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回り道
アスタールの求人旅行 12
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ご婦人に差し上げた軟膏の入れ物を見て、彼らは中身が魔法薬に違いないと気づいたらしい。
「グラムナード産の魔法薬は、現地まで行かないと買えないだろう?」
「流石にそっちまで買いに行くのも難しくってなぁ……」
彼らはそう言って、示し合わせたようなタイミングで大きなため息を吐く。
「迷宮に興味はないのかね?」
「うーん……ないわけじゃないけど、なあ?」
「俺は、生まれ育った町の安全を守るって決めてるからさ」
「あたしとしては、男なんだからもっとこう、野望があってもいいと思うけどねぇ……」
ご婦人が呆れた風を装って、憎まれ口を叩く。
口調は嫌味っぽいが、二人に向ける表情は嬉しそうだ。
気安く言い合いのできる相手が、冒険を求めて遠くに行ってしまうのはやはり寂しく感じるのだろう。
それが、自らの子供と言ってもいい年齢なら尚更なのかもしれない。
「申し訳ないのだが、手持ちに譲れるほどの余分はないのだ」
りりんの世界には、袖すり合うも他生の縁と言う言葉があるらしい。
すれ違っただけの人でも、前の人生で親しい人だったかもしれないとかそんな意味なのだと彼女に教わった。
その言葉からすると、護衛役の二人もその対象になるのだと思う。
本当に前の人生があるとして、親しかったかもしれない相手だと思え希望を叶えてあげたいと思うのが人情というものだったはずだ。
私は、彼らが魔法薬を手に入れるのにはどうしたらいいだろう?
困ったなと思いながら、代案を考えてみる。
ちなみに、今現在グラムナードで作られている魔法薬は、主に外町にある迷宮に立ち入る探索者達が消費する分のみとなっている。
その他には、外部に出す分として王都の騎士団向けにも作ってはいるのだが、余剰分は多くない。
大体が、グラムナードにいる調薬師が総出で作っても魔法薬の生産量はたかがしれている。
その上、他の町の調薬師の仕事を奪ってしまう可能性もあるのだから作りすぎるわけにもいかないのだ。
「この辺りにも調薬師がいるはずだが、彼らの作る魔法薬が足りないのかね?」
職業斡旋所には『錬金術師』の募集があったのだから、魔法薬くらいは作られているだろう。
そう思っての質問だったのだが、彼らは揃って不思議そうな表情で首を傾げている。
「調薬師?」
「って、なんだ??」
グラムナードでは、魔法薬を専門に作る者のことを調薬師と呼んでいるのだが、どうやらエルドランでは違うらしい。
更に聞いてみると、魔法具を専門とする魔法具師という職も一般的では無いようだ。
調薬師も魔法具師のどちらであっても一律に錬金術師と呼ばれているらしいことには驚くのを通り越して呆れてしまった。
錬金術師というのは、魔法薬と魔法具の双方を作れるだけでなく、賢者の石を作り出せるようになって初めて名乗れる称号なのだ。
そんなに軽々しく名乗ってほしくない。
「まあ、差は良く分からんけど、この辺の錬金術師が作る魔法薬ってのだとあんまり効かないんだよ」
「そうそう。薬師の作る傷薬より、多少はマシかなって程度だなぁ」
「……それは、本当に魔法薬なのかね?」
魔法薬とそうでないものとの違いは、調合時に魔力を用いているかどうかが一番大きい。
素材に含まれている魔力の量も多少は関わってはくるのだが、作る時に魔力を素材に練り込んでいないものとは効果が劇的に違うのだ。
魔力を用いずに薬を調合する薬師の作るものと対して変わらないということは、それは魔法薬ではなく、魔力を含んだ素材を使っただけの代物なのではないかと思う。
「そう言われても……」
「迷宮に行ってきたっていう先輩に、なくなりかけのを貰って驚いたんだよな」
「ああ、それで入れ物を見て驚いたのかい」
ご婦人がやっと合点がいったとばかりにポンと手を打つ。
入れ物には工房のマークが入っているから、それを見て驚いたと言うことらしい。
どうしたものかと悩みはしたものの、最終的には町についたら良い宿を紹介してもらうということを条件に、今回だけは材料持ち込みで魔法薬の作成を請け負うということにする。
そうそう気軽にグラムナードを出るわけにもいかない身としては、コレができる精一杯のことだろう。
将来的には、弟子を独り立ちさせて支店を出すということも考えてもいいのかもしれないが……
まずは、弟子にできる人材を探さなくては話にならない。
私は隣町に着くと、宿に案内して貰う前に職業斡旋所に寄らせてもらい、募集の手続きを行わせてもらった。
「グラムナード産の魔法薬は、現地まで行かないと買えないだろう?」
「流石にそっちまで買いに行くのも難しくってなぁ……」
彼らはそう言って、示し合わせたようなタイミングで大きなため息を吐く。
「迷宮に興味はないのかね?」
「うーん……ないわけじゃないけど、なあ?」
「俺は、生まれ育った町の安全を守るって決めてるからさ」
「あたしとしては、男なんだからもっとこう、野望があってもいいと思うけどねぇ……」
ご婦人が呆れた風を装って、憎まれ口を叩く。
口調は嫌味っぽいが、二人に向ける表情は嬉しそうだ。
気安く言い合いのできる相手が、冒険を求めて遠くに行ってしまうのはやはり寂しく感じるのだろう。
それが、自らの子供と言ってもいい年齢なら尚更なのかもしれない。
「申し訳ないのだが、手持ちに譲れるほどの余分はないのだ」
りりんの世界には、袖すり合うも他生の縁と言う言葉があるらしい。
すれ違っただけの人でも、前の人生で親しい人だったかもしれないとかそんな意味なのだと彼女に教わった。
その言葉からすると、護衛役の二人もその対象になるのだと思う。
本当に前の人生があるとして、親しかったかもしれない相手だと思え希望を叶えてあげたいと思うのが人情というものだったはずだ。
私は、彼らが魔法薬を手に入れるのにはどうしたらいいだろう?
困ったなと思いながら、代案を考えてみる。
ちなみに、今現在グラムナードで作られている魔法薬は、主に外町にある迷宮に立ち入る探索者達が消費する分のみとなっている。
その他には、外部に出す分として王都の騎士団向けにも作ってはいるのだが、余剰分は多くない。
大体が、グラムナードにいる調薬師が総出で作っても魔法薬の生産量はたかがしれている。
その上、他の町の調薬師の仕事を奪ってしまう可能性もあるのだから作りすぎるわけにもいかないのだ。
「この辺りにも調薬師がいるはずだが、彼らの作る魔法薬が足りないのかね?」
職業斡旋所には『錬金術師』の募集があったのだから、魔法薬くらいは作られているだろう。
そう思っての質問だったのだが、彼らは揃って不思議そうな表情で首を傾げている。
「調薬師?」
「って、なんだ??」
グラムナードでは、魔法薬を専門に作る者のことを調薬師と呼んでいるのだが、どうやらエルドランでは違うらしい。
更に聞いてみると、魔法具を専門とする魔法具師という職も一般的では無いようだ。
調薬師も魔法具師のどちらであっても一律に錬金術師と呼ばれているらしいことには驚くのを通り越して呆れてしまった。
錬金術師というのは、魔法薬と魔法具の双方を作れるだけでなく、賢者の石を作り出せるようになって初めて名乗れる称号なのだ。
そんなに軽々しく名乗ってほしくない。
「まあ、差は良く分からんけど、この辺の錬金術師が作る魔法薬ってのだとあんまり効かないんだよ」
「そうそう。薬師の作る傷薬より、多少はマシかなって程度だなぁ」
「……それは、本当に魔法薬なのかね?」
魔法薬とそうでないものとの違いは、調合時に魔力を用いているかどうかが一番大きい。
素材に含まれている魔力の量も多少は関わってはくるのだが、作る時に魔力を素材に練り込んでいないものとは効果が劇的に違うのだ。
魔力を用いずに薬を調合する薬師の作るものと対して変わらないということは、それは魔法薬ではなく、魔力を含んだ素材を使っただけの代物なのではないかと思う。
「そう言われても……」
「迷宮に行ってきたっていう先輩に、なくなりかけのを貰って驚いたんだよな」
「ああ、それで入れ物を見て驚いたのかい」
ご婦人がやっと合点がいったとばかりにポンと手を打つ。
入れ物には工房のマークが入っているから、それを見て驚いたと言うことらしい。
どうしたものかと悩みはしたものの、最終的には町についたら良い宿を紹介してもらうということを条件に、今回だけは材料持ち込みで魔法薬の作成を請け負うということにする。
そうそう気軽にグラムナードを出るわけにもいかない身としては、コレができる精一杯のことだろう。
将来的には、弟子を独り立ちさせて支店を出すということも考えてもいいのかもしれないが……
まずは、弟子にできる人材を探さなくては話にならない。
私は隣町に着くと、宿に案内して貰う前に職業斡旋所に寄らせてもらい、募集の手続きを行わせてもらった。
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