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二年目 岩窟の迷宮
金虫ワサワサ
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停められた荷馬車に掘り出した鉱石を運ぶ人達とすれ違いつつ、奥へと進む。
奥に進む通路には時々、横道があった。
その中からカツーンカツーンという固いものを叩く音がするのは、中で採掘をしている人がいるからなんだって。
横穴の中に横道があるのはなんか変な感じだけど、そう言うものだと思う事にする。
そういった採掘中の横道をいくつか過ぎると、採掘する音が遠くに聞こえるようになった。
「そろそろ、横道に入らないか?」
「だね。このまま進んでも仕方なさそうだし」
先頭に立ったスルト君の提案にルナちゃんが頷き、次に出てきた横道に入る。
横道の中は今まで歩いていた通路と違って、少し薄暗く、湿った感じ。
いかにも出そうだよね。
ワサワサしたのが!
「明かり出そうか?」
足元が良く見えないからか、リエラちゃんがそう提案したんだけど、ルナちゃんは首を横に振る。
「やめといた方がいいかな。この迷宮だと、光に惹かれてくるのもいるから」
「そっか。じゃ、足元に気を付けないとね」
明かりは欲しかったけど、沢山の金虫にたかられるのは確かに嫌すぎ。
あ、でもこういうのはどうだろ?
「……さっきの通路程度の明かりは、無理?」
「ああ、それならアリかも」
私の案にルナちゃんは手をポンと打つと、師兄に視線を向けて意見を求めた。
「光量をあそこまで抑えれば問題ない」
「なら、リエらんお願い」
「了解」
師兄から太鼓判をもらえたお陰で、リエラちゃんの魔法が足元をうっすらと照らしてくれる。
先頭のスルト君を中心にしたものと、一番後ろを歩く師兄を中心にしたものとの合計二つ。
二か所に明かりを作ったのは、光量を押さえた分明るくなる範囲が狭いからみたい。
なにはともあれ、これでちょっぴり安心。
私もだけど、リエラちゃんもどんくさいからさ。
二人そろって転びそうで怖かったの。
でも、安心したのも束の間。
リエラちゃんが上の方も見えた方がいいんじゃないかと言って、天井に向けて明かりを作る。
その光を何の気なしに見上げた私は、テラテラと光る節くれだった長―い体の先にある小さな一対の目がこちらを見下ろしているのを発見してしまった。
金虫、初遭遇!
「~~~!!」
声にならないって言うのは、こういう事なんだね。
驚きのあまり、ビクンと体が震える。
これは心臓に悪いよ!!
口をパクパクさせながらも、頭上でワサワサしている金虫になんとかモーニングスターを向け、みんなに警告の声を上げる。
「あ……あた、あたま――」
私が口を開くのとほぼ同時に、天井にしがみついていた虫達がボトボトと落ちてきた。
ぎゃー! いやー!! 落ちて来るなー!!
「~~~!!」
私、パニック!
だってだって、この金虫ってばゲジゲジっぽい!
足がワサワサしてて、めちゃくちゃ気持ち悪いあのアレ!
声にならない悲鳴を上げながら、目をぎゅっと瞑ってモーニングスターを闇雲に振り回した。
ペチペチとほっぺを軽く叩かれて我に返る。
ほっぺを叩いたのはポッシェだ。
ギュウッと彼に抱きついてから周りを見回すと、私は金虫の死体の中に座り込んでいた。
思わずしがみつきなおしてしまうと、横からアッシェのくすくす笑う声。
「いやぁ~……。アレはなかなかくる光景だったですねぇ」
「――言えてるぅ。いきなりアレは、コンコンでなくてもテンパるわぁ~……」
「「なにはともあれ、お熱い事で」」
そうやってからかう二人の声は、いつもの元気がない。
二人ともへたり込んでるところを見れば、お察しか。
意外な事に、元気なのはリエラちゃん。
「アスラーダさん、虫ならイケました……!」
「うん、まぁ……良かったな?」
でも、リエラちゃん。
鼻息荒く、鈍器代わりになったらしい盾を振り回すのはあんまりお勧めできないよ?
ねっちょりと虫の体液がくっついてるから、師兄もちょっとひいてるみたいだし。
……でも、そっか。
リエラちゃんが虫を叩くのは平気なんだったら、役立たずは私だけ。
せめて、口を閉じて自分の身くらいは守れるように気合を入れないと。
とりあえず今は、久しぶりのポッシェ成分の補給をしておこう。
最近、こういう機会が全然ないんだもの。
奥に進む通路には時々、横道があった。
その中からカツーンカツーンという固いものを叩く音がするのは、中で採掘をしている人がいるからなんだって。
横穴の中に横道があるのはなんか変な感じだけど、そう言うものだと思う事にする。
そういった採掘中の横道をいくつか過ぎると、採掘する音が遠くに聞こえるようになった。
「そろそろ、横道に入らないか?」
「だね。このまま進んでも仕方なさそうだし」
先頭に立ったスルト君の提案にルナちゃんが頷き、次に出てきた横道に入る。
横道の中は今まで歩いていた通路と違って、少し薄暗く、湿った感じ。
いかにも出そうだよね。
ワサワサしたのが!
「明かり出そうか?」
足元が良く見えないからか、リエラちゃんがそう提案したんだけど、ルナちゃんは首を横に振る。
「やめといた方がいいかな。この迷宮だと、光に惹かれてくるのもいるから」
「そっか。じゃ、足元に気を付けないとね」
明かりは欲しかったけど、沢山の金虫にたかられるのは確かに嫌すぎ。
あ、でもこういうのはどうだろ?
「……さっきの通路程度の明かりは、無理?」
「ああ、それならアリかも」
私の案にルナちゃんは手をポンと打つと、師兄に視線を向けて意見を求めた。
「光量をあそこまで抑えれば問題ない」
「なら、リエらんお願い」
「了解」
師兄から太鼓判をもらえたお陰で、リエラちゃんの魔法が足元をうっすらと照らしてくれる。
先頭のスルト君を中心にしたものと、一番後ろを歩く師兄を中心にしたものとの合計二つ。
二か所に明かりを作ったのは、光量を押さえた分明るくなる範囲が狭いからみたい。
なにはともあれ、これでちょっぴり安心。
私もだけど、リエラちゃんもどんくさいからさ。
二人そろって転びそうで怖かったの。
でも、安心したのも束の間。
リエラちゃんが上の方も見えた方がいいんじゃないかと言って、天井に向けて明かりを作る。
その光を何の気なしに見上げた私は、テラテラと光る節くれだった長―い体の先にある小さな一対の目がこちらを見下ろしているのを発見してしまった。
金虫、初遭遇!
「~~~!!」
声にならないって言うのは、こういう事なんだね。
驚きのあまり、ビクンと体が震える。
これは心臓に悪いよ!!
口をパクパクさせながらも、頭上でワサワサしている金虫になんとかモーニングスターを向け、みんなに警告の声を上げる。
「あ……あた、あたま――」
私が口を開くのとほぼ同時に、天井にしがみついていた虫達がボトボトと落ちてきた。
ぎゃー! いやー!! 落ちて来るなー!!
「~~~!!」
私、パニック!
だってだって、この金虫ってばゲジゲジっぽい!
足がワサワサしてて、めちゃくちゃ気持ち悪いあのアレ!
声にならない悲鳴を上げながら、目をぎゅっと瞑ってモーニングスターを闇雲に振り回した。
ペチペチとほっぺを軽く叩かれて我に返る。
ほっぺを叩いたのはポッシェだ。
ギュウッと彼に抱きついてから周りを見回すと、私は金虫の死体の中に座り込んでいた。
思わずしがみつきなおしてしまうと、横からアッシェのくすくす笑う声。
「いやぁ~……。アレはなかなかくる光景だったですねぇ」
「――言えてるぅ。いきなりアレは、コンコンでなくてもテンパるわぁ~……」
「「なにはともあれ、お熱い事で」」
そうやってからかう二人の声は、いつもの元気がない。
二人ともへたり込んでるところを見れば、お察しか。
意外な事に、元気なのはリエラちゃん。
「アスラーダさん、虫ならイケました……!」
「うん、まぁ……良かったな?」
でも、リエラちゃん。
鼻息荒く、鈍器代わりになったらしい盾を振り回すのはあんまりお勧めできないよ?
ねっちょりと虫の体液がくっついてるから、師兄もちょっとひいてるみたいだし。
……でも、そっか。
リエラちゃんが虫を叩くのは平気なんだったら、役立たずは私だけ。
せめて、口を閉じて自分の身くらいは守れるように気合を入れないと。
とりあえず今は、久しぶりのポッシェ成分の補給をしておこう。
最近、こういう機会が全然ないんだもの。
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