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お世話になりますっ
お願いしようよ
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厳しそうな人だと聞いてた武神様が、想像と違って過保護な神様だと分かったところで、わたしはにぃににお言葉に甘えさせてもらうことを提案した。
「そこは素直にお世話になっちゃおうよ」
「えええ?」
にぃにとしては、『断る』の一択だったみたいで驚いた顔をこっちに向けてきた。『図々しすぎない!?』っていう心の声が、そのまんま顔に書いてあるけど、別に図々しくありませんよ?
「だって、迷惑ならそもそも提案自体しないもの」
「そう、かもしれないけど……」
考えてそうなことを口に出すと、図星だったみたいでにぃにはきまり悪そげに視線をそらす。
そうなのだ。
そもそも、にぃにが自分から見の安全のために武神様のお家に『お泊りさせて(はぁと)』なんてことを言うわけがないんだから、この申し出は武神様(もしくは魔神様)が言い出したことのはず。
思い返してみれば、村を慌てて出てきたのも、人気のない村で子供が二人きりでいると悪い人族に目をつけられるってのが理由だったはずだ。
それなのに、昨日の夜は村の中に居たときと大差ない気分で、焚き火ご飯と星空を満喫した上での熟睡状態――自分でもびっくりするほど緊張感がかけらもないね。
魔神様はなんにも言わなかったけど、実は村にいた時以上にハラハラしながら様子を伺ってたんじゃないだろうか。ってなわけで……
「むしろ、断ったほうがご迷惑かも」
主に、精神的な負担って面で。
緊張感に掛ける子供二人を放置しとくより、保護したほうが気が楽だよね。
「うーん……でもさ、これから僕たち二人で自立していかないとでしょ?」
「そうだけど――武神様のご提案って、期間限定だよね」
これが、魔神様からのお話だったら、なし崩し的に人里から離れている間ずーっとなんてことになりかねない予感がしないでもないけど……最初から期間を言ってきてるから、多分、大丈夫なはず。
「なので、ここは甘えさせてもらいつつ旅の仕方を教わるのが良い気がするし、『お泊りさせていただく』の一択でお願いします」
「ちょっとまってっ!? 旅の仕方なら、僕、一応知ってるよ!?」
「寝泊まりは、ぜーんぶどっかの村や町だって話ばっかりじゃない。そーゆーのじゃなくって、こう――昨日みたいな寝泊まりの注意点とか。知らないでしょ」
にぃにが知ってるのは、流れの狩人さんや行商人さんから仕入れたお話だ。情報源なんて他にない。なんなら、わたしも一緒に聞いていた。
どれもこれも、村から村へ移動して、夜は人里で歓迎されつつ過ごすお話ばっかり。基本的に、一箇所に滞在している間に、何人の女の人と仲良くしたかの自慢話ばっかりだったので、野宿の参考には全くならないこともちゃんと知ってる。
「う……それは、まぁ、そうだね」
「ご注意してくださったってことは、安全に過ごすコツとかも知ってるってことだと思うから、そういった知識を教わるためにもお世話になろう!」
「いや、でも――」
「でもじゃなくて、お願いしよう」
散々、「自分たちのみの安全のために神々を頼るなんて」と渋ったにぃにだけど、「滞在中に武術指南をしてもらえばいいじゃない」という私の指摘にあっさり折れた。どうやら、身につけたばかりのスキルを鍛える機会は魅力的だったらしい。
――ま、わたしも魔神様にスキル指導お願いしたいからいいんだけど。
あとはアレだ。
なんの知識もなく野宿して、毎日徹夜をしたにぃにがぶっ倒れる未来が予想できたからってのもある。にぃには、他の兄弟が大きくななれなかったせいで、ちょっと――いや、かなり――私に過保護。なので、一人で無理をしそうで心配なんだよね。
――にぃにに頼りっきりにならないように、わたしもちゃんと教わらないとね。
ちょっぴり憂鬱そうだった表情から一転した表情で、武神様にお世話になることを伝えているにぃにの眺めつつ、わたしはこっそり気合を入れた。
にぃにがわたしのお世話をしてくれるなら、わたしがにぃにのお世話をすなくてはっ!
家族は、助け合いが必要だからねっ!!
「そこは素直にお世話になっちゃおうよ」
「えええ?」
にぃにとしては、『断る』の一択だったみたいで驚いた顔をこっちに向けてきた。『図々しすぎない!?』っていう心の声が、そのまんま顔に書いてあるけど、別に図々しくありませんよ?
「だって、迷惑ならそもそも提案自体しないもの」
「そう、かもしれないけど……」
考えてそうなことを口に出すと、図星だったみたいでにぃにはきまり悪そげに視線をそらす。
そうなのだ。
そもそも、にぃにが自分から見の安全のために武神様のお家に『お泊りさせて(はぁと)』なんてことを言うわけがないんだから、この申し出は武神様(もしくは魔神様)が言い出したことのはず。
思い返してみれば、村を慌てて出てきたのも、人気のない村で子供が二人きりでいると悪い人族に目をつけられるってのが理由だったはずだ。
それなのに、昨日の夜は村の中に居たときと大差ない気分で、焚き火ご飯と星空を満喫した上での熟睡状態――自分でもびっくりするほど緊張感がかけらもないね。
魔神様はなんにも言わなかったけど、実は村にいた時以上にハラハラしながら様子を伺ってたんじゃないだろうか。ってなわけで……
「むしろ、断ったほうがご迷惑かも」
主に、精神的な負担って面で。
緊張感に掛ける子供二人を放置しとくより、保護したほうが気が楽だよね。
「うーん……でもさ、これから僕たち二人で自立していかないとでしょ?」
「そうだけど――武神様のご提案って、期間限定だよね」
これが、魔神様からのお話だったら、なし崩し的に人里から離れている間ずーっとなんてことになりかねない予感がしないでもないけど……最初から期間を言ってきてるから、多分、大丈夫なはず。
「なので、ここは甘えさせてもらいつつ旅の仕方を教わるのが良い気がするし、『お泊りさせていただく』の一択でお願いします」
「ちょっとまってっ!? 旅の仕方なら、僕、一応知ってるよ!?」
「寝泊まりは、ぜーんぶどっかの村や町だって話ばっかりじゃない。そーゆーのじゃなくって、こう――昨日みたいな寝泊まりの注意点とか。知らないでしょ」
にぃにが知ってるのは、流れの狩人さんや行商人さんから仕入れたお話だ。情報源なんて他にない。なんなら、わたしも一緒に聞いていた。
どれもこれも、村から村へ移動して、夜は人里で歓迎されつつ過ごすお話ばっかり。基本的に、一箇所に滞在している間に、何人の女の人と仲良くしたかの自慢話ばっかりだったので、野宿の参考には全くならないこともちゃんと知ってる。
「う……それは、まぁ、そうだね」
「ご注意してくださったってことは、安全に過ごすコツとかも知ってるってことだと思うから、そういった知識を教わるためにもお世話になろう!」
「いや、でも――」
「でもじゃなくて、お願いしよう」
散々、「自分たちのみの安全のために神々を頼るなんて」と渋ったにぃにだけど、「滞在中に武術指南をしてもらえばいいじゃない」という私の指摘にあっさり折れた。どうやら、身につけたばかりのスキルを鍛える機会は魅力的だったらしい。
――ま、わたしも魔神様にスキル指導お願いしたいからいいんだけど。
あとはアレだ。
なんの知識もなく野宿して、毎日徹夜をしたにぃにがぶっ倒れる未来が予想できたからってのもある。にぃには、他の兄弟が大きくななれなかったせいで、ちょっと――いや、かなり――私に過保護。なので、一人で無理をしそうで心配なんだよね。
――にぃにに頼りっきりにならないように、わたしもちゃんと教わらないとね。
ちょっぴり憂鬱そうだった表情から一転した表情で、武神様にお世話になることを伝えているにぃにの眺めつつ、わたしはこっそり気合を入れた。
にぃにがわたしのお世話をしてくれるなら、わたしがにぃにのお世話をすなくてはっ!
家族は、助け合いが必要だからねっ!!
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