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二年目 いざ、グラムナードへ!
人の情けが身に染みる
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結局、これといったいい案が浮かばないまま、放課後になった。
孤児院では、結構大事に育てて貰えたと思ってるから普段はあまり気にしてないんだけど、こういう時に親が居たらな……なんて思ってしまう。
そもそも、親が居たらこういう話になってないかもしれないのはさておき、だ。
アルバイトをしに、アッシェと共に市場に向かう。
ポッシェは荷物運びの仕事をしに、港に行っちゃったから少し寂しい。
市場に着くと、いつものように特に混みあっている店を探す為にアッシェとはここでお別れ。
ここでのアルバイトは、混んでいるお店に売り子の売り込みをするところから始まる。
上手い具合に役に立ちそうだと思わせられれば、お手伝いを頼まれ、夕方の店じまいの時にお駄賃が貰えると言う訳。
今日は、あんまり時間を掛けずに果物を売っている屋台に潜り込んでお駄賃を貰う事に成功。
――今日は1000ミル。
お駄賃としては、相場通り。
王都から運ばれてきたというグーズベリーは、猫耳族や猫人族に人気の果物。
だから、捌けるも早かった。
「丁度いいタイミングで来てくれて助かったよ、コンカッセ。」
ちょこちょことアルバイトで使ってくれてるおばちゃんは、そう言ってニコニコと笑う。
私も、おばちゃんの力になれてちょっと嬉しい。
「もうすぐダメになりそうなリエラの実があるから、良かったら持って行きな。
入れ物は今度返してくれればいいから。」
そう言って渡してくれたのは、赤い実が詰まった小さな木箱。
漂ってくる甘酸っぱい香りが期待感をそそる。
よーく見てみると、確かに少し痛み気味。
だけど、今日中に食べれば何の問題もない。
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
――少し、夕飯が豪華になる。
ポッシェは食いしん坊だから、きっと喜ぶ。
それを想像してニヤニヤしてたら、おばちゃんに頭を撫でられた。
「そういや、あんたもそろそろ仕事を決めないといけない時期なんじゃないのかい?」
「ん。」
「あてはあるのかい?」
そう問われ、首を縦に振る。
「おや、残念。」
「残念?」
「あてがないようだったら、うちで専属の売り子をして欲しかったのに。」
おばちゃんの言葉に、思わず目が丸くなった。
なんだか、お世辞じゃなくて本気に見える。
「あんたは、愛想はちょっと足りないけど、計算間違えもないしね。
結構、頼りにしてたんだよ。」
なんだか、凄くうれしい。
「それで、あんたが働くのは一体どこなんだい?」
「……グラムナード。」
おばちゃんの質問に、一瞬だけ悩んで正直に答える。
「迷宮都市グラムナードかい?!」
「ん。」
「まさか、探索者になるんじゃ……。」
グラムナードと聞いて目を丸くしたおばちゃんは、一転して心配顔になる。
「多分、魔道具師?」
「魔道具師……!?
コンカッセは、魔法の才能があったのかい……!」
「ん。
魔法学園に進学も薦められてた。」
「大したもんだねぇ。」
「でも、お金がない。」
「ああ……そりゃそうか……。」
おばちゃんは表情がコロコロ変わるから、何を考えてるのか分かりやすい。
だから、魔法学園に入れなかった理由を聞いて慰めの言葉を探してるのもすぐに分かった。
「どの道、進学するつもりはなかったから平気。」
「そうかい……?」
「ん。」
私の返事に、それでも同情の籠った視線を向けていたおばちゃんが、ふと、何かに気付く。
「と言うか、それじゃあグラムナードまでの旅費も厳しいんじゃないかい?」
痛いところを突かれた。
思わずおばちゃんから視線を逸らす。
自分からお金がないって、白状しちゃったようなもんだ。
おばちゃんは腰に手をあてて、目を閉じながら何やら考え始めた。
――困った……。
どうしたものかと悩んでいるうちに、おばちゃんの考えがまとまったらしい。
背の低い私に合わせて中腰になると、目を覗き込むようにしながらおでこをつつく。
「そういう事なら、今日からちょっとお駄賃を奮発しようじゃないか。
あと、何日これるんだい?」
驚きのあまり、目をパチクリしている間におばちゃんは勝手に話を決めていってしまう。
私は同意を求められたときに頷くだけ。
最終的に私は、今月いっぱい毎日おばちゃんのところでアルバイトすることに決まった。
破格の日給五千ミルで。
これなら、ちょっと心許ないけどなんとかなるかもしれない。
明日から、おばちゃんに感謝しながら精いっぱい働くことにしよう!
孤児院では、結構大事に育てて貰えたと思ってるから普段はあまり気にしてないんだけど、こういう時に親が居たらな……なんて思ってしまう。
そもそも、親が居たらこういう話になってないかもしれないのはさておき、だ。
アルバイトをしに、アッシェと共に市場に向かう。
ポッシェは荷物運びの仕事をしに、港に行っちゃったから少し寂しい。
市場に着くと、いつものように特に混みあっている店を探す為にアッシェとはここでお別れ。
ここでのアルバイトは、混んでいるお店に売り子の売り込みをするところから始まる。
上手い具合に役に立ちそうだと思わせられれば、お手伝いを頼まれ、夕方の店じまいの時にお駄賃が貰えると言う訳。
今日は、あんまり時間を掛けずに果物を売っている屋台に潜り込んでお駄賃を貰う事に成功。
――今日は1000ミル。
お駄賃としては、相場通り。
王都から運ばれてきたというグーズベリーは、猫耳族や猫人族に人気の果物。
だから、捌けるも早かった。
「丁度いいタイミングで来てくれて助かったよ、コンカッセ。」
ちょこちょことアルバイトで使ってくれてるおばちゃんは、そう言ってニコニコと笑う。
私も、おばちゃんの力になれてちょっと嬉しい。
「もうすぐダメになりそうなリエラの実があるから、良かったら持って行きな。
入れ物は今度返してくれればいいから。」
そう言って渡してくれたのは、赤い実が詰まった小さな木箱。
漂ってくる甘酸っぱい香りが期待感をそそる。
よーく見てみると、確かに少し痛み気味。
だけど、今日中に食べれば何の問題もない。
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
――少し、夕飯が豪華になる。
ポッシェは食いしん坊だから、きっと喜ぶ。
それを想像してニヤニヤしてたら、おばちゃんに頭を撫でられた。
「そういや、あんたもそろそろ仕事を決めないといけない時期なんじゃないのかい?」
「ん。」
「あてはあるのかい?」
そう問われ、首を縦に振る。
「おや、残念。」
「残念?」
「あてがないようだったら、うちで専属の売り子をして欲しかったのに。」
おばちゃんの言葉に、思わず目が丸くなった。
なんだか、お世辞じゃなくて本気に見える。
「あんたは、愛想はちょっと足りないけど、計算間違えもないしね。
結構、頼りにしてたんだよ。」
なんだか、凄くうれしい。
「それで、あんたが働くのは一体どこなんだい?」
「……グラムナード。」
おばちゃんの質問に、一瞬だけ悩んで正直に答える。
「迷宮都市グラムナードかい?!」
「ん。」
「まさか、探索者になるんじゃ……。」
グラムナードと聞いて目を丸くしたおばちゃんは、一転して心配顔になる。
「多分、魔道具師?」
「魔道具師……!?
コンカッセは、魔法の才能があったのかい……!」
「ん。
魔法学園に進学も薦められてた。」
「大したもんだねぇ。」
「でも、お金がない。」
「ああ……そりゃそうか……。」
おばちゃんは表情がコロコロ変わるから、何を考えてるのか分かりやすい。
だから、魔法学園に入れなかった理由を聞いて慰めの言葉を探してるのもすぐに分かった。
「どの道、進学するつもりはなかったから平気。」
「そうかい……?」
「ん。」
私の返事に、それでも同情の籠った視線を向けていたおばちゃんが、ふと、何かに気付く。
「と言うか、それじゃあグラムナードまでの旅費も厳しいんじゃないかい?」
痛いところを突かれた。
思わずおばちゃんから視線を逸らす。
自分からお金がないって、白状しちゃったようなもんだ。
おばちゃんは腰に手をあてて、目を閉じながら何やら考え始めた。
――困った……。
どうしたものかと悩んでいるうちに、おばちゃんの考えがまとまったらしい。
背の低い私に合わせて中腰になると、目を覗き込むようにしながらおでこをつつく。
「そういう事なら、今日からちょっとお駄賃を奮発しようじゃないか。
あと、何日これるんだい?」
驚きのあまり、目をパチクリしている間におばちゃんは勝手に話を決めていってしまう。
私は同意を求められたときに頷くだけ。
最終的に私は、今月いっぱい毎日おばちゃんのところでアルバイトすることに決まった。
破格の日給五千ミルで。
これなら、ちょっと心許ないけどなんとかなるかもしれない。
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