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廊下の床張りと革のベスト

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 アイラの案を実行してみると、思った以上に効果がある。
暖かい空気って、普通なら上に上っていくものだと思ってたんだけど、どうやらそれは地球の常識。浮遊諸島の世界では、熱は足元に溜まっていくらしい。

「異世界だから仕方ないわね」

 アイラはそう言って済ませてたけど、そう言うもんなのかな?
まあ、気にしても仕方ないか。

 キッチンと居間の境目に作ったのは、アルミのフレームに藁製のゴザ的なものを張ったもので作ったスイングドア的なもの。
西部劇の酒場のドアみたいに、中からも外からも同じ用に開け締めできるやつを想像して欲しい。
軽く体で押せば開くから、キッチンと居間の行き来に不便さを感じないのが素晴らしい。ああ、でもトイレに行く時にはちょっと微妙かも。
居間と寝室を土足禁止状態にしたからには、早めにトイレまでの通路も同じ状態にしないとね。

 と、言うわけで。
アイラがお昼寝している間に、ちょっぴり床貼りをやってしまおうと思う。ちなみに。床に貼るタイルにそれほど細かいのは必要ないから、床の高さが揃うように大きめのものを複数貼る形にするつもり。五十センチ角だと分かりやすくていいかも。
方針を決めたら、早速作業開始です。
錬金釜でグルグルやって床用のタイルを作ったら、早速床張りを始めよう!

 床張りをはじめる前に、まずはトイレに向かうための廊下を繋ぐ扉を外す。ちょっと面倒な作業だけど、これは必須だ。作業のときにつけ直さないと、扉が開かなくなっちゃうからね。
少し悩んで、お風呂の脱衣所の扉を外して洗面所を”データストレージ”にしまい込む。ついでだから、こっちもやってしまおう。
扉関係の資材は食器棚の辺りで保管して、作業を開始。脱衣所から始めて、その次にキッチンの横にという順番にしたのは、何となく後回しにしてしまいそうな方を優先した方がいいと思ったから。
モルタルを塗っては”データストレージ”からタイルを出し、タイルの重みではみ出したものをワラで拭うと言う作業をひたすら続けているうちに、アイラも起き出してきた。

「あたしもちょっと織物に熱中するから、お夕飯は終わってからでいいわ」

 と言うお言葉をいただいたので、ありがたく甘えさせてもらって作業を続ける。単調な作業だけど、なんだか一周回って楽しくなってきた。
うっひょーい!
と頭の中で叫びつつ、作業が終わってみたらいつの間にやら夜の九時……!
夕飯が遅くなってもいいって言われたからって、これはいくらなんでも酷すぎる!!

「……アイラ~?」

 ご飯が遅いと怒られるのを覚悟しつつ、声をかける。
だってこれって、私なら激オコですよ?
ガクガクブルブルしながら居間を覗くと、アイラは見たことのないベストを着て、上機嫌で笑顔を向けてきた。

「床貼り終わったの?」
「うん。終わったけど……」
「じゃあ、あたしが床のモルタルを乾かしてくる間に、これの試着しといて」

 彼女はそう言いながら、自分が来ているのとよく似たベストを渡してくる。

「遅くなったけど、防寒用の毛皮のベストね」
「……! ありがとう!!」

 めっちゃ嬉しい!
念願の防寒具だっていうのもそうだけど、アイラの手作りだということが、何よりも嬉しい。ニマニマしながら、早速袖を通してみる。ベストだから、袖はないだろうっていうツッコミは受け付けません。
サイズ的にはちょっと大きめだけど、邪魔になるほどでもなく動きやすい。それに、内側に毛皮が来るように作られているから、胴体部分が温かいのがいいかんじ。

「床張りをしても、魔法を掛けて歩くだけですぐに使えるって、便利よねー」

 ニヤニヤしながらためすがめつしていたら、そう言いながらアイラが戻ってきた。なんか、私の表情で感想を察したみたい。

「気に入ってくれたみたいで良かったわ」

 と言って、嬉しそうに微笑んだ。すごく嬉しいことを言葉を尽くして伝えると、ちょっとくすぐったそうな顔で視線を逸らす。
え、何この可愛い反応。もっと言っていい??
その評定が可愛すぎて大げさに言い過ぎたのか、最後にはテシテシと叩かれてしまったけど、私的には大満足。
アイラの珍しい表情、ゲットした~!

 時間が遅くなりすぎたので、結局その日の夕飯は簡単にスパゲティナポリタンで済ませて早々に眠ることになった。
と言っても、ベッドに入ってすぐに寝たわけじゃなく、二人してお喋りをしながらそれぞれに作業をしてたらしい。私は”鉱物魔法”レベル上げをしてたし、アイラはアイラで”ファーム”のレベルを上げるために苗を作ってたみたいだ。
翌朝起きたときに、床いっぱいに苗が落ちててビックリしたのは、後で思い返すと少し笑える事件です。
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