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二年目 フレトゥムールの昔話
杭
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シャッシャ、シャッシャと部屋の中に木を削る音が響く。
今、私とアッシェは当座の武器を手に入れる為に、木を削って杭のようなものを作ってる。
背景音楽は子供たちのすすり泣きとか、なんだかシュール。
「アッシェ?」
「なんですー?」
「これ、本当に役に立つの?」
元は、イスかテーブルの脚だったに違いないその棒切れを削り終えたところで、ふと、気になって尋ねてみる。
結構大変なんだよ、この棒を削るの。
私の手元に出来上がった木の杭は結構がっつりととんがってるから、きっと良く刺さると思う。
何にって……、普通だったら、地面、だよね?
でも、なんだか嫌な予感がするんだよ。
なにせ、コレを作るように言ってきたのがアッシェだから。
「道具と言うのは、使って初めて役に立つものなのですよ?」
私の問いにアッシェがキョトンとした表情で首を傾げつつ口にしたのは、斜め方向にずれた返答。
――うん。
今のは、私が悪い。
今みたいな聞き方をしたんじゃ、アッシェが普通に返事なんかする訳がない。
そして、多分こういう誤魔化し方をしようとしたって事は、私がそうだったらいやだなって思ったのが正解って事。
それでも、こんな風に誤魔化されるのが嫌で私は問いを重ねた。
「ごめん、聞き方を間違えた。
これは何に――誰に対して、どういうシチュエーションで使うもの?」
「……そりゃあ、人攫いさんが扉を開けて入ってきた時にグサーってするのに決まってるです。」
――だよね。
分かってはいたけど、嫌な方向の予感が確定。
今度の訊ね方で誤魔化しきれないと思ったらしく、彼女は自分が作ったばかりの杭を左手に握り、それのお尻部分を右掌底で押し込むようにする動作までつけて見せてくれた。
――うん、分かりやすい。
分かりやすいけど、それ、私は出来る自信がないな……。
アッシェの真似をしてみたものの、なんだか彼女がやったみたいにはいかない。
なんというか、アッシェがやって見せてくれた時には、架空の誰かに突き刺さるのが見える様なきがしたんだよ。
でも、私がやってもそんなものは見えない。
なんか、アッシェがやるみたいにできない自分のどんくささがくやしい。
「コンちゃんは、やる必要ないですよ?!」
そんな私の様子に、アッシェは慌てた声を上げる。
私は何度かその動作を繰り返した後、手にした杭の手直しを行う。
とんがらせた方はいいとして、今のままじゃちょっと使い辛い。
なにせ、元は椅子かテーブルの脚だった部分を使ってるから、手のひらで押す部分のあたりにむかってすこーし細くなっていくんだよ。
これじゃ、やりそこなった時に回収しそこなっちゃうかも。
それにこれじゃあ、推す部分が細すぎて力が伝わり切らないよね。
「これじゃ、アッシェのやりたいようにするのは無理。
せめて手直しする、そっちも貸して。」
杭を作るのに使った代物の他にも転がってる材料を集めつつ、私は頭の中でどうやってコレをアッシェの希望する獲物に作り替えられるか頭をひねる。
なにせ、道具が小さなナイフしかないから手段も限られちゃうんだもの。
なんとかかんとか、こんな感じならイケそうだというやり方をひねり出す。
「コンちゃん……?」
「ん、平気。
私じゃアッシェみたいにできない。
せめて道具をなんとかする。」
戸惑いの声を上げるアッシェに力強く頷いて見せると、彼女はなんだか少しホッとした表情を浮かべた。
「どんな手段をつかっても、ちゃんと、コンちゃんと一緒に孤児院に戻れるようにがんばるです。」
「……ん。」
アッシェがなにやら物騒な決心を固める中、私は杭の改良に勤しんだ。
今、私とアッシェは当座の武器を手に入れる為に、木を削って杭のようなものを作ってる。
背景音楽は子供たちのすすり泣きとか、なんだかシュール。
「アッシェ?」
「なんですー?」
「これ、本当に役に立つの?」
元は、イスかテーブルの脚だったに違いないその棒切れを削り終えたところで、ふと、気になって尋ねてみる。
結構大変なんだよ、この棒を削るの。
私の手元に出来上がった木の杭は結構がっつりととんがってるから、きっと良く刺さると思う。
何にって……、普通だったら、地面、だよね?
でも、なんだか嫌な予感がするんだよ。
なにせ、コレを作るように言ってきたのがアッシェだから。
「道具と言うのは、使って初めて役に立つものなのですよ?」
私の問いにアッシェがキョトンとした表情で首を傾げつつ口にしたのは、斜め方向にずれた返答。
――うん。
今のは、私が悪い。
今みたいな聞き方をしたんじゃ、アッシェが普通に返事なんかする訳がない。
そして、多分こういう誤魔化し方をしようとしたって事は、私がそうだったらいやだなって思ったのが正解って事。
それでも、こんな風に誤魔化されるのが嫌で私は問いを重ねた。
「ごめん、聞き方を間違えた。
これは何に――誰に対して、どういうシチュエーションで使うもの?」
「……そりゃあ、人攫いさんが扉を開けて入ってきた時にグサーってするのに決まってるです。」
――だよね。
分かってはいたけど、嫌な方向の予感が確定。
今度の訊ね方で誤魔化しきれないと思ったらしく、彼女は自分が作ったばかりの杭を左手に握り、それのお尻部分を右掌底で押し込むようにする動作までつけて見せてくれた。
――うん、分かりやすい。
分かりやすいけど、それ、私は出来る自信がないな……。
アッシェの真似をしてみたものの、なんだか彼女がやったみたいにはいかない。
なんというか、アッシェがやって見せてくれた時には、架空の誰かに突き刺さるのが見える様なきがしたんだよ。
でも、私がやってもそんなものは見えない。
なんか、アッシェがやるみたいにできない自分のどんくささがくやしい。
「コンちゃんは、やる必要ないですよ?!」
そんな私の様子に、アッシェは慌てた声を上げる。
私は何度かその動作を繰り返した後、手にした杭の手直しを行う。
とんがらせた方はいいとして、今のままじゃちょっと使い辛い。
なにせ、元は椅子かテーブルの脚だった部分を使ってるから、手のひらで押す部分のあたりにむかってすこーし細くなっていくんだよ。
これじゃ、やりそこなった時に回収しそこなっちゃうかも。
それにこれじゃあ、推す部分が細すぎて力が伝わり切らないよね。
「これじゃ、アッシェのやりたいようにするのは無理。
せめて手直しする、そっちも貸して。」
杭を作るのに使った代物の他にも転がってる材料を集めつつ、私は頭の中でどうやってコレをアッシェの希望する獲物に作り替えられるか頭をひねる。
なにせ、道具が小さなナイフしかないから手段も限られちゃうんだもの。
なんとかかんとか、こんな感じならイケそうだというやり方をひねり出す。
「コンちゃん……?」
「ん、平気。
私じゃアッシェみたいにできない。
せめて道具をなんとかする。」
戸惑いの声を上げるアッシェに力強く頷いて見せると、彼女はなんだか少しホッとした表情を浮かべた。
「どんな手段をつかっても、ちゃんと、コンちゃんと一緒に孤児院に戻れるようにがんばるです。」
「……ん。」
アッシェがなにやら物騒な決心を固める中、私は杭の改良に勤しんだ。
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