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二年目 いざ、グラムナードへ!

制約

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 物入れから出てきた大小さまざまなクッションは、大きいのは人一人が埋もれてしまうくらいの大きさ。
座ってみたら、本当に文字通り半ば埋もれてちゃう。
そして、それがやたらと気持ちいい。
これに座るのに慣れちゃうと、なんだかヤバいかも。

 大きいクッションを全部で八つだすと、みんなの荷物を詰め込む場所が開いたけど、小さいクッションも取り敢えず出しておくことにした。
後で欲しくなった時に、荷物の下にあったりなんかしたら出すのが大変だもんね。
私がクッションを適当に並べている間に、ポッシェは他の人から荷物を受け取ってクッションが無くなった場所に次々に仕舞いこんでく。
お陰で、みんなあっという間に腰を落ち着ける事ができた。

「このクッションが座席替わりなのですね。
 なんだか、座り心地が面白いのです。」
「そうよね。
 私も最初はびっくりしたもの。」
「それに、座り心地がいいんですのね。」

 みんなが座ったところで、ソルさんが御者さんにお願いしたからもう馬車が動き出してるんだけど、驚いたことに体に感じる振動が極々わずか。
これって、クッション効果なのかな?

「時間まだ早いから、一眠りして大丈夫よ。」

 イリスさんが、引き取ってきた狐耳族の三つ子ちゃんにそう伝えると、眠そうな顔をしていた彼等はあっという間に夢の中へと旅立っていく。
ひときわ大きなクッションに三人並んで眠ってる姿は、まるでにゃんこの様で、思わず頬が緩んじゃう。

「可愛いのです……。」

 子供好きなアッシェは、もう表情が崩れっぱなし。
その辺は、イリスさんやソルさんも大差ないけど。
みんなデレッデレな表情になっててヤバイ。
むしろ、そうじゃないのはポッシェ位なもんだよ。
なにせ、子供たちが眠るのとほぼ同時に寝ちゃってるからね。


――幸せそうに口開けて寝ちゃって……。


 そんなポッシェを可愛いなぁと思いながら頬を緩めて眺めてたら、ニヤニヤしながらこっちを見てるアッシェと目が合った。
その隣には、訳知り顔で頷くエリザちゃん。
二人に生暖かい目で見守られてたのに気付いたとたん、ほっぺが急に熱くなる。


――恥ずかしすぎる!


 その後、暫くの間イリスさんも含む三人に散々からかわれたのは言うまでもない。
これって、どんな羞恥プレイ?!





 散々からかわれた後、あれやこれやと世間話をしているうちに魔法の話になった。
何がきっかけだったのかって、それは馬車の側面に大きく開いた場所に、イリスさんが魔法を使って水で薄い膜を作ってくれた事が発端。
水の膜って透明だから、外の景色も普通に見えるんだよ。
凄すぎる。
少し外側に膨らませた形にしてあるから、ちょっと景色が歪んでそうなんだけどあんまり気にならない。
外より暖かいだけでも、もう十分すぎる。

 なにはともあれ、そこからリエラちゃんって言う私達の先輩になる子の話になったんだよ。
彼女が、孤児院のシスター達に魔法を教えたらしいって話も聞いてたしね。
アッシェも私も興味津々。
そうしたら、なんとグラムナードの耳長族の人は全員が魔法を使う事が出来るんだって!
そこから、この道中で魔法を教えて貰うことは出来ないのかって話になるのは、ある意味当然の流れだと思う。

「そうねぇ……。
 教えてあげたい気持ちはあるんだけど、私達には制約があるから教えてあげることは出来ないのよ……。」
「制約?」

 今までの彼女の雰囲気から、当然のように教えて貰えるに違いないと思っていた私達は、その言葉に驚いた。
だって、その『制約』って言うのがなければ教えてもいいって話じゃない。
私達の問いに答えてくれたのは、それまで相槌を打ったり補足をしたりしてたソルさん。

「『制約』って言うのは、僕達グラムナードの民に掛けられた、ある種の呪いのようなものだよ。」

 なんだか、物騒な言葉が飛び出してきたもんだから、私達は言葉を失う。
だって、呪いってなんだか怖い。

「その『制約』は、グラムナードの地の外での魔法の習得方法を伝える事を禁じるってだけのモノなんだけどね。
 先代錬金術師様が、血族全員に掛けたものだよ。
 リエラ様は、グラムナードの民ではないからね。
 だから、孤児院の人達に教えることが出来たんだと思う。」
「あなた……。」

 ソルさんは何でもない事のように、その『制約』についての説明をしてくれた。
ただ、イリスさん的にはそれは何かの禁忌のようなものにあたるみたい。
青くなって、身を乗り出すと彼の言葉を遮ろうとその口元に手を伸ばす。
そんな彼女に対して、ソルさんは伸ばされてきた手を捕まえて、指先に口づけを落とすと肩を竦める。

「錬金術師様の下に弟子入りするのなら、その内分かる事だから問題ないでしょう。」
「でも……。」

 尚も、それ以上の言葉をソルさんが口にするのを諫めようとするのには取り合わずに、彼は言葉をつづけた。

「ちなみに、教えようとすることは問題なくできる。
 魔法を使うのにはまず、&%$を#ΘΔΦλ%事が&$になるんだよ。」
「あなた……!」

 青いを通り越して色を失って倒れそうになってる彼女の頭を撫でながら、ソルさんは片頬を歪める。

「どう?
 魔法を使う為の基礎について口にしてみたけど、理解は出来たかな?」

 訳が分からないながらも、私達は揃って首を横に振る。
だって、多分、肝心の部分だけがなんだか良く分からない言葉に置き換わったみたいな感じだったんだもん。
分かる訳がない。

「これが、猫神様が遣わした管理者、輝影の支配者が遺した『制約』。
 ただし先代の、だけど。」

 だから教えてあげられなくてごめんね、と言ってソルさんは優し気な笑みを浮かべた。


――とりあえず、管理者とか、輝影の支配者とかって一体何の話??
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