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初めての?共同作業
★差し出された手
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リリンが作ってくれたイカ下足料理は、バター焼きに、から揚げに、お好み焼き、ワタ煮に卵とじ。
どれも大変美味だった。
現実ではとても食べれる量ではなかったので、ゲームの世界は素晴らしいと思う。
そもそもが、彼女の作ったもので美味しくなかった物は無かったのだがそれは置いておく。
課金して入手したと言う『醤油』も『味噌』もなかなか興味深い。
『中農ソース』の複雑な甘みと酸味の混じり合った味わいは中々くせになる。
ゲーム内でスキルを使えば作れるらしいので作ってみよう。
ついでに、現実の方でも作れないか挑戦してみたい。
そんな、イカ下足料理祭りから、現実で1週間経った今日。
私のゲーム内の家には、イカ下足君を始めとする友人が集まってイカ料理パーティを行っている。
「イカ天も、塩辛も美味しいわぁ。」
「ホント。バター醤油で焼いたのも家で簡単に作れそうでいいわね。」
イカ下足君とハニーちゃんにも、彼女の料理は好評で私も鼻が高い。
「おじさんがイカ下足料理好きだからって、まりあは他のお料理も少しはたーべーたーいー!」
従妹のまりあの文句を聞きながら、サイは苦笑を洩らす。
「まぁ、そういうだろうと思って、他のも作ったからこっちもどうぞー!」
「おお~♪ 流石、お姉さま♪」
リリンが新たに持ってきた焼いたトウモロコシや、かき氷にまりあは歓声を上げる。
随分と現金なものだ。
ある程度料理を食べて満足すると、みんなで海辺で遊ぶことになった。
リリンが用意した水着にそれぞれが着替えると、目の前の海へと繰り出す。
彼女は比較的露出の少ないワンピース型の物に、パレオを着用している。
独り占めしたいと思うが、今日は皆と遊ぶ日だからと自分に言い聞かせて我慢する。
余り独占欲を表に出し過ぎて、呆れられたくは無い。
それはそうと、この海がまた不思議だ。
釣りをすると魔物が釣れるのにも拘らず、浅瀬を泳いでいる時に魔物が出る事は無い。
リリンに、「ゲームだから」と言われて無理矢理納得する事にしたが、やはり未だに腑に落ちない。
『びーちばれー』とかいう遊戯に興じているのを、イカ下足君と2人で彼が課金したと言う『びーる』を飲みながらぼんやりと眺める。
『びーる』というのは冷えている方がいいらしいので、私が魔法で作った氷で冷やして飲んだ。
微かに舌に残る苦味と、立ち上る泡が喉を通る時の感覚が堪らなく病みつきになる。
課金アイテムというのは、私も何とか手に入れられないものだろうか?
彼女に現実の中で金銭的な負担を掛けたくないので、コレが欲しいなどとは流石に言えない。
リリンは負けず嫌いらしい。
『びーちばれー』の様子を暫く見ていて、そう思う。
まりあも同じ位負けん気が強いようで、2人でムキになって張り合っているように見えた。
ハニーちゃんは程々に、サイはまりあに怒られながらも楽しんでいる。
「ここ、モンスターも出なくていいわぁ。」
「うむ。町から近い割に、あまり人も流れて来ないからのんびり出来るのだ。」
「まったりするのにはいいわなぁ。」
「うむ。」
『びーちばれー』の決着が付いたのか、こちらに手を振るリリンに手を振り返す。
「イカ下足君は、行かないのかね?」
水打ち際でばしゃばしゃと水の掛け合いを始める彼女達を眺めながら、ふと訊ねる。
「アスタール君は?」
「私が行っても邪魔になるだけだろう。」
特に何かを考えて口にした訳ではない。
私にとっては、ただ単純な事実だった。
大昔に祖父の作った小さな町では、楽しげに笑い合っている他の人間に私が話しかけると、それまで何を話していたのにしても、途端に少し取り繕った笑みにとってかわってしまう。
子供の頃に祖父の後継者として見出されてから、10年もそんな事を繰り返している内に、その輪の中に入る事は諦める事にした。
笑顔で締め出される位ならば、外から楽しげな様子を見ているだけでいい。
実際に、私の手を取ってその輪に入れようとする者はいない。
そんな状態になって既に20年近く経っていて、自分ではそれが普通の事だと思っていた。
……はずだった。
「んじゃ、僕と一緒にいこ。」
その言葉と共に、目の前に差し出された手が信じられずに、彼の顔とその手とを交互に見比べる。
「僕と、一緒にいこ。」
気が付いたら、私は彼に手をとられて波打ち際に連れていかれているところで。
「僕等も入れた欲しいわぁ~!」
イカ下足君がそう声をあげると、「おっそーい!」とまりあとリリンが応える。
彼等の水の掛け合いっこに混ざると、私は殆ど掛けられるばっかりになった。
私にとっては好都合だ。
一緒になって皆と遊べたのが、涙が出るほど嬉しかっただなんて、恥ずかしくてとても言えない。
どれも大変美味だった。
現実ではとても食べれる量ではなかったので、ゲームの世界は素晴らしいと思う。
そもそもが、彼女の作ったもので美味しくなかった物は無かったのだがそれは置いておく。
課金して入手したと言う『醤油』も『味噌』もなかなか興味深い。
『中農ソース』の複雑な甘みと酸味の混じり合った味わいは中々くせになる。
ゲーム内でスキルを使えば作れるらしいので作ってみよう。
ついでに、現実の方でも作れないか挑戦してみたい。
そんな、イカ下足料理祭りから、現実で1週間経った今日。
私のゲーム内の家には、イカ下足君を始めとする友人が集まってイカ料理パーティを行っている。
「イカ天も、塩辛も美味しいわぁ。」
「ホント。バター醤油で焼いたのも家で簡単に作れそうでいいわね。」
イカ下足君とハニーちゃんにも、彼女の料理は好評で私も鼻が高い。
「おじさんがイカ下足料理好きだからって、まりあは他のお料理も少しはたーべーたーいー!」
従妹のまりあの文句を聞きながら、サイは苦笑を洩らす。
「まぁ、そういうだろうと思って、他のも作ったからこっちもどうぞー!」
「おお~♪ 流石、お姉さま♪」
リリンが新たに持ってきた焼いたトウモロコシや、かき氷にまりあは歓声を上げる。
随分と現金なものだ。
ある程度料理を食べて満足すると、みんなで海辺で遊ぶことになった。
リリンが用意した水着にそれぞれが着替えると、目の前の海へと繰り出す。
彼女は比較的露出の少ないワンピース型の物に、パレオを着用している。
独り占めしたいと思うが、今日は皆と遊ぶ日だからと自分に言い聞かせて我慢する。
余り独占欲を表に出し過ぎて、呆れられたくは無い。
それはそうと、この海がまた不思議だ。
釣りをすると魔物が釣れるのにも拘らず、浅瀬を泳いでいる時に魔物が出る事は無い。
リリンに、「ゲームだから」と言われて無理矢理納得する事にしたが、やはり未だに腑に落ちない。
『びーちばれー』とかいう遊戯に興じているのを、イカ下足君と2人で彼が課金したと言う『びーる』を飲みながらぼんやりと眺める。
『びーる』というのは冷えている方がいいらしいので、私が魔法で作った氷で冷やして飲んだ。
微かに舌に残る苦味と、立ち上る泡が喉を通る時の感覚が堪らなく病みつきになる。
課金アイテムというのは、私も何とか手に入れられないものだろうか?
彼女に現実の中で金銭的な負担を掛けたくないので、コレが欲しいなどとは流石に言えない。
リリンは負けず嫌いらしい。
『びーちばれー』の様子を暫く見ていて、そう思う。
まりあも同じ位負けん気が強いようで、2人でムキになって張り合っているように見えた。
ハニーちゃんは程々に、サイはまりあに怒られながらも楽しんでいる。
「ここ、モンスターも出なくていいわぁ。」
「うむ。町から近い割に、あまり人も流れて来ないからのんびり出来るのだ。」
「まったりするのにはいいわなぁ。」
「うむ。」
『びーちばれー』の決着が付いたのか、こちらに手を振るリリンに手を振り返す。
「イカ下足君は、行かないのかね?」
水打ち際でばしゃばしゃと水の掛け合いを始める彼女達を眺めながら、ふと訊ねる。
「アスタール君は?」
「私が行っても邪魔になるだけだろう。」
特に何かを考えて口にした訳ではない。
私にとっては、ただ単純な事実だった。
大昔に祖父の作った小さな町では、楽しげに笑い合っている他の人間に私が話しかけると、それまで何を話していたのにしても、途端に少し取り繕った笑みにとってかわってしまう。
子供の頃に祖父の後継者として見出されてから、10年もそんな事を繰り返している内に、その輪の中に入る事は諦める事にした。
笑顔で締め出される位ならば、外から楽しげな様子を見ているだけでいい。
実際に、私の手を取ってその輪に入れようとする者はいない。
そんな状態になって既に20年近く経っていて、自分ではそれが普通の事だと思っていた。
……はずだった。
「んじゃ、僕と一緒にいこ。」
その言葉と共に、目の前に差し出された手が信じられずに、彼の顔とその手とを交互に見比べる。
「僕と、一緒にいこ。」
気が付いたら、私は彼に手をとられて波打ち際に連れていかれているところで。
「僕等も入れた欲しいわぁ~!」
イカ下足君がそう声をあげると、「おっそーい!」とまりあとリリンが応える。
彼等の水の掛け合いっこに混ざると、私は殆ど掛けられるばっかりになった。
私にとっては好都合だ。
一緒になって皆と遊べたのが、涙が出るほど嬉しかっただなんて、恥ずかしくてとても言えない。
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