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二年目 アッシェの願い
いっそのこと
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「アッシェもコンちゃんと同じことを思うですよ」
「——まあ、アストールちゃんにしろ師匠にしろ、アスタールさんには大きい存在だよね」
確かに、アストールちゃんは庇護対象として大事にしてるし、師兄のことも大事にしてる。
なんというか、師兄の方はたまに弄り要員扱いしてるようにも見えるけど。
「なのです。それに、結構リエラちゃんのことを頼りにしてるみたいなのです」
「年下の女の子を頼みにしてるって言うのも、ちょっと情けなくない?」
ポッシェの言葉は辛口だけど、まあ、言いたいことは分からないでもない。
たまに、お師匠様がリエラちゃんに甘えてるように見えるときがあるし。
「それに、アスラーダさんがアスタールさんを殺そうとしてる風なのが、事態を悪化させているみたいだったのです」
「師匠がアスタールさんを、ねぇ……」
釈然としない様子でそう呟くと、ポッシェは不意に、アッシェに向かって身を乗り出す。
「そういえばさ、それって、どんな状況で見てる話しなの? なんか、妙にアスタールさん関係の情報に詳しいのってなんで?」
「おお?」
矢継ぎ早にまくしたてられて、アッシェは目を白黒させる。
「うーん……。アッシェがその場にいるわけではないのです」
返ってきたのが、不明瞭な答えだったことに不満そうな顔をしながら、ポッシェは更に訊ねる。
「その場にいないのに、どうしてそんなに詳しいの?」
「そうですねぇ、空中にたくさんの光景が映る魔法具があるようなイメージなのです。その中の、一部だけを見ている状態が近いと思うです」
アッシェの説明が理解できたわけじゃない。
けど、うまい説明ができないと困惑した表情を浮かべる様子からすると、それ以上の説明を求めるのは無理みたい。
分かった範囲だと、アッシェ自身がその現場にいる訳ではないらしいっていうことだけ。
「で、アッシェの女神様っていつでてくるの?」
ポッシェの言葉で、逸れかけていた話が元に戻った。
逸れるような質問をしまくっていたのは、ポッシェ自身だったような気もするけど……気のせいかな。
うん、多分、気のせい。
そういえば、こんな話をしていたのって『アッシェの女神様』のことで悩み事があるとかだったっけ。
「今までのが前提条件なのです」
「――前提条件、長すぎない?」
それには同感だけど、いちいち突っ込んでいると話が進まない。
水の中でポッシェの足をつついて黙らせる。
アッシェは私達のやり取りに気が付いたのか、苦笑を浮かべながら話を続けた。
「女神様は、闇の世界になってしばらくしてから突然アスタールさんの前に現れるのです」
「闇の世界になる前には現れないの?」
「必ず、闇の世界になってからなのです」
世界が闇に包まれるって、結構な大ごとだよね。
それなのに、そうなる前には現れなくって、しばらくして現れるってことは――。
「闇の世界になる前には、産まれてない、とか?」
もしくは、幼すぎるとか。
あ、『女神様』なんていうから無意識に闇の世界を解決するためになんかしてくれるって思っちゃったけど、実際にはそんなことをするつもりはない可能性もあるのかも。
だとしたら、アッシェから聞かされてきた複数のパターンはたまたま起きる可能性のある悲劇なのかもしれない。
「それで、アッシェはどうしたいの?」
「女神様がひどい目に合わないようにしたいのです」
「どうやって?」
ポッシェの問いはシンプルだけど、ちょっと意地悪。
その方法が思いつくなら、アッシェは困って相談なんてしてこないでしょ。
「ポッシェ、意地悪」
ジト目でそれを指摘すると、ポッシェはふくれっ面でデートの邪魔をされた意趣返しだと呟く。
ポッシェも今日のデートを楽しみにしていてくれたのが嬉しくて、口元がニヨニヨと緩んじゃう。
それと同時に、恥ずかしい、かな?
アッシェの目の前でそんな風に言われると、照れちゃう!
「ポッシェちゃんは、わざわざコンちゃんの水着を用意しておくくらいのですからねぇ……」
「分かってるなら、別の日にしてくれればいいのに」
プンプン膨れるポッシェ、可愛い。
「アッシェは、いつか現れるかもしれない女神様がひどい目に合わないようにしたいんだよね」
「ですぅ」
「僕としては、アスタールさんが誰かにひどいことをするってこと自体が想像つかない」
「……そこに関しては、今のところアッシェも同意見なのです」
「それじゃあさ」
そう口にしながら、ポッシェはやたらとイイ笑顔を浮かべる。
「もういっそのこと、アッシェの夢の話とかも全部話しちゃおうよ。アスタールさん、本人にさ」
「——まあ、アストールちゃんにしろ師匠にしろ、アスタールさんには大きい存在だよね」
確かに、アストールちゃんは庇護対象として大事にしてるし、師兄のことも大事にしてる。
なんというか、師兄の方はたまに弄り要員扱いしてるようにも見えるけど。
「なのです。それに、結構リエラちゃんのことを頼りにしてるみたいなのです」
「年下の女の子を頼みにしてるって言うのも、ちょっと情けなくない?」
ポッシェの言葉は辛口だけど、まあ、言いたいことは分からないでもない。
たまに、お師匠様がリエラちゃんに甘えてるように見えるときがあるし。
「それに、アスラーダさんがアスタールさんを殺そうとしてる風なのが、事態を悪化させているみたいだったのです」
「師匠がアスタールさんを、ねぇ……」
釈然としない様子でそう呟くと、ポッシェは不意に、アッシェに向かって身を乗り出す。
「そういえばさ、それって、どんな状況で見てる話しなの? なんか、妙にアスタールさん関係の情報に詳しいのってなんで?」
「おお?」
矢継ぎ早にまくしたてられて、アッシェは目を白黒させる。
「うーん……。アッシェがその場にいるわけではないのです」
返ってきたのが、不明瞭な答えだったことに不満そうな顔をしながら、ポッシェは更に訊ねる。
「その場にいないのに、どうしてそんなに詳しいの?」
「そうですねぇ、空中にたくさんの光景が映る魔法具があるようなイメージなのです。その中の、一部だけを見ている状態が近いと思うです」
アッシェの説明が理解できたわけじゃない。
けど、うまい説明ができないと困惑した表情を浮かべる様子からすると、それ以上の説明を求めるのは無理みたい。
分かった範囲だと、アッシェ自身がその現場にいる訳ではないらしいっていうことだけ。
「で、アッシェの女神様っていつでてくるの?」
ポッシェの言葉で、逸れかけていた話が元に戻った。
逸れるような質問をしまくっていたのは、ポッシェ自身だったような気もするけど……気のせいかな。
うん、多分、気のせい。
そういえば、こんな話をしていたのって『アッシェの女神様』のことで悩み事があるとかだったっけ。
「今までのが前提条件なのです」
「――前提条件、長すぎない?」
それには同感だけど、いちいち突っ込んでいると話が進まない。
水の中でポッシェの足をつついて黙らせる。
アッシェは私達のやり取りに気が付いたのか、苦笑を浮かべながら話を続けた。
「女神様は、闇の世界になってしばらくしてから突然アスタールさんの前に現れるのです」
「闇の世界になる前には現れないの?」
「必ず、闇の世界になってからなのです」
世界が闇に包まれるって、結構な大ごとだよね。
それなのに、そうなる前には現れなくって、しばらくして現れるってことは――。
「闇の世界になる前には、産まれてない、とか?」
もしくは、幼すぎるとか。
あ、『女神様』なんていうから無意識に闇の世界を解決するためになんかしてくれるって思っちゃったけど、実際にはそんなことをするつもりはない可能性もあるのかも。
だとしたら、アッシェから聞かされてきた複数のパターンはたまたま起きる可能性のある悲劇なのかもしれない。
「それで、アッシェはどうしたいの?」
「女神様がひどい目に合わないようにしたいのです」
「どうやって?」
ポッシェの問いはシンプルだけど、ちょっと意地悪。
その方法が思いつくなら、アッシェは困って相談なんてしてこないでしょ。
「ポッシェ、意地悪」
ジト目でそれを指摘すると、ポッシェはふくれっ面でデートの邪魔をされた意趣返しだと呟く。
ポッシェも今日のデートを楽しみにしていてくれたのが嬉しくて、口元がニヨニヨと緩んじゃう。
それと同時に、恥ずかしい、かな?
アッシェの目の前でそんな風に言われると、照れちゃう!
「ポッシェちゃんは、わざわざコンちゃんの水着を用意しておくくらいのですからねぇ……」
「分かってるなら、別の日にしてくれればいいのに」
プンプン膨れるポッシェ、可愛い。
「アッシェは、いつか現れるかもしれない女神様がひどい目に合わないようにしたいんだよね」
「ですぅ」
「僕としては、アスタールさんが誰かにひどいことをするってこと自体が想像つかない」
「……そこに関しては、今のところアッシェも同意見なのです」
「それじゃあさ」
そう口にしながら、ポッシェはやたらとイイ笑顔を浮かべる。
「もういっそのこと、アッシェの夢の話とかも全部話しちゃおうよ。アスタールさん、本人にさ」
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