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再出発
ウチの村って異常だったね
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「しっかし、フェリシアちゃんも食うねぇ~」
先にご飯を食べ終わったにぃにとクリナムさんの二人に、ミルギューの乳搾りをするように頼んで追い出した後も、わたしとピエリスさんのモグモグタイムは継続中。
ちなみに、絞り終わったミルクはお宿に買い取ってもらえることになっている。
大銅貨二四枚の臨時収入ですよっ!
乳搾り要員二名とわたしの三人で割ると大銅貨八枚になっちゃうけど、ソレはソレ。立派な収入だ。
「従魔達を養うためには、仕方のないことです」
「ふつー、旅する時は必要最低限――騎獣以外は売り払うもんだかんなぁ」
旅の間は自分ですらまともに食べれないこともあるから、途中で捕まえて獣魔にしたものもできるだけ早く売り払うものらしい。だから、昨日みたいに突発的に従属させた場合でもすぐに売り先を探すそうだ。
「まあ、宿で売るのは無理だからどっかの町か村に行かないと売れないんよね~」
「ほむほむ」
「フェリシアちゃんさ、一日の大半が従魔の分の御飯食べるので終わってるっしょ?」
「鹿さんがいなければそれほどでもないかなぁ……」
聖域で自給自足できるようになれば、ミルギュー以外は放置しといてもいいし。
ミルギューはね、毎日乳搾りをする必要があるから聖域で放っとくわけには行かないのが難点だ。でもまあ、手持ちの従魔の殆どの衣食住を賄えるのなら、ミルギューの分を食べるくらいなんてことないね。
「ふ~ん? なら、いいけど~」
そう言いながらも、ピエリスさんは微妙にナニかを言いたげだ。
「ミルギューもランチュウも、みんな家族なので手放す予定はありませんっ」
なお、手に入れたばかりのフォレチェルは家族に含みません。
まだ、ブラッシングの一つもしたことがないからね。親近感なんて欠片もありませんよ?
「フォレチェルはいつでも手放すつもりだけど」
「そりゃ、なにより。つーか、ランチュウもいんのかぁ……」
ランチュウははじめての従魔なので、一番長い付き合いだ。
「ってかさ、フェリシアちゃんっていくつの時から従魔もってるん?」
「ん~? 四つのときかなぁ……」
たしか、半年くらいでランチュウと仲良くなれたんだよね。
みんなによってたかって褒めまくられて、めちゃくちゃ嬉しかったのを覚えてる。
「四つって……四歳っ!?」
「うにうに」
どうやらこれは、ピエリスさん的にはありえないことだったらしい。
普通は加護の儀を終えてから、それぞれの適正にあったスキルを伸ばしていくものなんだと言われて首を傾げる。
いや、だってね?
ウチの村って、2~3種類の従魔をもってるのが当たり前だったのだ。ただし、巫女様と村長は除く。
必ず従属させてたのはフルーツトレントで、他にランチュウ・ミルギュー・ドルチェブーンのどれかを二体ずつ持ってたはずだ。誰もが従魔をもってる環境が普通だと思ってたので、それが普通じゃないと言われても困ってしまう。
「そもそも、四歳の子じゃ従魔を従えとくための魔力だって足んないっしょ」
「最初は一匹だけだったけど、少しずつ増えてって、気付いたら四匹になってたねぇ」
んでもって、そこにミルギューが加わり、コレが四頭まで増えると、次の従魔をあてがわれて~という繰り返しで四種類の従魔を手に入れたわけだ。
「ね、ちょ。ソレって、この国では普通なん?」
「ウチの村では普通」
そう。ウチの村では、普通だった。
わたしと同じペースで従魔を増やしていた子が、新しい従魔を迎え入れた翌日に死んでしまうなんてこともあったけど、ソレも含めて普通。
――改めて考えると、ウチの村、ヤバすぎだね。
なんというか、ピエリスさんの反応を見るとますますそう思う。
「ってことは、ミルギューは表に出しても平気……や、でも道中の子供で従魔連れって見なかったしぃ……」
なんだか一人でブツブツ言い始めたピエリスさんを眺めつつ、わたしは過ぎたことを考えるのはやめた。ソレよりも、ご飯を食べることのほうが最優先事項だ。
モグモグしていた肉詰めパンを飲み込んで、ヴェルリーニョのサラダをポリポリポリ。
――ん。美味しぃっ!
食感がシャキポリしてて瑞々しいから、お口の中が程よくリフレッシュされて、続きの肉詰めパンが更に美味しく食べられる。コレは、無限ループの始まりだ。
頭を抱えて考え込んでる同席者のことは放っておいて、わたしはひたすらモグモグと口を動かした。なんせ、食べ終わらなくては出発できない。
「そろそろ飯は終わりにすっか」
しばらくしてから、我に返った様子で周囲を見回したピエリスさんが突然そう言った。
「うにゅ?」
彼の視線を追ってみると、いつの間にやらわたし達以外のお客さんはいなくなっている。その代わりにあるのは、『早く食べ終わらないかな~』と言いたげな、お店の人たちのお姿。
――コレは、ご迷惑だね。
まだまだ山積みになっているパンに、お肉たっぷりの炒め物をはさんでお持ち帰りできるようにしてから、二人で一緒に手を合わせる。
「うにうに。それでは、ごちそうさまでしたっ」
「ごっそ~さんっしたあっ」
「ごはん、とっても美味しかったですっ!」
『長々食べててごめんなさい』と謝りつつ頭を下げると、料理人さんから嬉しそうな笑顔が返ってきた。
「おう、また食いに来なっ」
「うにうに。またね、おじさん」
予定はないけれど、そう返して手をブンブン振って宿を出る。
ピエリスさんを隠れみのにしつつ、乳搾りを終えたミルギューたちを回収すれば、お出かけ準備は完了ですっ。
※いつもご閲覧頂きありがとうございます。
この章はここで終了です。
しばらくお休みしますが、6/20から更新再開する予定を予定です。
再開しましたらまたよろしくお願いいたします。
先にご飯を食べ終わったにぃにとクリナムさんの二人に、ミルギューの乳搾りをするように頼んで追い出した後も、わたしとピエリスさんのモグモグタイムは継続中。
ちなみに、絞り終わったミルクはお宿に買い取ってもらえることになっている。
大銅貨二四枚の臨時収入ですよっ!
乳搾り要員二名とわたしの三人で割ると大銅貨八枚になっちゃうけど、ソレはソレ。立派な収入だ。
「従魔達を養うためには、仕方のないことです」
「ふつー、旅する時は必要最低限――騎獣以外は売り払うもんだかんなぁ」
旅の間は自分ですらまともに食べれないこともあるから、途中で捕まえて獣魔にしたものもできるだけ早く売り払うものらしい。だから、昨日みたいに突発的に従属させた場合でもすぐに売り先を探すそうだ。
「まあ、宿で売るのは無理だからどっかの町か村に行かないと売れないんよね~」
「ほむほむ」
「フェリシアちゃんさ、一日の大半が従魔の分の御飯食べるので終わってるっしょ?」
「鹿さんがいなければそれほどでもないかなぁ……」
聖域で自給自足できるようになれば、ミルギュー以外は放置しといてもいいし。
ミルギューはね、毎日乳搾りをする必要があるから聖域で放っとくわけには行かないのが難点だ。でもまあ、手持ちの従魔の殆どの衣食住を賄えるのなら、ミルギューの分を食べるくらいなんてことないね。
「ふ~ん? なら、いいけど~」
そう言いながらも、ピエリスさんは微妙にナニかを言いたげだ。
「ミルギューもランチュウも、みんな家族なので手放す予定はありませんっ」
なお、手に入れたばかりのフォレチェルは家族に含みません。
まだ、ブラッシングの一つもしたことがないからね。親近感なんて欠片もありませんよ?
「フォレチェルはいつでも手放すつもりだけど」
「そりゃ、なにより。つーか、ランチュウもいんのかぁ……」
ランチュウははじめての従魔なので、一番長い付き合いだ。
「ってかさ、フェリシアちゃんっていくつの時から従魔もってるん?」
「ん~? 四つのときかなぁ……」
たしか、半年くらいでランチュウと仲良くなれたんだよね。
みんなによってたかって褒めまくられて、めちゃくちゃ嬉しかったのを覚えてる。
「四つって……四歳っ!?」
「うにうに」
どうやらこれは、ピエリスさん的にはありえないことだったらしい。
普通は加護の儀を終えてから、それぞれの適正にあったスキルを伸ばしていくものなんだと言われて首を傾げる。
いや、だってね?
ウチの村って、2~3種類の従魔をもってるのが当たり前だったのだ。ただし、巫女様と村長は除く。
必ず従属させてたのはフルーツトレントで、他にランチュウ・ミルギュー・ドルチェブーンのどれかを二体ずつ持ってたはずだ。誰もが従魔をもってる環境が普通だと思ってたので、それが普通じゃないと言われても困ってしまう。
「そもそも、四歳の子じゃ従魔を従えとくための魔力だって足んないっしょ」
「最初は一匹だけだったけど、少しずつ増えてって、気付いたら四匹になってたねぇ」
んでもって、そこにミルギューが加わり、コレが四頭まで増えると、次の従魔をあてがわれて~という繰り返しで四種類の従魔を手に入れたわけだ。
「ね、ちょ。ソレって、この国では普通なん?」
「ウチの村では普通」
そう。ウチの村では、普通だった。
わたしと同じペースで従魔を増やしていた子が、新しい従魔を迎え入れた翌日に死んでしまうなんてこともあったけど、ソレも含めて普通。
――改めて考えると、ウチの村、ヤバすぎだね。
なんというか、ピエリスさんの反応を見るとますますそう思う。
「ってことは、ミルギューは表に出しても平気……や、でも道中の子供で従魔連れって見なかったしぃ……」
なんだか一人でブツブツ言い始めたピエリスさんを眺めつつ、わたしは過ぎたことを考えるのはやめた。ソレよりも、ご飯を食べることのほうが最優先事項だ。
モグモグしていた肉詰めパンを飲み込んで、ヴェルリーニョのサラダをポリポリポリ。
――ん。美味しぃっ!
食感がシャキポリしてて瑞々しいから、お口の中が程よくリフレッシュされて、続きの肉詰めパンが更に美味しく食べられる。コレは、無限ループの始まりだ。
頭を抱えて考え込んでる同席者のことは放っておいて、わたしはひたすらモグモグと口を動かした。なんせ、食べ終わらなくては出発できない。
「そろそろ飯は終わりにすっか」
しばらくしてから、我に返った様子で周囲を見回したピエリスさんが突然そう言った。
「うにゅ?」
彼の視線を追ってみると、いつの間にやらわたし達以外のお客さんはいなくなっている。その代わりにあるのは、『早く食べ終わらないかな~』と言いたげな、お店の人たちのお姿。
――コレは、ご迷惑だね。
まだまだ山積みになっているパンに、お肉たっぷりの炒め物をはさんでお持ち帰りできるようにしてから、二人で一緒に手を合わせる。
「うにうに。それでは、ごちそうさまでしたっ」
「ごっそ~さんっしたあっ」
「ごはん、とっても美味しかったですっ!」
『長々食べててごめんなさい』と謝りつつ頭を下げると、料理人さんから嬉しそうな笑顔が返ってきた。
「おう、また食いに来なっ」
「うにうに。またね、おじさん」
予定はないけれど、そう返して手をブンブン振って宿を出る。
ピエリスさんを隠れみのにしつつ、乳搾りを終えたミルギューたちを回収すれば、お出かけ準備は完了ですっ。
※いつもご閲覧頂きありがとうございます。
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しばらくお休みしますが、6/20から更新再開する予定を予定です。
再開しましたらまたよろしくお願いいたします。
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