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プライベートフィールド
小さな世界
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「ほみゅ……」
後ろを振り向き、そこになにもないことを確認してから、そ~っと手を伸ばす。
さっき背中をぶつけているから、慎重に。
すぐ手に触れたナニカは、やっぱり目には見えないけれど、上から下まで真っ直ぐな壁のようになってるらしい。
「うにゅ?」
テシテシと叩きつつ確認してみた結果、見えない壁は右に行っても左に行っても続いてることが判明。こうなると、俄然、どこまで続いてるのかが気になってくる。
気になるのなら、確認してみるのが一番だ。わたしはポーチの中から適当な棒を取り出すと、見えない壁にそって地面に線をひき始めた。
ゾリゾリゾリゾリ
ガリガリガリガリ
途中、地面に線引くガリゾリいう音ににぃにが気が付き、反対周りでお手伝い。
聖域の範囲が、目で見るイメージよりもずっとずっと小さいことが判明した。
「木を中心に、長い方に四十歩。短い方に二十歩ってところかな」
「走り回る前にわかってよかったねぇ」
「まぁ、そうかも……」
線を引いてから、思った以上に小さかった聖域のサイズを測って戻ってきたにぃにはガックリした表情でうなだれている。もしかして、聖域で体力づくりやらなんやらをしたかったんだろうか。
うっかり気づかずに走り出して見えない壁にぶつかってたら、きっとメチャクチャ痛かったに違いない。
気づいてよかった。わたし、グッジョブっ!
「あ、そうだ。忘れてたんだけど、幹のコッチ側に扉があるよ」
「扉?」
「そ、扉。それを教えようと思って声かけたんだけど、フェリシアが地面に線を引いてたから……」
「そっちを手伝い始めて、ポロッと忘れた……と」
チョウチョが目の前を飛んでいったらそっちを追いかけてしまって、やろうとしてたことを忘れちゃう的な。
あるある、だよね。そんなこと。
気恥ずかしいのか、お耳が真っ赤になっているけれど、ちゃ~んと気づかないふりをしますとも。
デキる妹は、一味違うんですよ?
にぃにが見つけたという扉は、カッチリしっかりした代物だった。
「村にあった神殿の扉よりも立派な扉が木の幹に嵌っているなんて、なんか変」
「言いたいことは分かるけど、中、見るでしょ?」
「それはモチロン」
ここは、わたしとにぃにだけのために作られた場所のはず。ならば、遠慮などする必要もないわけだ。
大きくて立派な扉は、見た目よりも軽くできていて、わたしでも苦労せずに開け締めできる。
扉をくぐって中に入ると、木の中をくり抜いて作られたような空間がわたしたちをお出迎え。真っ先に目に入るのは、大きなまぁるいのテーブルとその向こう側に暖炉。他に、家具のようなものは見当たらない。
「あ、椅子があるね。ひぃふぅみぃよぉ……全部で八つ」
「ずいぶん多いね」
「お客さんを呼んでもいいってことじゃない?」
「……魔神様とか?」
なんの気なしに呟いた直後、なぜか頭の中で誰かが、ソワソワ・ワクワクする気配。
――あれ……?
さっき、「またね」って言っていた魔神様が聖域にいないのがちょっぴり意外だったんだけど――もしかして、魔神様たちってば、お呼ばれ待ちしてたりして……?
「そういや、神々も聖域に遊びにこれるって言ってたね。お呼びしてみたら?」
「うにうに」
それでは早速!
「ま~じんさま~! 遊びに来てく~ださいなっ!」
「え……」
なんでそんな呼び方を……と呟く声をよそに、目の前に柔らかな光が集まって、その中から満面に笑みを浮かべた魔神様が現れた。
後ろを振り向き、そこになにもないことを確認してから、そ~っと手を伸ばす。
さっき背中をぶつけているから、慎重に。
すぐ手に触れたナニカは、やっぱり目には見えないけれど、上から下まで真っ直ぐな壁のようになってるらしい。
「うにゅ?」
テシテシと叩きつつ確認してみた結果、見えない壁は右に行っても左に行っても続いてることが判明。こうなると、俄然、どこまで続いてるのかが気になってくる。
気になるのなら、確認してみるのが一番だ。わたしはポーチの中から適当な棒を取り出すと、見えない壁にそって地面に線をひき始めた。
ゾリゾリゾリゾリ
ガリガリガリガリ
途中、地面に線引くガリゾリいう音ににぃにが気が付き、反対周りでお手伝い。
聖域の範囲が、目で見るイメージよりもずっとずっと小さいことが判明した。
「木を中心に、長い方に四十歩。短い方に二十歩ってところかな」
「走り回る前にわかってよかったねぇ」
「まぁ、そうかも……」
線を引いてから、思った以上に小さかった聖域のサイズを測って戻ってきたにぃにはガックリした表情でうなだれている。もしかして、聖域で体力づくりやらなんやらをしたかったんだろうか。
うっかり気づかずに走り出して見えない壁にぶつかってたら、きっとメチャクチャ痛かったに違いない。
気づいてよかった。わたし、グッジョブっ!
「あ、そうだ。忘れてたんだけど、幹のコッチ側に扉があるよ」
「扉?」
「そ、扉。それを教えようと思って声かけたんだけど、フェリシアが地面に線を引いてたから……」
「そっちを手伝い始めて、ポロッと忘れた……と」
チョウチョが目の前を飛んでいったらそっちを追いかけてしまって、やろうとしてたことを忘れちゃう的な。
あるある、だよね。そんなこと。
気恥ずかしいのか、お耳が真っ赤になっているけれど、ちゃ~んと気づかないふりをしますとも。
デキる妹は、一味違うんですよ?
にぃにが見つけたという扉は、カッチリしっかりした代物だった。
「村にあった神殿の扉よりも立派な扉が木の幹に嵌っているなんて、なんか変」
「言いたいことは分かるけど、中、見るでしょ?」
「それはモチロン」
ここは、わたしとにぃにだけのために作られた場所のはず。ならば、遠慮などする必要もないわけだ。
大きくて立派な扉は、見た目よりも軽くできていて、わたしでも苦労せずに開け締めできる。
扉をくぐって中に入ると、木の中をくり抜いて作られたような空間がわたしたちをお出迎え。真っ先に目に入るのは、大きなまぁるいのテーブルとその向こう側に暖炉。他に、家具のようなものは見当たらない。
「あ、椅子があるね。ひぃふぅみぃよぉ……全部で八つ」
「ずいぶん多いね」
「お客さんを呼んでもいいってことじゃない?」
「……魔神様とか?」
なんの気なしに呟いた直後、なぜか頭の中で誰かが、ソワソワ・ワクワクする気配。
――あれ……?
さっき、「またね」って言っていた魔神様が聖域にいないのがちょっぴり意外だったんだけど――もしかして、魔神様たちってば、お呼ばれ待ちしてたりして……?
「そういや、神々も聖域に遊びにこれるって言ってたね。お呼びしてみたら?」
「うにうに」
それでは早速!
「ま~じんさま~! 遊びに来てく~ださいなっ!」
「え……」
なんでそんな呼び方を……と呟く声をよそに、目の前に柔らかな光が集まって、その中から満面に笑みを浮かべた魔神様が現れた。
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