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二年目 いざ、グラムナードへ!

先立つもの

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 クレール先生の説得の効果があったのか、私達がグラムナードへ行く事に対する許可はなんとか取ることが出来た。
ウザい先生だとばっかり思っていてごめんなさい。
――そう本人に正直に伝えたら、微妙な表情で苦笑していた。
でも、断っても断っても魔法学園を推され続けるのって、物凄く迷惑だったんだから仕方ない。

「なにはともあれ、クレール先生のお陰で何の憂いもなくグラムナードへ行けるのです。」
「あの状態じゃ、お兄さんと無関係だって言って探索者になったとしても大事になったかもしれないもんね。
 万が一、迷宮都市の方に向かったなんて院長先生の耳に入ったら、お兄さんに迷惑かかったかも。」
「ですー。
 こんな風に言うとアレですけど、おばーちゃんは過保護なのです。」

 ちなみに、院長様の心配症の原因は去年ウチの孤児院の子供が攫われた事件のせい。
あの時は王都の高官を名乗る人で、身分証が本物だったから信用して養子縁組の手続きを進めてたんだけど、その身分証――魔道具の指輪だった――は盗品。
アッシェがその人は偽者だと院長様に伝えたそうなんだけど、結局、何人もの子供が攫われちゃった。
ちなみに、私とアッシェも被害者の中に居たんだ。
なんとかかんとか、戻ってこれて良かった。
危うく、どっかのお屋敷で愛玩奴隷にでもされるところだったんだよ。
その事があったからこそ院長様は、私に適性があるって言われて怖くなったんじゃないかな。
私だけだったらともかく、あの時に一緒に攫われてたアッシェも対象に選ばれてた訳だし。
あの事件が無かったら、むしろ、喜んで送り出してくれたかも。

「――で、どうやって向かう?」

 二人のぼやき合いがひと段落したところで、そう問う。

「あー……どうするです?」
「どうしよっか?」
「卒業は来月の最初の蒼月の日。
 そこから、最後の白月の日までにグラムナードへ着かないといけない。」

 今が冬の満月の半ばだから、迷宮都市グラムナードにつかなきゃいけないのは一カ月半後まで。
ただし、今月いっぱいは学校がある。
実質の移動期間は最大で28日間。

「行き方は自由なのですよね?」
「んーと、お金があんまりかからなそうなのは……。
 来月の半ば位に来るっていうグラムナードの人に同行させてもらうって言うのだね。」
「でもそれは、『多分』来るって話だったのです。」
「枕詞が危険。
 来なかったらその時点で詰む。」
「そうだね。
 それじゃ、あっちから来る人達はあてにしちゃダメか。」
「ん。」

 でも、そうなると方法は限られてくる。

「歩いていくか、馬車で行くかって事になるですけど……。」
「歩いていくのはコンカッセがきついんじゃないかな?」


――う。
  否定できない。


「ですねー。
 それに、グラムナードは馬車で半月位はかかるです。
 そうを考えると、歩きだと日数が足りない気がするです……。
 どう考えてもアッシェ達だけで歩いてたら、どろぼーさんや人攫いさんが見逃してくれるはずがないです。」
「う。」
「確かに、ネズミがマタタビ背負って歩いてるようなもんだね。」
「間違いない。」

 確かに学校を卒業したての大人予備軍が三人きりで町の外をうろついたら、間違いなく餌食にされてしまう。
盗賊や人攫いに美味しくいただかれるのは嫌すぎ。

「そうなると、先立つものが必要なのです。」

 先立つもの。
それはお金。
駅馬車に一日乗せてもらうのに一万ミル。
それにご飯だって食べるし、野宿する訳にはいかないから寝泊まりする宿をとるのにまたお金がかかる。

 そして、私達孤児にはお金がない。
学校が終わった後にアルバイトはしているけど、昼過ぎから夕方まで働いたって1000ミル~2000ミル程度の稼げるかどうか。
その稼ぎは、独立資金として院長様が預かってくれてるけど、毎日仕事にありつけてる訳でもない。
私の貯金は、20万ミルあるかないかだったはず。
いや、ないな。
15万ミルあったらいい方かも。
確認してみたら、アッシェもポッシェも似たようなもんだった。

「半月で目的地に着くだけのお金を稼ぐのは……。」
「ちょっと、今やってるアルバイトじゃ厳しいですー!」
「ん。
 私も無理。」

 だって、月末まであと13日しかない。
単純計算で二万三千ミル~四万六千ミル稼げれば良い方。
せめて、あと10万ミル位は欲しいんだけど……。
困った。
どっかにいい儲け話ってないものか……。
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