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大陸へ -第四夜~

★船出の準備 上

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 島を脱出する為のクエストは、材料調達系のものだった。

「『麻』を400本に、『丸太』400本、『ロープ』80本かぁ……。」
「人数増えたら必要数が増えたわ!!」
「あ~……。一人頭幾つってクエなんだわなぁ。」

 クエストに必要なアイテムの数に、リリンだけでなく、ハニーちゃんやイカ下足君もげんなりした表情を浮かべる。

「こうしていても仕方あるまい。」
「んじゃ、手分けして始めるとしようか!」

 私が促すと、ハニーちゃんが大きく頷いて仕事の割り振りを始めた。

「『丸太』はイカ君が集められるよね?」
「うんうん。僕はそれやるわ。」
「そうなると、『麻』はわたしかな。糸関連の探索だよね。」
「おお! リリンちゃん頼りになる~♪ ハニーは、鉱石系しか拾えないのよ。」

 彼女の言葉にそう答えながら嬉しそうに手を叩くハニーちゃんを見て、はたと気が付く。
『丸太』は集められない。(集められたとしてもイカ下足君と2人きりじゃ嬉しくない。)
『麻』も集められない。(スキルをとっていればリリンと居られた?!)
と、言う事はだ。
心中秘かにショックをうける私の肘を、ハニーちゃんがそっと掴んだ。

「じゃ、どっちも拾えない私達は、ロープバイパー退治に勤しみましょうか。」
「アル、頑張って♪」
「アスタール君、ハニーちゃんを頼むわ。」

 ハニーちゃんのみならず、リリン達にまでこう言われては私に『否』と言う事は出来なかった。
諦めて、腕を引かれるままにロープバイパーの狩りに勤しむ事にしよう。

「アスタール君、頑張れば早くリリンちゃんのところに戻れるからね。」
「うむ……。」


成程。
早く終わらせて、彼女の元に戻る事にしよう。


 私は気を取り直すと、ロープバイパーが出ると言う森へと、ハニーちゃんに腕を引かれながら歩き出した。





「エア・バレット。エア・バレット。エア・バレット。」

 魔法を使うのに、一々魔法の名称を言わなくてはいけないのが地味に面倒臭いな、と思う。
このヘビは、1LVで覚えられる魔法では3回は同じ場所に当てないと倒せないのだ。
私の住んでいる世界でなら、連続して使う場合でも完全な無詠唱も可能なのに、不便な事だと思う。
ロープバイパーと言うのは、木の幹に絡みつくツタに擬態するモンスターだった。
森の中には普通のツタもあるのだが、ロープバイパーの場合は少し茶色っぽいのでそのかすかな色の違いを見分けて先制攻撃を仕掛けるのが効率的な様だ。
この色の違いに気づけずに通り過ぎると、後ろから絡みつかれて首を絞められるらしく、それで死に戻ったと言うハニーちゃんに最初に注意をされた。
ハニーちゃんは、片手剣の2刀流で悪くない腕前の様には見えるものの、擬態を見破るのは不得手らしい。

「アスタール君、凄いねぇ!」
「いや……。」
「魔法で、同じ場所に命中させるのって結構難しいのに。」

 ハニーちゃんはそう言いながら、私が頭を落としたロープバイパーをいそいそと拾うと、クエスト用の袋の中にしまい込んでいく。
このモンスターは、クエストを請けている時にだけ出る特殊モンスターらしい。
その為、倒した時に落ちるドロップアイテムはロープバイパーの死体だけだ。
この死体をそのままロープとして使うようで、クエスト用に支給された袋に入れるとアイテム名が『ロープ』に変化する。ただ、このロープバイパーと言うのは、なかなかの曲者だった。

「それにしても、倒し方によってアイテムが認識されないとか、ホント困っちゃうわよね。」
「うむ。中々に意地が悪い。」

 最初の方でその事に気が付かずに胴半ばで二つにしてしまったのだが、それはクエスト用の袋に入れる事も出来ずに消失してしまったのだ。
どうやら、出来る限り頭に近い部分だけを切り落とさないといけないと言う事に気づくまでに、3匹のヘビが無駄になった。

「後どれくらいかね?」
「丁度半分ね。」

 倒し方を失敗すると消失する上に、ポップする数の少ないらしいヘビをまだ、後40匹狩らなくてはいけないのかと、ハニーちゃんと顔を見合わせると、ほぼ同時にため息が漏れた。
早く終わらせて、リリンのところに戻りたいのに。
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