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二年目 アッシェの願い

アッシェはみんなのお邪魔虫

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「――そろそろ戻ろっか」
「ん。寒くなってきた……」

 ポッシェがそう言いだしたのは、ある程度私の話を聞き終わってからのこと。
途中で何度か聞かれたことに答えたりしていたのもあって、その頃にはもう、体が冷え冷え!
続きはポッシェが話の整理を終えた後にまわすことにして、二人で震えながら浜に上がる。
まさか、熱く焼けた砂浜がありがたく感じるなんて……。

「コンカッセ、砂の熱さがなんか気持ちいいよ」
「……火傷、しない?」

 止める間もなく、波が届かない砂に身を投げ出したポッシェがニコニコ笑顔でそう言うけど、流石に私が真似するのはちょっとためらわれる。
折角の水浴び着が汚れちゃうもの。
かといって、体を手っ取り早く暖めるのには良さそうな方法だし……。
悩んだものの結局、砂の上にうつぶせになっているポッシェのそばに座り込んで、砂を手足にかけてみる。
――あったかい。

「……ん、いいかも」

 本当はポッシェみたいにゴロンと寝転がっちゃう方がいいのかもしれないけど、これでも悪くない感じ。
少し体が温まって頬を緩める私を不思議そうに見ていたポッシェが、ポロッと呟く。

「そっか、水浴び着が汚れちゃうからか」
「ん」
「今のコンカッセに合わせて作ってもらったから、来年は着れないかもよ?」
「……今年は、もう来ない?」

 思いのほか残念そうな声が出た。

「――じゃあ、次は面倒な話抜きで楽しみに来ようか?」

 私のそんな様子が意外だったのか、ポッシェは何度か瞬きしてから苦笑を浮かべつつそう提案してくれる。

「ん。嬉しい」

 そう返すのと同時に、ポッシェの顔が不満げにゆがむ。
不思議に思って彼の視線を追って振り向くと、そこには水浴び着に身を包んだアッシェの姿。

「そしたら、アッシェもお話に混ぜて貰っていいです?」
「せっかく置いてきたのに……。どうやって来たの?」

 無邪気にも見える表情で小首を傾げる彼女の姿に、ポッシェは大きなため息を吐きながら起き上がる。
なんだかとっても不満そう。

「ルナちゃんとスルト君。あとはリエラちゃんとアスラーダさんの四人と一緒にきたです」
「……暑いもんね」
婚約者同士の二人ルナちゃん達と、早くくっつけ―な二人リエラちゃん達の中にいるのもナンでアレなのですよ」

 そう言いながら視線を向ける先には、大きな水しぶきを上げて元気に泳ぐルナちゃん達と、そこから離れて浮き輪でプカプカしているリエラちゃん達の姿。
なるほど納得。
アッシェはどこに行ってもお邪魔虫……と。
折角のデートにアッシェが混ざるのは、私としてもションボリ。
でも――居場所がなくて頼ってきたアッシェを突き放すのも、なんだかちょっと……。
困ったなと思いつつポッシェに視線を向けると、彼はむくれた顔をしながらも頷いてくれる。

「アッシェはお昼ご飯どうすんの?」

 そういえば、お昼ご飯は二人分しか持ってきてない。
私の分を半分こすればいいか。
ポッシェは育ち盛りでよく食べるし、不承不承受け入れることにしたんだしご飯まで分けてあげるのは嫌だろうし。
でも、そこはアッシェも考えてたみたい。
後ろ手に持っていた網を掲げて見せる。

「ふっふふー♪ あっちで、とれたてのお魚を買ってきたのです!」

 ちゃんと二人の分もあるのです、と力説するアッシェを見て、ポッシェは呟く。

「コンカッセ……。やっぱり、最初から断ってもこっちに混ざるつもりだったんだよ」
「……ん」
「だって、コンちゃんとポッシェが工房で話しづらい事を話すのですから、アッシェの話も聞いてほしかったのですよぉ……」

 私達のやり取りに、アッシェのほっぺが膨らむ。
そういえば、アッシェも工房に入ってからはほとんど『姫の女神様』のお話をしなくなってたっけ。
孤児院にいた時には、そりゃあもう、耳にタコができるくらい聞かされたのに。

「アッシェの話?」
「『女神様』?」
「なのです……」

 私の言葉に頷いたアッシェは、ちょっぴり途方に暮れた表情を浮かべてた。
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