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二年目 勧誘員現る
ケチンボ
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「取り敢えず、弟と、去年弟が採った弟子は問題なくその要件を満たしているし、四属性なら俺も扱える。」
ちょっと前提がおかしいんじゃないか、と私達三人の意見が一致したところでお兄さんがさらにあり得ない事を言い出した。
「でもお兄さん。
二属性を扱える人でさえ希少なんでしょ?
四属性扱えるなんて……」
言いかけたポッシェが黙ったのは、目の前で本人が魔法を使って見せたせい。
私も信じらんない。
だって、彼は小さな火の玉を出して見せたと思ったら、それをそのまま水の塊に変えて見せ、瞬きする間につむじ風で私達の頬を撫でて見せたのだ。
最後のおまけとばかりに、道端に落ちていた小石をアッシェに拾わせると、それをお花の形に変えて見せた。
「うわ……ぁ……。」
「すごいです~!」
「すごい。」
ありきたりな言葉だけど、私達は初めて見る魔法を前に目を輝かせながらそう呟く。
ついさっきまで疑ってたなんて事実は、遠いお空にポーイだ。
もう、来月には大人予備軍なんだから思慮深くしようと思ってたのに、そんな事はあっという間に頭の中からすっ飛んじゃってた。
だってね、魔法なんて、初めて見たんだよ?
あ、正確じゃなかった。
『こんな近くで見るのは』って言うのが枕詞につく。
なにはともあれ、それで興奮しない訳がない。
「こういう芸当の内の二つ位が出来るようになりそうな子を、弟子にしたいんだ。」
ちょっと得意げに片眉を上げると、お兄さんは楽し気に口の端を上げる。
「僕も、今のやってみたい!」
「アッシェもですー。」
私も二人に激しく同意。
コクコクと忙しく頭を上下してみせる。
……振りすぎて、ちょっと気持ち悪くなったのは内緒。
でも、結局「見てるうちに使えるようになる」なんて言う、参考にもならない事だけしか彼の口から出てこないうちに孤児院についてしまった。
私達のブーイングをものともせず、お駄賃を少しポッシェに握らせるとすぐにシスターとお話しに行ってしまった。だから、お駄賃はくれたけど魔法を教えてくれないお兄さんは滅茶苦茶ケチンボだ、と三人で集まって文句をいいあったのは悪くないと思う。
その直後の朝ご飯で、その評価はひっくり返る事になったんだけど。
「ふぉおおおおおおおおおおおおお!」
食堂に集まった子供達(私も含む)の口から喜びの声が出たのは、朝ご飯がいつになく豪華だったせい。
いつもなら、薄ーく切られたパン一切れにお豆のスープだけ。
孤児院は、領主様一家が直接取り仕切っている施設だけど、子供を育てるのにはお金がかかる。
ぶっちゃけ、お金は有限だって事。
それは領主様でもおんなじで、百人以上もの子供がいつでも満足できるだけの食事を用意することはできないらしい。
先代領主夫人だった院長様も同じ食事を摂ってるんだから、私達も文句を言う事は出来ないんだけど、やっぱりちょっとひもじい気持ちはある。
……毎日、三食きちんと食べれるだけでも有難いのは分かってるんだけど。
それなのに、今日はなんとパンが二切れもある挙句に、豆だけじゃなくて色とりどりの野菜の細切れと一緒に肉まで入ってる!
流石に肉って言っても細切れになったものがチラチラ見える程度だけど、それだってそうそうない事。
もう、本当に感動もの。
その材料を提供してくれたのが、ここまで案内してきたお兄さんだって言うんだから驚き。
ケチンボなんて言ってごめんなさい。
今日のご飯はとっても美味しかったです。
でも、お代わりのスープをお兄さんがよそってくれたのは、ちょっとあざといと思う。
ちょっと前提がおかしいんじゃないか、と私達三人の意見が一致したところでお兄さんがさらにあり得ない事を言い出した。
「でもお兄さん。
二属性を扱える人でさえ希少なんでしょ?
四属性扱えるなんて……」
言いかけたポッシェが黙ったのは、目の前で本人が魔法を使って見せたせい。
私も信じらんない。
だって、彼は小さな火の玉を出して見せたと思ったら、それをそのまま水の塊に変えて見せ、瞬きする間につむじ風で私達の頬を撫でて見せたのだ。
最後のおまけとばかりに、道端に落ちていた小石をアッシェに拾わせると、それをお花の形に変えて見せた。
「うわ……ぁ……。」
「すごいです~!」
「すごい。」
ありきたりな言葉だけど、私達は初めて見る魔法を前に目を輝かせながらそう呟く。
ついさっきまで疑ってたなんて事実は、遠いお空にポーイだ。
もう、来月には大人予備軍なんだから思慮深くしようと思ってたのに、そんな事はあっという間に頭の中からすっ飛んじゃってた。
だってね、魔法なんて、初めて見たんだよ?
あ、正確じゃなかった。
『こんな近くで見るのは』って言うのが枕詞につく。
なにはともあれ、それで興奮しない訳がない。
「こういう芸当の内の二つ位が出来るようになりそうな子を、弟子にしたいんだ。」
ちょっと得意げに片眉を上げると、お兄さんは楽し気に口の端を上げる。
「僕も、今のやってみたい!」
「アッシェもですー。」
私も二人に激しく同意。
コクコクと忙しく頭を上下してみせる。
……振りすぎて、ちょっと気持ち悪くなったのは内緒。
でも、結局「見てるうちに使えるようになる」なんて言う、参考にもならない事だけしか彼の口から出てこないうちに孤児院についてしまった。
私達のブーイングをものともせず、お駄賃を少しポッシェに握らせるとすぐにシスターとお話しに行ってしまった。だから、お駄賃はくれたけど魔法を教えてくれないお兄さんは滅茶苦茶ケチンボだ、と三人で集まって文句をいいあったのは悪くないと思う。
その直後の朝ご飯で、その評価はひっくり返る事になったんだけど。
「ふぉおおおおおおおおおおおおお!」
食堂に集まった子供達(私も含む)の口から喜びの声が出たのは、朝ご飯がいつになく豪華だったせい。
いつもなら、薄ーく切られたパン一切れにお豆のスープだけ。
孤児院は、領主様一家が直接取り仕切っている施設だけど、子供を育てるのにはお金がかかる。
ぶっちゃけ、お金は有限だって事。
それは領主様でもおんなじで、百人以上もの子供がいつでも満足できるだけの食事を用意することはできないらしい。
先代領主夫人だった院長様も同じ食事を摂ってるんだから、私達も文句を言う事は出来ないんだけど、やっぱりちょっとひもじい気持ちはある。
……毎日、三食きちんと食べれるだけでも有難いのは分かってるんだけど。
それなのに、今日はなんとパンが二切れもある挙句に、豆だけじゃなくて色とりどりの野菜の細切れと一緒に肉まで入ってる!
流石に肉って言っても細切れになったものがチラチラ見える程度だけど、それだってそうそうない事。
もう、本当に感動もの。
その材料を提供してくれたのが、ここまで案内してきたお兄さんだって言うんだから驚き。
ケチンボなんて言ってごめんなさい。
今日のご飯はとっても美味しかったです。
でも、お代わりのスープをお兄さんがよそってくれたのは、ちょっとあざといと思う。
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