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ブロッキ神国横断中
そのころのわたし
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クリナムさんの夜中の決意のお話や、ピエリスさんの暴走劇に関してはあとから聞いたんだけど――そんなこんながあったころ。
久しぶりに神域のお家で休んだわたしはというと、ぐっすり眠ったおかげで、お目々はぱっちり、気分爽快な目覚めをむかえていた。
毎度のことながら、わたしのことを抱え込むようにして丸くなってるにぃにの腕の中から抜け出して「ん~っ」っと大きく伸びをする。にぃにはまだまだ起きなそうだとピスピス言ってるお鼻をつついて判断したわたしは、一人で家から抜け出し日課を始めることにした。
日課と言っても、ミルギュー達はスキルフィールドの中にいるし、こっちで乳搾りをしちゃうとピエリスさん達が『いつの間に??』ってなっちゃうからね。ランチューの卵を回収しながら、精霊さん達に土壌改良をお願いするだけ。
この作業も、わたしが現し世に戻ってしまうと中断されちゃうから、ここ数日は放置してた。あと少しで牧草地にできるって状態なのに、その『あと少し』が進まないのはもどかしいことこの上ない。
――にぃに、早く聖域のことを教えていいよって言わないかなぁ……?
精霊さん達が土壌改良に励んでくれている間に、私は畜舎で二日……三日前に確保したフォレチェルの解体に取り掛かる。
「とは言え、十八頭全部を解体するのは無理だね」
とりあえず、一体取り出して皮を剥ぐ。
わたしの持ってる『包丁術』というスキルには獣の解体も含まれているみたいで、途中までは順調に作業を進めることができた。ただ、困ったのが重くてひっくり返さないこと。
「……そっか、マジックバッグに入れて出し直せばいいんだ」
そうと決めたら、皮を剥ぎ終えてる方の足は先に外しておいても構わない。むしろ、先に半分切り落としてしまっても良さそうだ。
思いついたら、即実行!
わたしはせっせと足を落として、骨から肉を外していく。『生き物』の形から『お肉』へと変化していくウチに、頭の中は『どうやって食べよう』という妄想で一杯になる。
――骨は一回炙ってから、たっぷりのお湯でダシを取って……
スープもいいけど、煮込みも悪くない。
考えているだけで、もう幸せ。
休み休み作業を続けて、四体分をバラした頃にはお外もだいぶ明るくなっていて、にぃにが武神様と剣を打ち合う音がし始めている。
なんだか、いつもの朝って感じだ。
――そういや、せっかく覚えた護身術スキル、全然練習してないね。
覚えてすぐに、クリナムさんやピエリスさんと出会ってしまって、聖域でのんびり過ごすこともなかったのですっかり頭の中から消えてたよ。
いっそ、このまま気づかないでいてほしいななどと思いつつ、血みどろになってしまった畜舎の中を洗い流してから外に出ると、地面の状態がとっても良さげになってることに気がついた。
しっとりほこほこで栄養たっぷりな濃い茶色は、すくすくお野菜が育つ良い土の証拠だ。
「このくらいの気温なら、茶麦はイケるよね」
生命力が強くって、ある程度の寒さなら平気で背丈が伸びていくのが、茶麦の特徴。
その分、味は落ちるけどミルギューやランチューのご飯としてなら問題ない。
風の精霊さんにお願いして、種籾をわたしの分の敷地に撒き散らしてから地面に手をつく。
「それじゃあ、あとは地面の栄養がなくなりすぎないように、程よく茶麦を育ててね」
地面の精霊さんと植物の精霊さんに頼みたいことを口にして、地面に向かって魔力を放出していくと、もみの中からムクムクと若芽が萌出し地面に白い根っこを張り始めた。
しばらくの間魔力を流し続けていくと、足首よりもちょっと高いくらいの場所で成長が止まる。どうやらこれが、土を痩せさせずに育てられる限界らしい。
あとは、毎日お水を上げつつ普通に育てればいいだろう。
やっと牧草地を作ることができるようになったと、一人で満足感に浸っているところに鍛錬を終えたらしいにぃにが現し世に戻ろうと言ってきたので今日の聖域活動はこれでおしまいっ。
――明日も、ちゃんとお世話をしにこれたら良いんだけど……
今日の夜も、にぃにと二人でネンコできればいいなと思います。
久しぶりに神域のお家で休んだわたしはというと、ぐっすり眠ったおかげで、お目々はぱっちり、気分爽快な目覚めをむかえていた。
毎度のことながら、わたしのことを抱え込むようにして丸くなってるにぃにの腕の中から抜け出して「ん~っ」っと大きく伸びをする。にぃにはまだまだ起きなそうだとピスピス言ってるお鼻をつついて判断したわたしは、一人で家から抜け出し日課を始めることにした。
日課と言っても、ミルギュー達はスキルフィールドの中にいるし、こっちで乳搾りをしちゃうとピエリスさん達が『いつの間に??』ってなっちゃうからね。ランチューの卵を回収しながら、精霊さん達に土壌改良をお願いするだけ。
この作業も、わたしが現し世に戻ってしまうと中断されちゃうから、ここ数日は放置してた。あと少しで牧草地にできるって状態なのに、その『あと少し』が進まないのはもどかしいことこの上ない。
――にぃに、早く聖域のことを教えていいよって言わないかなぁ……?
精霊さん達が土壌改良に励んでくれている間に、私は畜舎で二日……三日前に確保したフォレチェルの解体に取り掛かる。
「とは言え、十八頭全部を解体するのは無理だね」
とりあえず、一体取り出して皮を剥ぐ。
わたしの持ってる『包丁術』というスキルには獣の解体も含まれているみたいで、途中までは順調に作業を進めることができた。ただ、困ったのが重くてひっくり返さないこと。
「……そっか、マジックバッグに入れて出し直せばいいんだ」
そうと決めたら、皮を剥ぎ終えてる方の足は先に外しておいても構わない。むしろ、先に半分切り落としてしまっても良さそうだ。
思いついたら、即実行!
わたしはせっせと足を落として、骨から肉を外していく。『生き物』の形から『お肉』へと変化していくウチに、頭の中は『どうやって食べよう』という妄想で一杯になる。
――骨は一回炙ってから、たっぷりのお湯でダシを取って……
スープもいいけど、煮込みも悪くない。
考えているだけで、もう幸せ。
休み休み作業を続けて、四体分をバラした頃にはお外もだいぶ明るくなっていて、にぃにが武神様と剣を打ち合う音がし始めている。
なんだか、いつもの朝って感じだ。
――そういや、せっかく覚えた護身術スキル、全然練習してないね。
覚えてすぐに、クリナムさんやピエリスさんと出会ってしまって、聖域でのんびり過ごすこともなかったのですっかり頭の中から消えてたよ。
いっそ、このまま気づかないでいてほしいななどと思いつつ、血みどろになってしまった畜舎の中を洗い流してから外に出ると、地面の状態がとっても良さげになってることに気がついた。
しっとりほこほこで栄養たっぷりな濃い茶色は、すくすくお野菜が育つ良い土の証拠だ。
「このくらいの気温なら、茶麦はイケるよね」
生命力が強くって、ある程度の寒さなら平気で背丈が伸びていくのが、茶麦の特徴。
その分、味は落ちるけどミルギューやランチューのご飯としてなら問題ない。
風の精霊さんにお願いして、種籾をわたしの分の敷地に撒き散らしてから地面に手をつく。
「それじゃあ、あとは地面の栄養がなくなりすぎないように、程よく茶麦を育ててね」
地面の精霊さんと植物の精霊さんに頼みたいことを口にして、地面に向かって魔力を放出していくと、もみの中からムクムクと若芽が萌出し地面に白い根っこを張り始めた。
しばらくの間魔力を流し続けていくと、足首よりもちょっと高いくらいの場所で成長が止まる。どうやらこれが、土を痩せさせずに育てられる限界らしい。
あとは、毎日お水を上げつつ普通に育てればいいだろう。
やっと牧草地を作ることができるようになったと、一人で満足感に浸っているところに鍛錬を終えたらしいにぃにが現し世に戻ろうと言ってきたので今日の聖域活動はこれでおしまいっ。
――明日も、ちゃんとお世話をしにこれたら良いんだけど……
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