105 / 123
トレルリ神民国~『普通』を体験してみよう~
常設依頼に挑戦しようっ その4
しおりを挟む
「マジ、俺さ。なんで生きてんの??」
とっても不思議そうな顔で首を傾げつつ、ピエリスさんはクリームたっぷりの激甘パンケーキを口に入れた。
「フェリシアが、あとさき考えずにピエリスの助命を魔神様に願ったおかげだね……」
「ああ……見せたかったな。魔神様が降臨されたフェリシアの姿」
神々しくもうるわしい姿だったと続けるクリナムさんに、わたしもピエリスさんも「ええ?」と呟く。
――中身はともかく外見はわたしのままだよね?
「まあ、表情一つで化けんのは間違いないケド、フェリシアちゃんみたいな子供に色気はナイっしょ」
なんとも表現しづらい色気もあったなんて言い出したもんだから、ピエリスさんは半笑い。
にぃには少しばかり警戒した表情になって、わたしの方に椅子をちょっぴり近づける。
「いや、フェリシアをそういう目で見てるってわけじゃない。本当だ」
慌てて弁明するのがまた怪しく感じるのか、にぃにの椅子が、また近づく。
まあね……わたしとしては、クリナムさんの言うことも分からないでもない。
魔神様って言動が幼い――と言うか無邪気に見える割に、ふとした表情に子供のわたしでもドキッとさせられることがよくあるし。
「それよりも、フェリシアちゃん。『あとさき考えず』は良くないっしょ」
ジトっとした目でピエリスさんさんに睨まれたけど、それはコッチのセリフです。
「ピエリスも、人のこと言えないよね」
「あの場であの行動に出てしまったのは、仕方ないと言えなくもないが――フェリシアもピエリスも、無茶をしたことに変わりはないな」
ピエリスさんの死を覚悟した瞬間を思い出したのか、クリナムさんの目に涙が浮かぶ。
なにはともあれ、ピエリスさんは激甘パンケーキを五枚もお替りするほど食欲旺盛だし、心配する必要はないと分かっていても、ほんの数時間前の話だ。わたしものどがキュッとなる。
あの時はショックのあまり妙に頭の中が冷静だったけど、思い出すと涙が出てきた。我慢しようと頑張ったけど、失敗だ。涙がボロボロこぼれてしまう。
「フェリシアがうっかり死にかけたのを許す気はないけど、どっちも助かったから……まあ、良かったことにしとく。でも、二人とも。次がないようにね」
「是非とも、そう願いたい」
「「前向きに善処します」」
「それは、反省する気のない返事だな」
「フェリシアもピエリスも、お説教が必要?」
「「ごめんなさいっ!!」」
にぃにとクリナムさんに睨まれて、二人揃って頭を下げる。
不承不承ながらも怒りを収めてくれたにぃにには悪いけど、『次』があったらまたやると思う。ただし、今度は失敗しないよ。NGワードは覚えたからねっ!
あのあと――ピエリスさんは、魔神様の治療によって一命をとりとめた。
半分以上死にかけてる状態だったから、ピエリスさんに加護を授けている諜報神様の助けを借りつつ行われた治療は、なかなかグロテスクなものだったらしい。
クリナムさんは魔神様は治療している間中、人や魔獣の体の構造について懇切丁寧に教えをうけたらしい。そういった知識があるのとないのとで、治癒の精霊さんが癒せる範囲が変わってくるそう。目に見える傷を癒やすくらいなら問題ないけど、きちんとした知識がないと骨や腱、内蔵が傷ついたときに対処ができないらしい。
――わたしも、勉強しなきゃダメかな……?
これから先、にぃにやピエリスさんが怪我をする場面はたくさんあるとだろう。クリナムさんに任せっきりにせず、自分も覚えた方がいいよね。
「そいや、クリナム。目……」
「ああ。魔神様に治癒の精霊のご加護を授けていただいた」
クリナムさんの目は水属性の水色だったけど、今は片目が癒し属性のオレンジ色だ。魔神様から直接授かったのがよっぽど嬉しかったのか、感動のあまり目をキラキラさせている。
わたしの姿でなければ、もっと良かったんじゃないかと思います。
クリナムさんは神気に対する耐性が低いらしいので、それは叶わないことなのかもだけど。
なにはともあれ、その日は聖域で一晩のんびり過ごして、翌日のお昼すぎに来た道をそのまま戻る形で森を出た。
もちろん、その道筋ならゲキツヨな魔獣がいないってことを確認した上で、だ。
お宿に戻ると、女将さんがメチャクチャ心配してたっぽく、わたしの顔を見た途端に泣き出してしまってびびっくり。次の日からしばらくは露店をするつもりだと話したら、ホッとした様子で胸をなでおろしてた。
斡旋所の初仕事は、こうして失敗に終わったわけだけど――そのうち、魔神様が『大丈夫』ってお墨付きにしてくれる場所があったら再挑戦したいと思います。
とっても不思議そうな顔で首を傾げつつ、ピエリスさんはクリームたっぷりの激甘パンケーキを口に入れた。
「フェリシアが、あとさき考えずにピエリスの助命を魔神様に願ったおかげだね……」
「ああ……見せたかったな。魔神様が降臨されたフェリシアの姿」
神々しくもうるわしい姿だったと続けるクリナムさんに、わたしもピエリスさんも「ええ?」と呟く。
――中身はともかく外見はわたしのままだよね?
「まあ、表情一つで化けんのは間違いないケド、フェリシアちゃんみたいな子供に色気はナイっしょ」
なんとも表現しづらい色気もあったなんて言い出したもんだから、ピエリスさんは半笑い。
にぃには少しばかり警戒した表情になって、わたしの方に椅子をちょっぴり近づける。
「いや、フェリシアをそういう目で見てるってわけじゃない。本当だ」
慌てて弁明するのがまた怪しく感じるのか、にぃにの椅子が、また近づく。
まあね……わたしとしては、クリナムさんの言うことも分からないでもない。
魔神様って言動が幼い――と言うか無邪気に見える割に、ふとした表情に子供のわたしでもドキッとさせられることがよくあるし。
「それよりも、フェリシアちゃん。『あとさき考えず』は良くないっしょ」
ジトっとした目でピエリスさんさんに睨まれたけど、それはコッチのセリフです。
「ピエリスも、人のこと言えないよね」
「あの場であの行動に出てしまったのは、仕方ないと言えなくもないが――フェリシアもピエリスも、無茶をしたことに変わりはないな」
ピエリスさんの死を覚悟した瞬間を思い出したのか、クリナムさんの目に涙が浮かぶ。
なにはともあれ、ピエリスさんは激甘パンケーキを五枚もお替りするほど食欲旺盛だし、心配する必要はないと分かっていても、ほんの数時間前の話だ。わたしものどがキュッとなる。
あの時はショックのあまり妙に頭の中が冷静だったけど、思い出すと涙が出てきた。我慢しようと頑張ったけど、失敗だ。涙がボロボロこぼれてしまう。
「フェリシアがうっかり死にかけたのを許す気はないけど、どっちも助かったから……まあ、良かったことにしとく。でも、二人とも。次がないようにね」
「是非とも、そう願いたい」
「「前向きに善処します」」
「それは、反省する気のない返事だな」
「フェリシアもピエリスも、お説教が必要?」
「「ごめんなさいっ!!」」
にぃにとクリナムさんに睨まれて、二人揃って頭を下げる。
不承不承ながらも怒りを収めてくれたにぃにには悪いけど、『次』があったらまたやると思う。ただし、今度は失敗しないよ。NGワードは覚えたからねっ!
あのあと――ピエリスさんは、魔神様の治療によって一命をとりとめた。
半分以上死にかけてる状態だったから、ピエリスさんに加護を授けている諜報神様の助けを借りつつ行われた治療は、なかなかグロテスクなものだったらしい。
クリナムさんは魔神様は治療している間中、人や魔獣の体の構造について懇切丁寧に教えをうけたらしい。そういった知識があるのとないのとで、治癒の精霊さんが癒せる範囲が変わってくるそう。目に見える傷を癒やすくらいなら問題ないけど、きちんとした知識がないと骨や腱、内蔵が傷ついたときに対処ができないらしい。
――わたしも、勉強しなきゃダメかな……?
これから先、にぃにやピエリスさんが怪我をする場面はたくさんあるとだろう。クリナムさんに任せっきりにせず、自分も覚えた方がいいよね。
「そいや、クリナム。目……」
「ああ。魔神様に治癒の精霊のご加護を授けていただいた」
クリナムさんの目は水属性の水色だったけど、今は片目が癒し属性のオレンジ色だ。魔神様から直接授かったのがよっぽど嬉しかったのか、感動のあまり目をキラキラさせている。
わたしの姿でなければ、もっと良かったんじゃないかと思います。
クリナムさんは神気に対する耐性が低いらしいので、それは叶わないことなのかもだけど。
なにはともあれ、その日は聖域で一晩のんびり過ごして、翌日のお昼すぎに来た道をそのまま戻る形で森を出た。
もちろん、その道筋ならゲキツヨな魔獣がいないってことを確認した上で、だ。
お宿に戻ると、女将さんがメチャクチャ心配してたっぽく、わたしの顔を見た途端に泣き出してしまってびびっくり。次の日からしばらくは露店をするつもりだと話したら、ホッとした様子で胸をなでおろしてた。
斡旋所の初仕事は、こうして失敗に終わったわけだけど――そのうち、魔神様が『大丈夫』ってお墨付きにしてくれる場所があったら再挑戦したいと思います。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
◆◇◆◇◆
【今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。】の【連載版】です。連載するに辺り、タイトル微妙に変更しております。
●尚、タイトル最初の『0』は短編と同じ物語を掲載しております。御注意下さい。
◇◆◇注意◇◆◇
・1章ずつ、一気に書き上げてから掲載しております。その為、ネタが仕上がるまでUPしませんのでご了承下さい。
・1話三千~八千文字とバラバラになっております。
・「R15」と「残虐な描写あり」は保険です。
・なろうにも掲載しております。
5/21
1章の3話目。日本語がかなりおかしい文章が多々あり、アチコチ修正致しました。話も少し違っております。大変申し訳ありませんでした。
【2021年8月 休止中】
二重転生!? ~10月10日で私が消える?~
霧ちゃん→霧聖羅
恋愛
わたしこと、藤咲りりんはどこにでもいる派遣社員。28歳独身だ。
趣味はゲームに服作り。
最近は異世界に暮らす恋人とVRゲームに興じる日々を送ってる。
その日、ゲーム内での友人に会う為に家を出たわたしは、原因不明の眩暈におそわれた。
こりゃあ即売会場に向かうのは無理だと家に帰ろうとしたところで、
エスカレーターの故障事故に遭ってしまい、命を落としてしまう。
もう、彼とは会えないんだと思いつつ命を落とした筈のわたしは、
彼の暮らすキトゥンガーデンと言う世界に転生する事に?!
じゃあ、アル。…一緒に新婚旅行に出かけようか?
※『秘密の異世界交流』の続編です。
※『リエラと創ろう!迷宮都市』と一部リンクします。
※『魂の護り手』と言う作品はこの作品のスピンオフ的な何かです。
※視点切り替えがあります。
タイトルの頭が★の場合、アスタール視点。
タイトルの前後に☆★の場合、レプトス&スピネル視点。
無印の場合は、リリン視点です。
おとぎ話は終わらない
灯乃
ファンタジー
旧題:おとぎ話の、その後で
母を亡くし、天涯孤独となったヴィクトリア。職を求めて皇都にやってきた彼女は、基準値に届く魔力さえあれば「三食寮費すべてタダ」という条件に飛びつき、男だらけの学院、通称『楽園』に入学した。目立たないように髪を切り、眼鏡をかけて。そんな行き当たりばったりで脳天気かつマイペースなヴィクトリアは、お約束通りの「眼鏡を外したら美少女」です。男の園育ちの少年たちが、そんな彼女に翻弄されたりされなかったりしますが、逆ハーにはなりません。アルファポリスさまから書籍化していただきました。それに伴い、書籍化該当部分をヒーロー視点で書き直したものに置き換えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる