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遠方からの訪問者
459日目 小さな違和感
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アッシェが倒れてから3日目。
お店の方は、ルナちゃんの手助けもあってなんとか魔法薬の作成を間に合わせている状態で、余裕は無い物のなんとかギリギリお客様への商品の提供を間に合わせる事が出来ている。
店仕舞いとほぼ同時にやってきたトーラスさんと一緒に、家路についた。
これは、私が1人で夜道を帰らなくていいようにという、彼なりの気遣いらしい。
家の前に差し掛かったところで、違和感を感じて足を止めた。
不安になってトーラスさんを見上げると、暫く耳を澄ませていた彼は満面の笑みを浮かべて私を抱き上げ家に向かって駆けだした。
家の庭までやってくれば、私にも違和感の原因が聞き取れた。
コンカッセが泣いてる。
悲しみの発露とは思えないソレは、アッシェの意識が戻った事を暗示していて、私はトーラスさんの腕の中から逃れようとじたばたともがく。
ひ弱な私が熊人に力で勝てる訳もなく、当然抜けだす事は叶わなくてそのまま連れていかれるしかなかったんだけど、でも、その時はただ一刻も早くアッシェの顔が見たかった。
トーラスさんに抱えられたまま、ドタドタと階段を駆け上がるとアッシェの部屋の扉が開いてポッシェが顔を出す。扉が空いた事によって、コンカッセの泣き声が大きくなる。
「おかえり~。アッシェ、お腹が空いたって。」
へにゃっと笑うと、彼は私達を通す為に横に避けてくれた。
中に入ると、アッシェはベッドの上に起き上がっており、泣きながら縋りつくコンカッセの背中を撫でながら「もう大丈夫ですぅ」「心配掛けてごめんですぅ」といつもの調子で謝っている。
コンカッセは、目からは涙、鼻からは鼻水と言う状態でわんわん泣きわめいていた。
その声も、段々と小さくなっていき、私達が見ている目の前でそのまま寝落ちてしまい、アッシェが困った様なホッとした様な表情を浮かべてこちらに視線を向け、一瞬の間をおいてから微かに目を細める。
「おはようですぅ~」
その表情が、なんだかアッシェっぽくなく感じて戸惑いながら、眠ってしまったコンカッセに意識を移す。彼女はずっと、アッシェの付いていて、不安で寝付けなくて、寝付いたと思ったら起きてしまってと言うのを繰り返してたみたいだから色々と限界だったんだろう。
コンカッセの体がずるずるとアッシェからずり落ちそうになると、ポッシェがそっと宝物を扱う様にやさしく抱き上げる。
「お部屋に寝かせてくるね。」
そう言って、部屋を出て行くポッシェを見送る。
今日は、良く寝られると良いね。
コンカッセ。
戸が閉まる音と共に、やっと私を抱えあげたままだったのを思い出したトーラスさんが床におろしてくれた。これでやっと、自分の足でアッシェの側に行ける。
「気分はどう?」
「う~ん……。色々、混乱中ですぅ~……」
困惑した表情を浮かべて首を傾げる姿は、倒れる前のままのアッシェに見える。
でも、やっぱりなにかが違う様に感じて、何が違うのかとその表情を窺う。
「どうしたです??」
キョトンと見返してから、「あ、涎でもついてるですか?」と言いながら口元を拭う仕草もいつも通りに見える。見えるんだけど……。
「ううん。お腹空いてるでしょ? 今、何か作って来るから待っててね。」
「はいですぅ~!」
どうしても拭えない違和感を感じるものの、気のせいかもしれないと思う事にして台所に向かう。
「トーラスさんも、一緒に如何ですか?」
「あー……。ミーシャが用意してるだろうからなぁ……。」
「じゃあ、今度のお休みの日にでもミーシャさんも一緒に食べにいらして下さい。」
「そりゃあ、ミーシャのヤツも喜ぶな。」
トーラスさんは私の言葉に相好を崩した。
「アッシェが意識を取り戻した事を、早く報告してやりたいからな。」
そう言いながら玄関を出ようとするトーラスさんの服の裾を、そっとつまんで呼び止める。
「ミーシャさんと一緒に『彼』も連れて来て下さい。」
「……いいのか?」
「はい。」
「分かった。じゃあ、また明日な!」
手を振りながら足取りも軽く去って行くその背中を見送ってから、閉じた扉に背中を預ける。
「やっぱり、仕方ないのかな……。」
小さく呟いて、目を閉じた。
さっきの彼女との対話を思い返してみると、違和感の正体が見えてきた気がした。
どれ位、『アッシェ』は生きているんだろう。
全てが無かった事になってるとは、思いたくない。
でも、『アッシェ』が居なくなってしまっているかもしれないと覚悟しておく方が、いいのかもしれなかった。ソレが杞憂であってくれる事を、そっと猫神様にお祈りした。
お店の方は、ルナちゃんの手助けもあってなんとか魔法薬の作成を間に合わせている状態で、余裕は無い物のなんとかギリギリお客様への商品の提供を間に合わせる事が出来ている。
店仕舞いとほぼ同時にやってきたトーラスさんと一緒に、家路についた。
これは、私が1人で夜道を帰らなくていいようにという、彼なりの気遣いらしい。
家の前に差し掛かったところで、違和感を感じて足を止めた。
不安になってトーラスさんを見上げると、暫く耳を澄ませていた彼は満面の笑みを浮かべて私を抱き上げ家に向かって駆けだした。
家の庭までやってくれば、私にも違和感の原因が聞き取れた。
コンカッセが泣いてる。
悲しみの発露とは思えないソレは、アッシェの意識が戻った事を暗示していて、私はトーラスさんの腕の中から逃れようとじたばたともがく。
ひ弱な私が熊人に力で勝てる訳もなく、当然抜けだす事は叶わなくてそのまま連れていかれるしかなかったんだけど、でも、その時はただ一刻も早くアッシェの顔が見たかった。
トーラスさんに抱えられたまま、ドタドタと階段を駆け上がるとアッシェの部屋の扉が開いてポッシェが顔を出す。扉が空いた事によって、コンカッセの泣き声が大きくなる。
「おかえり~。アッシェ、お腹が空いたって。」
へにゃっと笑うと、彼は私達を通す為に横に避けてくれた。
中に入ると、アッシェはベッドの上に起き上がっており、泣きながら縋りつくコンカッセの背中を撫でながら「もう大丈夫ですぅ」「心配掛けてごめんですぅ」といつもの調子で謝っている。
コンカッセは、目からは涙、鼻からは鼻水と言う状態でわんわん泣きわめいていた。
その声も、段々と小さくなっていき、私達が見ている目の前でそのまま寝落ちてしまい、アッシェが困った様なホッとした様な表情を浮かべてこちらに視線を向け、一瞬の間をおいてから微かに目を細める。
「おはようですぅ~」
その表情が、なんだかアッシェっぽくなく感じて戸惑いながら、眠ってしまったコンカッセに意識を移す。彼女はずっと、アッシェの付いていて、不安で寝付けなくて、寝付いたと思ったら起きてしまってと言うのを繰り返してたみたいだから色々と限界だったんだろう。
コンカッセの体がずるずるとアッシェからずり落ちそうになると、ポッシェがそっと宝物を扱う様にやさしく抱き上げる。
「お部屋に寝かせてくるね。」
そう言って、部屋を出て行くポッシェを見送る。
今日は、良く寝られると良いね。
コンカッセ。
戸が閉まる音と共に、やっと私を抱えあげたままだったのを思い出したトーラスさんが床におろしてくれた。これでやっと、自分の足でアッシェの側に行ける。
「気分はどう?」
「う~ん……。色々、混乱中ですぅ~……」
困惑した表情を浮かべて首を傾げる姿は、倒れる前のままのアッシェに見える。
でも、やっぱりなにかが違う様に感じて、何が違うのかとその表情を窺う。
「どうしたです??」
キョトンと見返してから、「あ、涎でもついてるですか?」と言いながら口元を拭う仕草もいつも通りに見える。見えるんだけど……。
「ううん。お腹空いてるでしょ? 今、何か作って来るから待っててね。」
「はいですぅ~!」
どうしても拭えない違和感を感じるものの、気のせいかもしれないと思う事にして台所に向かう。
「トーラスさんも、一緒に如何ですか?」
「あー……。ミーシャが用意してるだろうからなぁ……。」
「じゃあ、今度のお休みの日にでもミーシャさんも一緒に食べにいらして下さい。」
「そりゃあ、ミーシャのヤツも喜ぶな。」
トーラスさんは私の言葉に相好を崩した。
「アッシェが意識を取り戻した事を、早く報告してやりたいからな。」
そう言いながら玄関を出ようとするトーラスさんの服の裾を、そっとつまんで呼び止める。
「ミーシャさんと一緒に『彼』も連れて来て下さい。」
「……いいのか?」
「はい。」
「分かった。じゃあ、また明日な!」
手を振りながら足取りも軽く去って行くその背中を見送ってから、閉じた扉に背中を預ける。
「やっぱり、仕方ないのかな……。」
小さく呟いて、目を閉じた。
さっきの彼女との対話を思い返してみると、違和感の正体が見えてきた気がした。
どれ位、『アッシェ』は生きているんだろう。
全てが無かった事になってるとは、思いたくない。
でも、『アッシェ』が居なくなってしまっているかもしれないと覚悟しておく方が、いいのかもしれなかった。ソレが杞憂であってくれる事を、そっと猫神様にお祈りした。
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