189 / 263
二年目 アッシェの願い
アッシェはみんなのお邪魔虫
しおりを挟む
「――そろそろ戻ろっか」
「ん。寒くなってきた……」
ポッシェがそう言いだしたのは、ある程度私の話を聞き終わってからのこと。
途中で何度か聞かれたことに答えたりしていたのもあって、その頃にはもう、体が冷え冷え!
続きはポッシェが話の整理を終えた後にまわすことにして、二人で震えながら浜に上がる。
まさか、熱く焼けた砂浜がありがたく感じるなんて……。
「コンカッセ、砂の熱さがなんか気持ちいいよ」
「……火傷、しない?」
止める間もなく、波が届かない砂に身を投げ出したポッシェがニコニコ笑顔でそう言うけど、流石に私が真似するのはちょっとためらわれる。
折角の水浴び着が汚れちゃうもの。
かといって、体を手っ取り早く暖めるのには良さそうな方法だし……。
悩んだものの結局、砂の上にうつぶせになっているポッシェのそばに座り込んで、砂を手足にかけてみる。
――あったかい。
「……ん、いいかも」
本当はポッシェみたいにゴロンと寝転がっちゃう方がいいのかもしれないけど、これでも悪くない感じ。
少し体が温まって頬を緩める私を不思議そうに見ていたポッシェが、ポロッと呟く。
「そっか、水浴び着が汚れちゃうからか」
「ん」
「今のコンカッセに合わせて作ってもらったから、来年は着れないかもよ?」
「……今年は、もう来ない?」
思いのほか残念そうな声が出た。
「――じゃあ、次は面倒な話抜きで楽しみに来ようか?」
私のそんな様子が意外だったのか、ポッシェは何度か瞬きしてから苦笑を浮かべつつそう提案してくれる。
「ん。嬉しい」
そう返すのと同時に、ポッシェの顔が不満げにゆがむ。
不思議に思って彼の視線を追って振り向くと、そこには水浴び着に身を包んだアッシェの姿。
「そしたら、アッシェもお話に混ぜて貰っていいです?」
「せっかく置いてきたのに……。どうやって来たの?」
無邪気にも見える表情で小首を傾げる彼女の姿に、ポッシェは大きなため息を吐きながら起き上がる。
なんだかとっても不満そう。
「ルナちゃんとスルト君。あとはリエラちゃんとアスラーダさんの四人と一緒にきたです」
「……暑いもんね」
「婚約者同士の二人と、早くくっつけ―な二人の中にいるのもナンでアレなのですよ」
そう言いながら視線を向ける先には、大きな水しぶきを上げて元気に泳ぐルナちゃん達と、そこから離れて浮き輪でプカプカしているリエラちゃん達の姿。
なるほど納得。
アッシェはどこに行ってもお邪魔虫……と。
折角のデートにアッシェが混ざるのは、私としてもションボリ。
でも――居場所がなくて頼ってきたアッシェを突き放すのも、なんだかちょっと……。
困ったなと思いつつポッシェに視線を向けると、彼はむくれた顔をしながらも頷いてくれる。
「アッシェはお昼ご飯どうすんの?」
そういえば、お昼ご飯は二人分しか持ってきてない。
私の分を半分こすればいいか。
ポッシェは育ち盛りでよく食べるし、不承不承受け入れることにしたんだしご飯まで分けてあげるのは嫌だろうし。
でも、そこはアッシェも考えてたみたい。
後ろ手に持っていた網を掲げて見せる。
「ふっふふー♪ あっちで、とれたてのお魚を買ってきたのです!」
ちゃんと二人の分もあるのです、と力説するアッシェを見て、ポッシェは呟く。
「コンカッセ……。やっぱり、最初から断ってもこっちに混ざるつもりだったんだよ」
「……ん」
「だって、コンちゃんとポッシェが工房で話しづらい事を話すのですから、アッシェの話も聞いてほしかったのですよぉ……」
私達のやり取りに、アッシェのほっぺが膨らむ。
そういえば、アッシェも工房に入ってからはほとんど『姫の女神様』のお話をしなくなってたっけ。
孤児院にいた時には、そりゃあもう、耳にタコができるくらい聞かされたのに。
「アッシェの話?」
「『女神様』?」
「なのです……」
私の言葉に頷いたアッシェは、ちょっぴり途方に暮れた表情を浮かべてた。
「ん。寒くなってきた……」
ポッシェがそう言いだしたのは、ある程度私の話を聞き終わってからのこと。
途中で何度か聞かれたことに答えたりしていたのもあって、その頃にはもう、体が冷え冷え!
続きはポッシェが話の整理を終えた後にまわすことにして、二人で震えながら浜に上がる。
まさか、熱く焼けた砂浜がありがたく感じるなんて……。
「コンカッセ、砂の熱さがなんか気持ちいいよ」
「……火傷、しない?」
止める間もなく、波が届かない砂に身を投げ出したポッシェがニコニコ笑顔でそう言うけど、流石に私が真似するのはちょっとためらわれる。
折角の水浴び着が汚れちゃうもの。
かといって、体を手っ取り早く暖めるのには良さそうな方法だし……。
悩んだものの結局、砂の上にうつぶせになっているポッシェのそばに座り込んで、砂を手足にかけてみる。
――あったかい。
「……ん、いいかも」
本当はポッシェみたいにゴロンと寝転がっちゃう方がいいのかもしれないけど、これでも悪くない感じ。
少し体が温まって頬を緩める私を不思議そうに見ていたポッシェが、ポロッと呟く。
「そっか、水浴び着が汚れちゃうからか」
「ん」
「今のコンカッセに合わせて作ってもらったから、来年は着れないかもよ?」
「……今年は、もう来ない?」
思いのほか残念そうな声が出た。
「――じゃあ、次は面倒な話抜きで楽しみに来ようか?」
私のそんな様子が意外だったのか、ポッシェは何度か瞬きしてから苦笑を浮かべつつそう提案してくれる。
「ん。嬉しい」
そう返すのと同時に、ポッシェの顔が不満げにゆがむ。
不思議に思って彼の視線を追って振り向くと、そこには水浴び着に身を包んだアッシェの姿。
「そしたら、アッシェもお話に混ぜて貰っていいです?」
「せっかく置いてきたのに……。どうやって来たの?」
無邪気にも見える表情で小首を傾げる彼女の姿に、ポッシェは大きなため息を吐きながら起き上がる。
なんだかとっても不満そう。
「ルナちゃんとスルト君。あとはリエラちゃんとアスラーダさんの四人と一緒にきたです」
「……暑いもんね」
「婚約者同士の二人と、早くくっつけ―な二人の中にいるのもナンでアレなのですよ」
そう言いながら視線を向ける先には、大きな水しぶきを上げて元気に泳ぐルナちゃん達と、そこから離れて浮き輪でプカプカしているリエラちゃん達の姿。
なるほど納得。
アッシェはどこに行ってもお邪魔虫……と。
折角のデートにアッシェが混ざるのは、私としてもションボリ。
でも――居場所がなくて頼ってきたアッシェを突き放すのも、なんだかちょっと……。
困ったなと思いつつポッシェに視線を向けると、彼はむくれた顔をしながらも頷いてくれる。
「アッシェはお昼ご飯どうすんの?」
そういえば、お昼ご飯は二人分しか持ってきてない。
私の分を半分こすればいいか。
ポッシェは育ち盛りでよく食べるし、不承不承受け入れることにしたんだしご飯まで分けてあげるのは嫌だろうし。
でも、そこはアッシェも考えてたみたい。
後ろ手に持っていた網を掲げて見せる。
「ふっふふー♪ あっちで、とれたてのお魚を買ってきたのです!」
ちゃんと二人の分もあるのです、と力説するアッシェを見て、ポッシェは呟く。
「コンカッセ……。やっぱり、最初から断ってもこっちに混ざるつもりだったんだよ」
「……ん」
「だって、コンちゃんとポッシェが工房で話しづらい事を話すのですから、アッシェの話も聞いてほしかったのですよぉ……」
私達のやり取りに、アッシェのほっぺが膨らむ。
そういえば、アッシェも工房に入ってからはほとんど『姫の女神様』のお話をしなくなってたっけ。
孤児院にいた時には、そりゃあもう、耳にタコができるくらい聞かされたのに。
「アッシェの話?」
「『女神様』?」
「なのです……」
私の言葉に頷いたアッシェは、ちょっぴり途方に暮れた表情を浮かべてた。
0
お気に入りに追加
1,709
あなたにおすすめの小説
神様に加護2人分貰いました
琳太
ファンタジー
ある日白い部屋で白い人に『勇者として召喚された』と言われたが、気づけば魔法陣から突き落とされ見知らぬ森の中にポツンと1人立っていた。ともかく『幼馴染』と合流しないと。
気付けばチートで異世界道中楽々かも?可愛いお供もゲットしたフブキの異世界の旅は続く……
この世界で初めて出会った人間?はケモ耳の少女いろいろあって仲間になり、ようやく幼馴染がいると思われる大陸へ船でやてきたところ……
旧題【異世界召喚、神様に加護2人分貰いました】は改題され2018年3月書籍化、8巻まで発売中。
2019年7月吉祥寺笑先生によるコミカライズ連載開始、コミック1巻発売中です。
ご購入いただいた皆様のおかげで続刊が発売されます。
生きるのが下手な僕たちは、それでも命を愛したい。
柚鷹けせら
BL
【2024/06/01 更新再開しました】
目の前に飛び出して来た高校生を轢きそうになった瞬間、異世界に引っ張られた主人公は、神様のルールに則って異世界に転移する事になった。
今までの生活を振り返り、自分に正直に生きる事を目指すのだが、その境遇に同情し絆された神様たちがくれた加護の相乗効果でセカンドライフは波乱の幕開け?
「親にも捨てられたんだ、誰かの役に立ち続けないと生きることも許されない」
ずっとそういう気持ちを抱え、自身のセクシャリティからも目を背けていた主人公が、実は昔から彼を見守り続けていた神様の世界で幸せになるための物語。
□■□
●たまに戦闘やグロいシーンがあります。注意喚起※付けます。苦手な方はご注意ください。
●物語の舞台となる世界の設定上、同性婚でも子供が授かれるようになっています。
●恋愛&ラブHは第4章92話以降~。
●作中に出て来るイヌ科やネコ科といった獣人族の分類は地球のものとは異なります。異世界ファンタジーだと割り切って頂けますようよろしくお願い致します。
2022/05/13 タグ編集
2022/05/22 内容紹介編集
2022/06/27 タグ・内容紹介編集
2022/07/03 タグ編集
2022/09/06 タグ・内容紹介編集
2022/09/20 本編タイトル表記統一等調整しました
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
最狂公爵閣下のお気に入り
白乃いちじく
ファンタジー
「お姉さんなんだから、我慢しなさい」
そんな母親の一言で、楽しかった誕生会が一転、暗雲に包まれる。
今日15才になる伯爵令嬢のセレスティナには、一つ年下の妹がいる。妹のジーナはとてもかわいい。蜂蜜色の髪に愛らしい顔立ち。何より甘え上手で、両親だけでなく皆から可愛がられる。
どうして自分だけ? セレスティナの心からそんな鬱屈した思いが吹き出した。
どうしていつもいつも、自分だけが我慢しなさいって、そう言われるのか……。お姉さんなんだから……それはまるで呪いの言葉のよう。私と妹のどこが違うの? 年なんか一つしか違わない。私だってジーナと同じお父様とお母様の子供なのに……。叱られるのはいつも自分だけ。お決まりの言葉は「お姉さんなんだから……」
お姉さんなんて、なりたくてなったわけじゃない!
そんな叫びに応えてくれたのは、銀髪の紳士、オルモード公爵様だった。
***登場人物初期設定年齢変更のお知らせ***
セレスティナ 12才(変更前)→15才(変更後) シャーロット 13才(変更前)→16才(変更後)
馨の愛しい主の二人
Emiry
BL
瑞峰 柚羽音 ずいほう ゆうね (瑞峰組 調教師兼情報管理担当)
瑞峰 虎龍 ずいほう こりゅう (瑞峰組若頭後に組長になる予定)
瑞峰 馨 ずいほうかおる (元 澤野組の次男)
馨は澤野組の次男として自由に遊んでいたが、ある日 馨の父 澤野組組長から電話で呼び出される
その後 裏SM店の店長の彬の息子 柚羽音に引き合わされ 柚羽音のモノになる
虹かけるメーシャ
大魔王たか〜し
ファンタジー
己だけのユートピアを作るために世界征服を企む邪神ゴッパは、
異世界だけでなく地球にまでその手を伸ばそうとしていた。
生物だけでなく、世界そのものを滅ぼしかねない邪神のチカラを目の当たりにした主人公のメーシャは、
その野望を阻止するために龍神のチカラを持つ勇者となり、地球と異世界ふたつの世界を救う旅に出る。
天涯孤独になった僕をイケメン外国人が甘やかしてくれます
波木真帆
BL
日本の田舎町に住む高校生の僕・江波弓弦は、物心ついた時には家族は母しかいなかった。けれど、僕の顔には父の痕跡がありありと残っていた。
光に当たると金髪にも見える薄い茶色の髪、そしてグリーンがかった茶色の瞳……日本人の母にはないその特徴で、父は外国人なのだと分かった。けれど、父の手がかりはそれだけ。母に何度か父のことを尋ねたけれど、悲しそうな顔をするだけで、僕は聞いてはいけないことだと悟り、父のことを聞くのをやめた。母ひとり子ひとりで大変ながらも幸せに暮らしていたある日、突然の事故で母を失い、天涯孤独になってしまう。
どうしたらいいか途方に暮れていた時、母が何かあった時のためにと残してくれていたものを思い出し、それを取り出すと一枚の紙が出てきて、そこには11桁の数字が書かれていた。
それが携帯番号だと気づいた僕は、その番号にかけて思いがけない人物と出会うことになり……。
イケメンでセレブな外国人社長と美少年高校生のハッピーエンド小説です。
R18には※つけます。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。