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動き出す運命

★もう少し

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 ゲーム内でリリンと会う様になってから、もうすでに4年。
その間に大分、友人が増えた。
『地球』へ行く方法の模索はまったく進む気配がなく、停滞を続けてる。
せめて、このゲーム内でだけはもう色々とはっちゃける事にした。
ストレスをため込むのは良くないとイカ下足君からも教わった事だし。
一日3時間と決めているゲームの時間は、2時間をリリンと、1時間を他の友人達と過ごす事にしている。
その方が、更に彼女と居る時間が楽しめるからだ。
最初の1時間を彼女とすごして、次の1時間は友人と、最後にリリンとその日になにをして遊んだかを話して現実へ戻るのが一番良い。
友人達とは、主に狩りに行く事が多いが、プレイヤーイベント的な集まりに行く事もある。

 初めて連れて行かれたのは『巨乳を愛でる会』で、最初の内は驚きのあまり声も出なかった。
こう、そう言った事は心に秘めておくモノなのではないかと、大変衝撃的だったのだ。
今は楽しくはっちゃけている。
そこに連れて行ってくれた友人は、リリンとわたしが連れ立って歩いているのを見てピンと来たらしいのだが……なにか、彼がピンと来るような事をしていただろうかと今でも謎だ。

 もう一つ、良く参加しているのは『厨二病友の会』。
ここだと、私の住む世界の事を話しても、変な顔をされる事がないので気持ちが楽なのだ。
中には、私が話した内容を試してみた者もいて、「再現できなかった……!」と、悔しげにコメントして来る事もある。
『試してみるのか。』と少し面白く思いながら、あちらの世界でも可能なんじゃないかと思われる方法を提示して、実際に出来たという報告が返ってきた時は、なんとも嬉しい気分になるのが不思議だ。



 この4年の間に広がったこの世界には、あちこちに迷宮ができている。
最近お気に入りなのは毎日出現モンスターの変わる、『巡り月のダンジョン』。
ゲーム内での1日が変わる毎に、迷宮の形も変化するので割と人気のある狩り場でもある。
難度も高い為、稀にドロップするアイテムの質が良いのも人気の一因だ。

「それにしても、アスタールが居ると一気に狩りが楽になるな。」
「だねー! もう今日の狩りは終わりなの―?」
「うむ。後はリリンのところに戻ってイチャイチャしたら、もうログアウトする時間だ。」
「むむー。私の方がリアルでも若くて可愛いよぉ~?」
「よせよせ。敵わないから!」

 今日、一緒に狩りをしたメンバーには友人の友人だと言う女性が混じっていた。
苦笑混じりに友人が諌めてはいるが、聞く気配はない。
でもでもだってと、ゴネているのを他人事のように眺めながら暇を告げる。

「ランディ、次は女性に女性を連れてきたら、パーティは組まないからそのつもりでいて欲しい。」
「うええ。それは勘弁!」
「では、また。」
「えええええ~! あすたーるさぁーーーん!! また遊んでねー!!!」
「御免こうむる。」

 私はとっとと逃げ出した。
たまに、今日の娘のようなのが出てくるのだがなんとかならないものなのだろうか……。
リリン以外の女性になど、最初から用は無いのに。



 リリンにその話をしたら爆笑された。
どこが面白いのやらと、ムッとすると目の前にイチゴを差したフォークが差し出される。
ソファに隣り合わせで腰掛けた彼女が差し出すソレを、幼い子供の様にそれを口に入れて貰うと、我ながら単純な事に少し気分が良くなってしまった。
リリンの手の上で転がされている様な気がして仕方ないが……良い事にしておこうといつも思ってしまうのは、やはり色々と重症だ。

「アルは、モテるねぇ。」
「狩りの効率だけが目当てらしい。」
「アルって、女の子がいると途端に喋らなくなるから、クールな美系キャラに見えるんだよ。
本当は、口下手で表情筋が死んでるだけのちょっぴり可愛い残念キャラなのに。」
「私の評価が、随分と微妙じゃないかね? そんな事を言うなら、次から食材系アイテムは売りに出す事に……。」
「アルってばいじけないでよ。わたしとしては、残念キャラなところに弱いんだから。」
「む……。」

 そう言いながら、今度はお手製のクッキーを口元に差し出されるのを、大人しく受け入れる。

「でも、そろそろ周りの目が厳しくなってきてるんだよねぇ……。」
「周りの目?」
「あと、2年経たずに30だからねぇ。」

 私の方を向いているのに、私の向こうを透かして見るかのように遠い目をするリリンを思わず強く抱きしめる。

「もう少し。もう少しだけ、待って欲しい……。」

 返事の代わりに、背中に回された腕に力がこもった。
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