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初めての?共同作業
☆苦手だけど……
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ゲームが始まって、もうすぐ3カ月になる。
毎月、討伐系のイベントはあれこれやっているものの、わたしは戦闘があんまり好きじゃないので参加はしてなかった。
最初の1ヶ月目は、それこそ家を建てるのに夢中でそれどころじゃなかったのもあるけど。
前にイカ下足料理パーティをしたあたりから、急激にイカ下足君達と仲良くなったアルが、どういう訳か今回のイベントに限ってやたらとやる気になっているので今回は参加する事にしているんだけど……一体何が原因なんだろう?
「今回の討伐ドロップに、スキル付きのブローチがあるらしいのよ。アスタール君、それがお目当てらしいわ。」
そう教えてくれたのは、ウチの店にお弁当を買いに来てくれたハニーちゃん。
「ブローチ?」
スキル付きと言っても、アルがそんなものに興味を示すと思えなくって首を傾げてしまう。
ブローチ。ブローチかぁ……。
「アレだよね? 今回のも、フィールドにいるモンスを狩るやつだよね?」
「そうそう。討伐数を競うの。そろそろ特殊な感じのイベントも欲しいわね。」
「言えてる。……町防衛系みたいな?」
「そういうのでもいいから、もうちょっと何とかして欲しいわ。微妙な報償アイテムより、スリルが欲しい!」
わたしとしては、スリルよりも安定が欲しい。
そう思いはしたものの、取り敢えず話を合わせて頷いておいた。
最近、まりあちゃんやサイ君と一緒に、アルだけで狩りにも行くから私は狩りに出ていない。
なんというか、戦闘系は本当に苦手なんだよね……。
アル達が、狩ったモノを卸してくれるから、最近はもっぱら採集で食材を集めるだけで済んでるのもあって狩りイベントはまぁ、参加するだけになるかなと思ってる。
まぁなにはともあれ、アルと一緒に参加する事に意義があるのだ。
最近、あんまり一緒に居なくて寂しいから丁度良いと言う事にする。
そう。
そうなのだ。
最近、アルが『リリン』離れをしてきていて寂しくて仕方がない。
会えば、前と変わらぬ態度なんだけどたまに泣きたくなる。
本人の前では泣かないけどね……。
折角、楽しく過ごせるようになったのに、水を差すような真似はしたくないし。
さみしいけど。
他の人が要る状態でもパーティは組んだ状態になっているから、パーティチャットで話す事はできるけど、それでもやっぱり寂しい。
変な事を話すと、まりあちゃんに悪態をつかれちゃうし。
「狩りは、苦手だったのではないのかね?」
「苦手だけど……。」
1週間のイベントが始まって、混雑する狩り場で2人でせっせと獲物を狩る。
たまに、他のプレイヤーがとどめを刺しちゃったりとかのトラブルもあるものの、結構平和なものだ。
わたしは……アルの足を引っ張っている感じ。
アルは、詠唱時間の短い魔法を的確に相手の急所に当てながら討伐数を順調に増やしているんだけど、わたしの方の戦果は散々なものだ。
でも、そんな状態であっても彼はわたしを邪険にする訳じゃなく、苦手な行為を無理にやっているんじゃないかと心配してくれていて、それがまた申し訳ない……。
「ししょー、調子はどぉ~?」
「なかなか希望の品は出ないものだ。」
「まりあとサイちゃんの方に出たヤツ、みてみるぅ~?」
「うむ。是非見せて貰いたい。」
いつの間にか、まりあちゃんのアルへの呼称が『ししょー』に変わってた。
アルと狩りを始めて、魔法の使い方とかを色々教わりだしてから、ころっと態度が変わったらしい。
サイ君曰く、「調子がいい」んだそうだ。
ちなみに私も、何故か甘え口調の『お姉ちゃん』にランクアップした。
アルとの関係を加味してなのか、服をたまに作ってあげてるからなのかは微妙な感じだけど。
「寂しそうですね。」
「んー……。ちょっとだけ。」
アルとまりあちゃんが、仲良く何やらドロップ品を見せ合っているのを見ていたら、その間に少し狩りをしようとサイ君に誘われた。
なんだか時間が掛かりそうな様子なのを確認してから、その申し出を受ける事にする。
「じゃ、兄さん。リリンさんをお借りしますね。」
「……あまり遠くに行かないで貰えると有難い。」
「はい。了解です。」
サイ君とも、随分と仲が良くなっていて最近では「兄さん」呼びが定着しているし、ちょっと置いてけぼりになっている気分。
やっぱり、一緒に狩りに出るようにしようかなぁ……。
でも、新しい友達を作る邪魔にはなりたくないしなぁ……。
狩りだと、どうしても足手まといになってる感じがして仕方がないので、余計に悩んでしまう。
「サイ君。」
「どうしたんですか?」
「私もさ、一緒に狩りに行った方がいいかなぁ……?」
「兄さんもリリンさんと過ごせる時間が増えて喜ぶだろうし、歓迎しますよ。」
一緒にイベントモンスを叩きながら訊ねると、にこやかに歓迎の意を示された。
「めちゃくちゃ弱いんだけど、それでも?」
「慣れれば変わってきますから。」
そう言う彼は、元々はあんまり運動が得意じゃないらしい。
それでも、このゲーム内ではそこそこ強くなれたんだと言って笑う。
「そっか。」
「こっちで動けるからって調子に乗って、リアルの方でも最近ちょっと体を動かすようになったんですけど……。やる前よりも体力も付いてきたし、明らかに体の動きも良くなってきてるんです。だから、苦手だしできないって決めつけちゃうのはもったいないんだなって最近思うんですよ。」
「……そだねぇ……。」
サイ君と話していて、私も苦手だからって逃げてばっかりいないで、アルと一緒に狩りに出る様にするのも良いかなと思えてきた。
なにより、アルと居る時間が増えるのが良い。
後で相談してみようかな。
毎月、討伐系のイベントはあれこれやっているものの、わたしは戦闘があんまり好きじゃないので参加はしてなかった。
最初の1ヶ月目は、それこそ家を建てるのに夢中でそれどころじゃなかったのもあるけど。
前にイカ下足料理パーティをしたあたりから、急激にイカ下足君達と仲良くなったアルが、どういう訳か今回のイベントに限ってやたらとやる気になっているので今回は参加する事にしているんだけど……一体何が原因なんだろう?
「今回の討伐ドロップに、スキル付きのブローチがあるらしいのよ。アスタール君、それがお目当てらしいわ。」
そう教えてくれたのは、ウチの店にお弁当を買いに来てくれたハニーちゃん。
「ブローチ?」
スキル付きと言っても、アルがそんなものに興味を示すと思えなくって首を傾げてしまう。
ブローチ。ブローチかぁ……。
「アレだよね? 今回のも、フィールドにいるモンスを狩るやつだよね?」
「そうそう。討伐数を競うの。そろそろ特殊な感じのイベントも欲しいわね。」
「言えてる。……町防衛系みたいな?」
「そういうのでもいいから、もうちょっと何とかして欲しいわ。微妙な報償アイテムより、スリルが欲しい!」
わたしとしては、スリルよりも安定が欲しい。
そう思いはしたものの、取り敢えず話を合わせて頷いておいた。
最近、まりあちゃんやサイ君と一緒に、アルだけで狩りにも行くから私は狩りに出ていない。
なんというか、戦闘系は本当に苦手なんだよね……。
アル達が、狩ったモノを卸してくれるから、最近はもっぱら採集で食材を集めるだけで済んでるのもあって狩りイベントはまぁ、参加するだけになるかなと思ってる。
まぁなにはともあれ、アルと一緒に参加する事に意義があるのだ。
最近、あんまり一緒に居なくて寂しいから丁度良いと言う事にする。
そう。
そうなのだ。
最近、アルが『リリン』離れをしてきていて寂しくて仕方がない。
会えば、前と変わらぬ態度なんだけどたまに泣きたくなる。
本人の前では泣かないけどね……。
折角、楽しく過ごせるようになったのに、水を差すような真似はしたくないし。
さみしいけど。
他の人が要る状態でもパーティは組んだ状態になっているから、パーティチャットで話す事はできるけど、それでもやっぱり寂しい。
変な事を話すと、まりあちゃんに悪態をつかれちゃうし。
「狩りは、苦手だったのではないのかね?」
「苦手だけど……。」
1週間のイベントが始まって、混雑する狩り場で2人でせっせと獲物を狩る。
たまに、他のプレイヤーがとどめを刺しちゃったりとかのトラブルもあるものの、結構平和なものだ。
わたしは……アルの足を引っ張っている感じ。
アルは、詠唱時間の短い魔法を的確に相手の急所に当てながら討伐数を順調に増やしているんだけど、わたしの方の戦果は散々なものだ。
でも、そんな状態であっても彼はわたしを邪険にする訳じゃなく、苦手な行為を無理にやっているんじゃないかと心配してくれていて、それがまた申し訳ない……。
「ししょー、調子はどぉ~?」
「なかなか希望の品は出ないものだ。」
「まりあとサイちゃんの方に出たヤツ、みてみるぅ~?」
「うむ。是非見せて貰いたい。」
いつの間にか、まりあちゃんのアルへの呼称が『ししょー』に変わってた。
アルと狩りを始めて、魔法の使い方とかを色々教わりだしてから、ころっと態度が変わったらしい。
サイ君曰く、「調子がいい」んだそうだ。
ちなみに私も、何故か甘え口調の『お姉ちゃん』にランクアップした。
アルとの関係を加味してなのか、服をたまに作ってあげてるからなのかは微妙な感じだけど。
「寂しそうですね。」
「んー……。ちょっとだけ。」
アルとまりあちゃんが、仲良く何やらドロップ品を見せ合っているのを見ていたら、その間に少し狩りをしようとサイ君に誘われた。
なんだか時間が掛かりそうな様子なのを確認してから、その申し出を受ける事にする。
「じゃ、兄さん。リリンさんをお借りしますね。」
「……あまり遠くに行かないで貰えると有難い。」
「はい。了解です。」
サイ君とも、随分と仲が良くなっていて最近では「兄さん」呼びが定着しているし、ちょっと置いてけぼりになっている気分。
やっぱり、一緒に狩りに出るようにしようかなぁ……。
でも、新しい友達を作る邪魔にはなりたくないしなぁ……。
狩りだと、どうしても足手まといになってる感じがして仕方がないので、余計に悩んでしまう。
「サイ君。」
「どうしたんですか?」
「私もさ、一緒に狩りに行った方がいいかなぁ……?」
「兄さんもリリンさんと過ごせる時間が増えて喜ぶだろうし、歓迎しますよ。」
一緒にイベントモンスを叩きながら訊ねると、にこやかに歓迎の意を示された。
「めちゃくちゃ弱いんだけど、それでも?」
「慣れれば変わってきますから。」
そう言う彼は、元々はあんまり運動が得意じゃないらしい。
それでも、このゲーム内ではそこそこ強くなれたんだと言って笑う。
「そっか。」
「こっちで動けるからって調子に乗って、リアルの方でも最近ちょっと体を動かすようになったんですけど……。やる前よりも体力も付いてきたし、明らかに体の動きも良くなってきてるんです。だから、苦手だしできないって決めつけちゃうのはもったいないんだなって最近思うんですよ。」
「……そだねぇ……。」
サイ君と話していて、私も苦手だからって逃げてばっかりいないで、アルと一緒に狩りに出る様にするのも良いかなと思えてきた。
なにより、アルと居る時間が増えるのが良い。
後で相談してみようかな。
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