邪魔者だと思われるようなそんな存在になろう!』 こうしてアルスは一つの存在を目指すことにした。兄達からだけではなく国民からも嫌われる存在。 『ちょい悪徳領主』になってやると。

処理中です...