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再出発

精密作業

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 にぃに・・・のスキルランクが上がったあと、私たちは夕方頃から神域にお邪魔させてもらう。
迎えてくれたのは武神様と技術神様の二柱だけで、魔神様と情報神様の姿はない。


「グラジオラス、よく頑張ったね」

「はいっ! 武神様にご指導いただいた賜物ですっ」


 にぃに・・・の言葉に武神様は相好を崩した。
なんというか、にぃに・・・の武神様に向けるキラキラした目に違和感。『そういうキャラじゃないよね?』的な。いや、武神様を尊敬してるのは分かるんだけどっ。


「次に学びたいのは騎乗術だったね。触りだけでもここで経験していくといい」


 武神様はそういうが早いかにぃに・・・を抱き上げ、あっという間にどこかに消えてく。
わたしが口を開く隙が全然なかった……!


「魔神ちゃんもだけど、武神も大概よねぇ~」


 苦笑しながら手を差し伸す技術神様の手を取りつつ首を傾げる。


「似たもの兄妹なのよ、二柱ふたりとも。魔神ちゃんだって、あなたがいるとグラジオラス君のことは目に入らないし」


――あ~……そうかも。

 言われてみれば、魔神様はにぃに・・・が一緒にいてもわたしにばっかり構ってくれる。
いつも、にぃに・・・もこういう『どうしたら?』的な途方に暮れ方をしてたんだったら寂しい思いをさせたかも……次は気をつけよう。


「魔神ちゃんたちは今はでかけてるの。戻ってくるまでの間、スキル指導をしてあげる。精密作業って、あたしの領分なのよ」

「おおっ! 是非ともよろしくお願いしますっ」


 ってなわけで、にぃに・・・が騎乗術をご指導いただいてる間、わたしはわたしで有意義に過ごせることが決定した。


「精密作業ってスキルは、単体で使えなくもないけど基本的には『補助スキル』ってヤツなのよ。後々、魔道具づくりを本格的にやろうと思ったら、鍛えておくに越したことはないわ」

「ほみゅほみゅ」

「料理の場合でも使えるわね。お野菜もただ切るだけより、飾り切りにしたほうが食卓が華やかになるし……」

「ほむほむ」

「ま、ないよりあったほうが便利なスキルってやつね」


 良く分からないけど、あると便利なお道具的なポジションだろうか。
お料理するときに使う、味見用の小皿みたいな?
アレも、なくてもいいけど、あると便利だよね。


「鍛えるためには、ネチネチとこまか~い作業をすればいいだけなんだけど、案外ソレがキツいのよね」


 言われてみれば、筆になれるためと言いつつ最近は、一枚の紙にどれだけ細くて真っ直ぐな線を詰め込めるかっていう挑戦に明け暮れてた。アレも、細かい作業に入るってことか……


「参考までに、技術神様のオススメの作業ってどんなものですか?」

「そうね……折り紙・編み物・刺繍に彫刻。まだあるけど――フェリシアの場合、最終的に魔法具を作るのに活用したいのよね? なら、刺繍か彫刻ね」


 『刺繍』は布や革製品を魔法具化させるときに、『彫刻』は木工製品や金属製品を魔法具化するときに必要になってくるスキルらしい。今、技術神様があげたようなものでなくても、目の細かい織物を織ったり、ナニカの形を整えたりするのでもかまわないらしい。ただし、どれも一定の速度で1時間以上続けること。


「むむむ……ゼロから覚えるのはなかなかキツそうですね……」

「いざとなれば奉納ポイントで交換できるから、焦らず、今できることをすればいいわよ」


 技術神様はわたしのいつもの練習に付き合ってくれつつ、木の板にお見本の魔法文字を何種類も刻んでくれる。
コレは、技術がわかりやすくてとってもいいねっ。
そのあとで、比較的かんたんな魔獣の木彫りと小さなお花の刺繍を眼の前で作って見せてくれた。どっちも可愛らしくて、心の中に何かがみなぎる。
なんか、こう、『わ~!!!!』っと!


「はい、出来上がったのはフェリシアにあげるわね」

「~っ! ありがとうございますっ」


 とっても、とっても嬉しいっ!
頂いた木彫りとお花の刺繍を、だいじだいじにポーチにしまい込む。
まずは御札を作れるようになるのを優先するけれど、こんなに素敵なお見本を頂いてしまったことだし、明日からは彫刻も少しずつ練習してみよう。
やりたいこと、やれることが増えてくのって、なんだか楽しい。
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