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二年目 アッシェの願い
相違点
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アッシェはそう前置きをして話し始めた。
「まずは、ある日を境いに世界全体が薄暗闇に包まれるのです」
「薄暗闇?」
「こう――」
ポッシェの問いに答えるように呟きながら、アッシェは片手を精一杯伸ばしてみせる。
「この辺りから先が暗くて見えない程度の明るさなのです」
「ロウソクの灯り位?」
「それだと、ロウソクの周りは明るいのです」
「火をを灯しても明るくならないってこと?」
「なのです」
ってことは、色んなものが見えない状態ってこと?
それは不便を通り越して、文字通りのお先真っ暗状態。
そんな状態で、人って暮らしていけるのかな?
「そんな暗闇に閉ざされた世界だから、人々の心が段々と荒んでいってて、国が瓦解してしまってるのです」
「「だよねぇ」」
私とポッシェの声がハモる。
そんな状況で、秩序を保てるとは到底思えないし。
「でも、『迷宮』では以前と変わらず光が差す世界が広がっているのです。だから、光を求めた人々がグラムナードに集まってくるのですよ」
「なんか、焚火にあつまる虫みたいだね」
アッシェの話に、ポッシェはそう言って笑ったけど……。
なんか、これって笑えない気がする。
「そんなに人が集まってきて、平気?」
外町も、土地は広いけど建物はそんなに多くないよね。
中町に入ることができるのならまた別かもしれないけど、それでも、イニティ王国のすべての人が暮らせるとは思えない。
「その辺は良く分からないのです」
「そっか」
夢の情報だもんね。
見る場所が偏ってても不思議じゃないか。
「ただ、中町はおろか外町にも、グラムナードの民が存在しないのです」
「え」
「なんで?」
グラムナードの民がいないグラムナードって、おかしくない?
「大体、薄暗闇に閉ざされた時点で自害したり、殺しあったりというパターンなのです」
「えええ……」
ポッシェ、ドン引き。
私も、普段の穏やかなグラムナードの民の姿からかけ離れたその話に驚きを隠せない。
でも……それって、もしかしたらアレかな?
「グラムナードの民は、輝影の支配者の精神状態に影響を受ける、とか?」
「——あるかもしれないです」
私の問いに、少し間をおいてアッシェがk値にしたのは同意の言葉。
一応、心当たりはあるんだよね。
精神的な影響を受けるんじゃないかって話。
アストールちゃんの機嫌があんまりにも悪い時って、私もそうだからって話なんだけど。
まだまだ子供だから機嫌が悪いで済んでいるんだけど……。
もし、彼女の負の感情に自分が流されちゃったらって考えると、ちょっと怖いかも。
きっと代行者って、そういう影響を受けやすいんじゃないかとも思うから、今から気を付けておかないと。
「そんな訳で、グラムナードの民がいないせいか、アスタールさんは一人で輝影神殿をさまよっているのです」
「今話しているのってさ、どれも該当することがないんだけど」
確かにポッシェの言う通り。
今、私たちの周りを取り巻く現状は、そんなお先真っ暗なイメージのモノではない。
「最初は、まだその時が来てないのかと思ってたのですよ」
「——ああ、だから僕たちをグラムナードに連れてこようとしてたの?」
「です。もし、闇に閉ざされる時が来たなら、この町に最初からコンちゃん達の居場所があった方が安心なのです」
「成程ねぇ……。夢で見たって言うのは、ウソだったんだ」
ポッシェのジト目に、アッシェは目をそらしつつ口笛を吹く。
そっか、アレは嘘だったんだ。
「まあ、結果的に僕は比較的安全に探索者として身を立てる目途が立ったといえなくもないから文句は言えないけど」
その言葉にホッとした様子を見せるアッシェに、ポッシェは不機嫌な表情で続ける。
「コンカッセが、『水の愛し子』なんてのの代行者に選ばれてなければ――ねぇ」
「そ、それよりも、ほら、他の相違点は?」
「……アストールちゃんも存在してないのですけど、大きいのはアスラーダさんとリエラちゃんが親子だったってあたりですかねぇ」
アッシェ、その二つが一番大きな相違点じゃない?
「まずは、ある日を境いに世界全体が薄暗闇に包まれるのです」
「薄暗闇?」
「こう――」
ポッシェの問いに答えるように呟きながら、アッシェは片手を精一杯伸ばしてみせる。
「この辺りから先が暗くて見えない程度の明るさなのです」
「ロウソクの灯り位?」
「それだと、ロウソクの周りは明るいのです」
「火をを灯しても明るくならないってこと?」
「なのです」
ってことは、色んなものが見えない状態ってこと?
それは不便を通り越して、文字通りのお先真っ暗状態。
そんな状態で、人って暮らしていけるのかな?
「そんな暗闇に閉ざされた世界だから、人々の心が段々と荒んでいってて、国が瓦解してしまってるのです」
「「だよねぇ」」
私とポッシェの声がハモる。
そんな状況で、秩序を保てるとは到底思えないし。
「でも、『迷宮』では以前と変わらず光が差す世界が広がっているのです。だから、光を求めた人々がグラムナードに集まってくるのですよ」
「なんか、焚火にあつまる虫みたいだね」
アッシェの話に、ポッシェはそう言って笑ったけど……。
なんか、これって笑えない気がする。
「そんなに人が集まってきて、平気?」
外町も、土地は広いけど建物はそんなに多くないよね。
中町に入ることができるのならまた別かもしれないけど、それでも、イニティ王国のすべての人が暮らせるとは思えない。
「その辺は良く分からないのです」
「そっか」
夢の情報だもんね。
見る場所が偏ってても不思議じゃないか。
「ただ、中町はおろか外町にも、グラムナードの民が存在しないのです」
「え」
「なんで?」
グラムナードの民がいないグラムナードって、おかしくない?
「大体、薄暗闇に閉ざされた時点で自害したり、殺しあったりというパターンなのです」
「えええ……」
ポッシェ、ドン引き。
私も、普段の穏やかなグラムナードの民の姿からかけ離れたその話に驚きを隠せない。
でも……それって、もしかしたらアレかな?
「グラムナードの民は、輝影の支配者の精神状態に影響を受ける、とか?」
「——あるかもしれないです」
私の問いに、少し間をおいてアッシェがk値にしたのは同意の言葉。
一応、心当たりはあるんだよね。
精神的な影響を受けるんじゃないかって話。
アストールちゃんの機嫌があんまりにも悪い時って、私もそうだからって話なんだけど。
まだまだ子供だから機嫌が悪いで済んでいるんだけど……。
もし、彼女の負の感情に自分が流されちゃったらって考えると、ちょっと怖いかも。
きっと代行者って、そういう影響を受けやすいんじゃないかとも思うから、今から気を付けておかないと。
「そんな訳で、グラムナードの民がいないせいか、アスタールさんは一人で輝影神殿をさまよっているのです」
「今話しているのってさ、どれも該当することがないんだけど」
確かにポッシェの言う通り。
今、私たちの周りを取り巻く現状は、そんなお先真っ暗なイメージのモノではない。
「最初は、まだその時が来てないのかと思ってたのですよ」
「——ああ、だから僕たちをグラムナードに連れてこようとしてたの?」
「です。もし、闇に閉ざされる時が来たなら、この町に最初からコンちゃん達の居場所があった方が安心なのです」
「成程ねぇ……。夢で見たって言うのは、ウソだったんだ」
ポッシェのジト目に、アッシェは目をそらしつつ口笛を吹く。
そっか、アレは嘘だったんだ。
「まあ、結果的に僕は比較的安全に探索者として身を立てる目途が立ったといえなくもないから文句は言えないけど」
その言葉にホッとした様子を見せるアッシェに、ポッシェは不機嫌な表情で続ける。
「コンカッセが、『水の愛し子』なんてのの代行者に選ばれてなければ――ねぇ」
「そ、それよりも、ほら、他の相違点は?」
「……アストールちゃんも存在してないのですけど、大きいのはアスラーダさんとリエラちゃんが親子だったってあたりですかねぇ」
アッシェ、その二つが一番大きな相違点じゃない?
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