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二年目 錬金術師のお仕事
森の氏族 下
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アメリーヌさんの服が真っ白なのは、ハチに襲われづらい色だからなのだと聞かされて自分の服を見る。
……まだハチの塔から大分離れているというのに、すでに何匹かのハチがとまっている。
セリスさんに作ってもらった狐耳の軽装防具は、ハチに好かれる色なのかな?
ハチに刺されてしまうんじゃないかと青くなるリエラに、アメリーヌさんは周りの温度を下げてみるように提案してきた。
それでどうこうなるのかと思いつつ彼女の言う通りに自分の周りの温度を下げてみると、少しづつハチの動きが鈍くなっていって、最後に服をばたつかせただけでポトリと地面に落っこちる。
これでちょっぴり一安心だ。
「――えっと、死んじゃったんでしょうか?」
「寒くて動けなくなってるだけだから大丈夫」
成程、ハチは寒くなると動けなくなるのか。
一つ賢くなった!
って言うのは置いといて――。
自分の周囲をちょっぴり肌寒い程度の気温に保ちつつ、ハチが近づいてこられない程度の強さの風を自分達の周りに巡らせてから、アメリーヌさんの作業を見学させてもらう。
勿論、彼女の邪魔にならない程度の距離を保たないといけないんだけど。
この状態で巣になっている木箱に近づくと、中のハチも凍えちゃうし。
「――こんな感じで一番上の木枠を外していくんですよ」
彼女はそう説明しながら、木箱だとリエラが思っていた枠を下の物と切り分ける。
アメリーヌさんがトントンと木枠を叩くたびに、ハチが下の方へと逃げていくのがちょっと面白い。
音と振動、どっちが嫌なんだろう?
どちらにしても、アレでハチが逃げていくならリエラも出来る……かもしれない。
彼女が切り離したばかりの木枠――巣枠と呼ぶらしい――を持ってきてくれて、それをじっくりと観察。
自分でも作れそうに見えるから、今度、素材回収所で試してみることにしよう。
上手に収穫できるかはまた別の話だけど。
アメリーヌさんを質問責めにして満足すると、改めて箱庭を案内してもらう。
養蜂の後は、果物を採っているところを見学したり、平原の畑をのぞいてみたりと結構な距離を歩いた気がする。
そして最後にやってきたのは、畑から少しだけ離れた場所にある木材の加工場。
この作業場には仕事柄か、細身な人が多い輝影族や光猫族には珍しく、体格が良い人が多いみたいだ。
「俺は普段はここで働いているんでさぁ」
ジェロランさんがそう言いながら手を振ると、作業をしている人達が手を止めて声を張り上げる。
「ジェロラン、そろそろいつものを頼むよ!」
「こっちの作業はもう片が付きそうだから急いでくれよ~!」
「いつもの美声、頼むぜ!」
「美声??」
「では、今からお聞かせしましょう……!」
あちこちから掛けられる声に手を上げて応えると、彼はスゥっと息を吸い込み大きく口を開く。
「あるけ~あるけ~♪ ずんずんすっすめ~♪ えだはをおっとし~てこうしんし~よう♪」
よく響き渡るその声は、確かに美声と言っていいものだ。
でも、歌詞がひどい……!
なんでこんなひどい歌がリクエストされるのかと不思議に思うよりも早く、彼の歌はその真価を見せる。
最初の変化は、視線の先の木々が揺れ始めた事だ。
「……へ?」
ジェロランさんの歌声と共に、ミシミシ、メキメキと言う音が周囲に鳴り響く。
木々の揺れがひと際大きくなると、地面の上にぶっとい根っこが現れ、それを足代わりにこちらへ向かって行進を始める。
思わず身を引いてしまったのは、木が歩くという、リエラにとってはあり得ない現象が起きた事と、その木が大人が三~四人は手をつないでやっと囲えるくらいの太さがあるせい。
そんな太い樹木が歩き出す姿は迫力満点だ。
それが、どんなひどい歌詞に操られているにしても。
歩き出した木々は、歌詞の通りに枝葉を切り(?)落としながら進んでくる。
よくよく根元を見ると、その動きは足の多い虫の動きにそっくりで、ちょっと気持ち悪い!
「~さぁ♪ ねっこをお~として♪ よ~こに~なれ~♪」
ジェロランさんの歌が終わると同時に、根元に斜めの切れ込みが入り、重い音を立てて木々が倒れていく。
木が一気に倒れていく振動がそれなりに離れているここまで伝わってきて、リエラの体がピョンピョン跳ねる。
周りを見回すと、いつの間にか歩く木から避難してきた人達に囲まれていて、リエラと同じように彼らも地面の上をピョンピョン。
それを見るまでは止まっていた思考回路が動きだして、リエラの口から笑い声が漏れ出す。
「はは……あはははは!」
「ははは! 効果は抜群だけど、歌詞がアホなのがいいだろ?!」
一度笑いだしてしまうとなんだか楽しさが増してきて、リエラは最後の木が倒れ終わるまでの間、振動に合わせてみんなとピョンピョン跳ねて遊んだ。
あー!! 面白かった!
……まだハチの塔から大分離れているというのに、すでに何匹かのハチがとまっている。
セリスさんに作ってもらった狐耳の軽装防具は、ハチに好かれる色なのかな?
ハチに刺されてしまうんじゃないかと青くなるリエラに、アメリーヌさんは周りの温度を下げてみるように提案してきた。
それでどうこうなるのかと思いつつ彼女の言う通りに自分の周りの温度を下げてみると、少しづつハチの動きが鈍くなっていって、最後に服をばたつかせただけでポトリと地面に落っこちる。
これでちょっぴり一安心だ。
「――えっと、死んじゃったんでしょうか?」
「寒くて動けなくなってるだけだから大丈夫」
成程、ハチは寒くなると動けなくなるのか。
一つ賢くなった!
って言うのは置いといて――。
自分の周囲をちょっぴり肌寒い程度の気温に保ちつつ、ハチが近づいてこられない程度の強さの風を自分達の周りに巡らせてから、アメリーヌさんの作業を見学させてもらう。
勿論、彼女の邪魔にならない程度の距離を保たないといけないんだけど。
この状態で巣になっている木箱に近づくと、中のハチも凍えちゃうし。
「――こんな感じで一番上の木枠を外していくんですよ」
彼女はそう説明しながら、木箱だとリエラが思っていた枠を下の物と切り分ける。
アメリーヌさんがトントンと木枠を叩くたびに、ハチが下の方へと逃げていくのがちょっと面白い。
音と振動、どっちが嫌なんだろう?
どちらにしても、アレでハチが逃げていくならリエラも出来る……かもしれない。
彼女が切り離したばかりの木枠――巣枠と呼ぶらしい――を持ってきてくれて、それをじっくりと観察。
自分でも作れそうに見えるから、今度、素材回収所で試してみることにしよう。
上手に収穫できるかはまた別の話だけど。
アメリーヌさんを質問責めにして満足すると、改めて箱庭を案内してもらう。
養蜂の後は、果物を採っているところを見学したり、平原の畑をのぞいてみたりと結構な距離を歩いた気がする。
そして最後にやってきたのは、畑から少しだけ離れた場所にある木材の加工場。
この作業場には仕事柄か、細身な人が多い輝影族や光猫族には珍しく、体格が良い人が多いみたいだ。
「俺は普段はここで働いているんでさぁ」
ジェロランさんがそう言いながら手を振ると、作業をしている人達が手を止めて声を張り上げる。
「ジェロラン、そろそろいつものを頼むよ!」
「こっちの作業はもう片が付きそうだから急いでくれよ~!」
「いつもの美声、頼むぜ!」
「美声??」
「では、今からお聞かせしましょう……!」
あちこちから掛けられる声に手を上げて応えると、彼はスゥっと息を吸い込み大きく口を開く。
「あるけ~あるけ~♪ ずんずんすっすめ~♪ えだはをおっとし~てこうしんし~よう♪」
よく響き渡るその声は、確かに美声と言っていいものだ。
でも、歌詞がひどい……!
なんでこんなひどい歌がリクエストされるのかと不思議に思うよりも早く、彼の歌はその真価を見せる。
最初の変化は、視線の先の木々が揺れ始めた事だ。
「……へ?」
ジェロランさんの歌声と共に、ミシミシ、メキメキと言う音が周囲に鳴り響く。
木々の揺れがひと際大きくなると、地面の上にぶっとい根っこが現れ、それを足代わりにこちらへ向かって行進を始める。
思わず身を引いてしまったのは、木が歩くという、リエラにとってはあり得ない現象が起きた事と、その木が大人が三~四人は手をつないでやっと囲えるくらいの太さがあるせい。
そんな太い樹木が歩き出す姿は迫力満点だ。
それが、どんなひどい歌詞に操られているにしても。
歩き出した木々は、歌詞の通りに枝葉を切り(?)落としながら進んでくる。
よくよく根元を見ると、その動きは足の多い虫の動きにそっくりで、ちょっと気持ち悪い!
「~さぁ♪ ねっこをお~として♪ よ~こに~なれ~♪」
ジェロランさんの歌が終わると同時に、根元に斜めの切れ込みが入り、重い音を立てて木々が倒れていく。
木が一気に倒れていく振動がそれなりに離れているここまで伝わってきて、リエラの体がピョンピョン跳ねる。
周りを見回すと、いつの間にか歩く木から避難してきた人達に囲まれていて、リエラと同じように彼らも地面の上をピョンピョン。
それを見るまでは止まっていた思考回路が動きだして、リエラの口から笑い声が漏れ出す。
「はは……あはははは!」
「ははは! 効果は抜群だけど、歌詞がアホなのがいいだろ?!」
一度笑いだしてしまうとなんだか楽しさが増してきて、リエラは最後の木が倒れ終わるまでの間、振動に合わせてみんなとピョンピョン跳ねて遊んだ。
あー!! 面白かった!
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