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二年目 叔母様来襲

難癖

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 キュウリ婦人は断られることが前提で喋っていたのか、肩を竦めるとさっさと次の話題を切り出す。

「まあ、当然よねぇ……。弟子入りなんてさせたら、お見合いするよりも長い間一緒にいることになる訳だし。下手すればありもしない既成事実をでっち上げられかねないもの」

 ですよねー……

「そこで次のお話が出てくるわけなんだけど――」
「まだ、続きがあるのかね?」

 そう前置きすると、彼女はアスタールさんのうんざりした声を無視してびっくりするような話をはじめた。

「まず、この子達はエドゥラーン家――エルドラン領の領主の孫娘なの」

 エルドラン領は、リエラが生まれ育ったエルドランの町を領都とするイニティ王国の領土の一角だ。
確か、領主様ご夫妻が十年ほど前に若くして亡くなられてしまったから、前領主様が治めている。
亡くなられた領主様方には、三人の姫君達がいるはず。
一の姫はエリニュスディアス様で、御年二十五歳。
アスタールさんやアスラーダさんと同い年だ。
王都の方の学校に行ったっきり、帰って来ていない。

 二の姫と三の姫はアルン様とレイルモント様で、御年十一歳。
このお二方は双子なんだよね。
レイルモント様名前を授業で教わった時に、せめて男女どちらでも良さそうな名前を付けてあげればいいのにと思ったんだよね。

 ちなみに、エルドランの基礎学校は貴族や上流市民用と富裕層が通う用、それからリエラが通っていた孤児や下層市民の通う用の三種類が存在する。
当然、二の姫と三の姫は上流市民用に通っていたから、二の姫と三の姫とは年齢は近くても間近で見る機会はない。
今後も会う機会があるとは思えないから、リエラは絵姿をまじまじと見つめた。
うん。
アルン様はちょっと優しげな雰囲気で、レイルモント様ははつらつとした雰囲気。
顔立ちはよく似ているのに、二人の持つ空気管の違いが姿絵からも見て取れる。
どっちも将来、美人さんになりそうだ。

「今回きた、この子達とのお見合い話を受け入れてくれるならそれで良し。ああ、もちろん会うだけじゃなくその後のこともちゃんとするのが前提よ」

 お見合いの後のことっていうと、もしかしてお嫁入?
アスタールさんがその条件を呑むはずがない。
……アスラーダさんはどうだろう?
好きな女の子はいるってさっきアスタールさんが言っていたし、やっぱりその子のために断るのかな。

「もしもだめなら、弟子入りを打診。それで、弟子入りも断るようならウガリからグラムナードに入る途中の山道の開発権を寄越せって言ってるの」
「何故そんな話になるのか理解ができないのだが……」

 え? なんで?
キュウリ婦人の言葉に、アスタールさんは首を傾げる。

「ん? ああ、見合いの話で何か妙なことを言わないでほしかっただけだから好きに話したまえ」

 同席する条件に『黙っていること』と言われていたアスラーダさんから発言の許可を求められたのか、アスタールさんが不意にそう言った。
さっき、キュウリ婦人に昨日の晩の話を説明するのはノーカウントらしい。

「伯母上。ウガリはエルドラン領から外れているのでは?」

 え、そんなことないはず。
リエラは基礎学校で、エルドラン領の村の一つだって教わったし。

「元々ウガリは、ラブカ領の村とエルドラン領の村が合併してできた村なのよ。ただ、ラブカ領の出身者にとっては寒さが厳しかったみたいでいつのまにかエルドラン領の人間しか住まなくなっていたみたいで……」
「実質的にはエルドラン領の扱いになっている……と」
「そういうこと。ラブカ領としても、管理ができないものをもっているよりはってことでエルドラン側との話し合いの末、委譲したみたい」
「なんと」

 キュウリ婦人とアスラーダさんのやり取りを聞いていて、思わず声が漏れた。
だって、リエラが教わった内容とちょっぴり違う。
周りの視線が集まってきたことで、うっかり声に出してたのに気が付いて口元を押さえたけど手遅れだ。

「何か、今の話に違和感があったのかね?」

 置物のふりをしておきたかったけど、仕方がない。

「基礎学校で習った内容には、ラブカ領から譲り受けたなんて話はおろか、ラブカ領の村と合併してできた村だなんて話も全くありませんでした。だから、ついびっくりしちゃって……」

 思わず声が出てしまった訳を話すと、キュウリ婦人は不快気にキュッと眉間にしわを寄せた。
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