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二年目 疑惑の種
リエラの提案 上
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他の人がいなくなった部屋で、気合を入れていると、アスタールさんが小さな声で訊ねてくる。
「君は――」
「はい」
「――行かないのかね?」
なんだか、聞こうとしたことを言い換えたような、変な間が開いた。
「アスタールさんと、少し話さなきゃいけないことがあるので残らせてもらいました」
妙な間が開いたことには気づかなかったふりをして答えると、少しの沈黙を挟んでから、リエラの答えに疑問の言葉を返してくる。
「何かを話し合っていた気配はなかったはずだが……」
アスタールさんの顔をしゃがみ込んで、見上げてみる。
おおう……
目から光が消えていて、まるで死んだ魚みたいだ。
「世の中には、アイコンタクトという意思疎通方法があるんですよ」
目が合ったものの、その金色の瞳は何も映しておらず焦点が定まっていない。
まずい、精神的なダメージが大きすぎた?
ここまでショックを受けてるってことは、リエラは考えたくもなかったことを口にしちゃったんだよね?
そう――自分に置き換えて想像してみよう。
例えば?
スルトが死んじゃったら?
……悲しいかもしれないけど、探索者なんていう危険なお仕事をしているんだから、仕方がない、かな?
ぽっかりと胸に穴が開いたような、淋しい気持ちにはなるかもしれなけれど……
それになにより、アスタールさんにとってのリリンさんとはまた違う存在だ。
じゃあ、セリスさん?
想像なのに、心臓をギュッとつかんだような痛みを感じる。
考えただけでも感じる深い喪失感に、きっとコレだと確信する。
リエラは、なんて発言をしちゃったんだろう……
心の中で自分のやらかしたことを罵倒していると、突然黙り込んだリエラの様子が気になったのか、アスタールさんの口から言葉が漏れる。
「……それで、私の目を覗き込んで、何かわかったかね?」
「とりあえず、早急に気力を取り戻してもらう必要があることくらいしかわかりません」
「ならば、しばらく放っておいてくれないかね」
誰にでも一目瞭然な返事を返したせいか、疲れ切った声が返ってくる。
ため息を吐いて目を閉じる仕草を見ても、本気で、どうしようもないほどに限界らしい。
えっと、アスタールさんにこの状態を脱出してもらう方法は――
「……リエラは、気力を取り戻すいい方法を知っているんですけれど」
目を開いて、胡乱気な視線を向けてくるのは気にせずに言葉を続ける。
「まずは、仮想世界に行って、リリンさんに会ってくると良いんじゃないかと思うんです」
「……りりんに?」
瞬きをして、アスタールさんはオウム返しに繰り返す。
おお! 良かった!
リリンさんの名前を出しただけでも、少し、目に光が戻ってきたよ。
力なく垂れていた耳も、わずかに上を向いたし。
「はい。リリンさんに会って少し元気を補充したら、明日、グラムナードの民に話す内容を考えておいてください」
続きを聞くと、アスタールさんの耳がへにょんと垂れる。
名前だけで回復した程度の気力じゃ、そんなもんかな?
でも、この先の提案を聞けば、多分、少しはやる気が戻るはずだ。
多分……きっと?
リエラとしてはやる気を出してもらえないと、困るんだけど。
「話す内容は――」
続く言葉に、アスタールさんは目を見張る。
「君は……それでいいのかね?」
「君は――」
「はい」
「――行かないのかね?」
なんだか、聞こうとしたことを言い換えたような、変な間が開いた。
「アスタールさんと、少し話さなきゃいけないことがあるので残らせてもらいました」
妙な間が開いたことには気づかなかったふりをして答えると、少しの沈黙を挟んでから、リエラの答えに疑問の言葉を返してくる。
「何かを話し合っていた気配はなかったはずだが……」
アスタールさんの顔をしゃがみ込んで、見上げてみる。
おおう……
目から光が消えていて、まるで死んだ魚みたいだ。
「世の中には、アイコンタクトという意思疎通方法があるんですよ」
目が合ったものの、その金色の瞳は何も映しておらず焦点が定まっていない。
まずい、精神的なダメージが大きすぎた?
ここまでショックを受けてるってことは、リエラは考えたくもなかったことを口にしちゃったんだよね?
そう――自分に置き換えて想像してみよう。
例えば?
スルトが死んじゃったら?
……悲しいかもしれないけど、探索者なんていう危険なお仕事をしているんだから、仕方がない、かな?
ぽっかりと胸に穴が開いたような、淋しい気持ちにはなるかもしれなけれど……
それになにより、アスタールさんにとってのリリンさんとはまた違う存在だ。
じゃあ、セリスさん?
想像なのに、心臓をギュッとつかんだような痛みを感じる。
考えただけでも感じる深い喪失感に、きっとコレだと確信する。
リエラは、なんて発言をしちゃったんだろう……
心の中で自分のやらかしたことを罵倒していると、突然黙り込んだリエラの様子が気になったのか、アスタールさんの口から言葉が漏れる。
「……それで、私の目を覗き込んで、何かわかったかね?」
「とりあえず、早急に気力を取り戻してもらう必要があることくらいしかわかりません」
「ならば、しばらく放っておいてくれないかね」
誰にでも一目瞭然な返事を返したせいか、疲れ切った声が返ってくる。
ため息を吐いて目を閉じる仕草を見ても、本気で、どうしようもないほどに限界らしい。
えっと、アスタールさんにこの状態を脱出してもらう方法は――
「……リエラは、気力を取り戻すいい方法を知っているんですけれど」
目を開いて、胡乱気な視線を向けてくるのは気にせずに言葉を続ける。
「まずは、仮想世界に行って、リリンさんに会ってくると良いんじゃないかと思うんです」
「……りりんに?」
瞬きをして、アスタールさんはオウム返しに繰り返す。
おお! 良かった!
リリンさんの名前を出しただけでも、少し、目に光が戻ってきたよ。
力なく垂れていた耳も、わずかに上を向いたし。
「はい。リリンさんに会って少し元気を補充したら、明日、グラムナードの民に話す内容を考えておいてください」
続きを聞くと、アスタールさんの耳がへにょんと垂れる。
名前だけで回復した程度の気力じゃ、そんなもんかな?
でも、この先の提案を聞けば、多分、少しはやる気が戻るはずだ。
多分……きっと?
リエラとしてはやる気を出してもらえないと、困るんだけど。
「話す内容は――」
続く言葉に、アスタールさんは目を見張る。
「君は……それでいいのかね?」
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