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植物合成 第二弾

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 お夕飯を食べ終わると、ニコニコ笑顔のアイラがテーブルの上に種と苗を並べてみせる。

「えう?」
「合成実験、お・ね・が・い♡」

 上目遣いに猫なで声を出され、思わず苦笑。別におねだりなんてされなくても断ったりしないんだから、普通に言えばいいのに。
目の前に置かれた種を順繰りに、用意された土鍋に入れて確認していく。
ルッコラは、暖気草に氷室草とは合成できそう。確か、小松菜とかの菜っ葉系にそう言うのが多かったよね?
白菜とか、春菊とか……
となると、小松菜とかの葉野菜系は暖気草や氷室草との相性がいいのかも。暖気草とかの種があれば”合成”できるのに残念至極。
まあ、暖気草や氷室草の種が手に入ったら、”合成”する量が多すぎて泣く未来が見える。私はまだしも、アイラの体力が危険かなぁ。

「アイラ、トマトも見てみたい」
「そう? なら、用意するわね」

 アイラにお願いすると、目の前に苗が差し出された。トマトって、種はないのか。ジュルジュルした部分に、それっぽいのが混じってた記憶はあるんだけど……
まあ、『残念なイメージ』と言う形での確認はできるから、苗でも問題ない。
雪原草はダメ。オニオンフラワーともダメ。暖気草は……全然ダメ。あ、塩蔦はいい感じだけど、ポテ蔓はダメっぽい。
全部終わったところで、ウズウズしながら待ち構えているアイラと視線を合わせる。

「どうだった??」
「結構イケそう。出来るのから説明していくね」

 どうやらアイラは、ある程度の予測を立ててから種や苗を用意したらしい。
発表方法は、テーブルの上に現地植物を並べつつ、その前に地球の植物を並べながら行います。

「まず、雪原草とポテ蔓には該当なし」
「雪原草は予想通りね」

 雪原草って、元々がこのままでも有用植物。なので、特に加工しなくってもいいと思うのであまり残念感はないよね。アイラは特に、雪原草と掛け合わせることは考えてなかった様子で頷いてる。

「お次は、ポテ蔓はダメだったのに、塩蔦とはイケるトマトさん」
「――塩トマトって、葉っぱが塩蔦のままでトマトの実が生るようになったんですって」
「それは重畳。ケチャップ作るのにも必要になるから、是非とも量産お願いします」

 トマトって、何気なく調味料とかにもたくさん使われてるんだよね。デミグラスソースもそうだし、中濃ソースさんにも入ってる。
ミートソーススパゲッティも食べたいなぁ……
ああ、よだれ。

「次に、暖気草と氷室草にはこの二つ」
「ルッコラと――大根もイケるの?」
「あ、こっちは大根なんだ」

 菜っ葉系っていう予測は外れかな?
まあいいや。なにはともあれ、今は試せない……もとい大事な食材なので次の収穫があるまで保留にしてほしい。

「大根なら一本なかった?」
「うう……。明日こそはスービットと一緒に煮込みたい!」
「却下。明日も採れるわ」
「なら、”合成”させていただきます」

 明日も採れるなら問題ないね!
なんだかヒンヤリしそうな氷室草よりも、暖かくなりそうな暖気草と合成することに満場一致で決定。

「最後はオニオンフラワーなんですが……。アイラさん、コレ、狙った? 九個預かった内の五個が”合成”可能です」
「狙ったのはレイちゃんの洗脳の方ね。でも、元々出来たにしろ作戦が成功したにしろ、結果が出たなら全て良し!!」
「え、なんか怖い単語出てきた!?」
「気のせいよ」

 えええ……? 絶対言ったよね、洗脳って……
内心慄きつつ、種を並べる。

「綿花・レタス・ブロッコリー・カリフラワー・キャベツ……。うん、想定通り!」

 想定通りって、洗脳成功的な?
そう言えば、食事中にやたらとレタスやキャベツが見方によっては花みたいに見えるとか何とか……イヤイヤ、マサカ。
綿花がオニオンフラワーに似てるとも言ってたような……?

「じゃあ、早速これでお願い」
「……はい。仰せのままに」

 なんか釈然としない気持ちはあるけど、要はある種の思考誘導だよね?
それが上手く機能して、出来なかったかもしれない合成が出来るようになってるならいいことにしてしまおう。
という方向に考えを切り替えて、”合成”作業を進めてく。



 合成できるものを全てかけ合わせた結果はコチラ。

・塩トマト      トマトの実が生るようになった、塩蔦
・コットンフラワー  綿の花が咲くようになった、元オニオンフラワー
・レタスフラワー   レタスの花が咲くようになった、元オニオンフラワー
・キャベツフラワー  キャベツの花が咲くようになった、元オニオンフラワー
・ブロックフラワー  ブロッコリーが咲くようになった、元オニオンフラワー
・カリ・フラワー   カリフラワーが咲くようになった、元オニオンフラワー
・暖根        暖気草の根が食べられるようになりました。
           料理に使うと、体ポカポカ温まります。

 どれも現地に適応したらしく、自然繁殖まで出来るようになったらしい。
アイラは小躍りしながら、早速、暖根以外を植えるために畑に向かった。
暖根?
暖根は、もう作物状態なので、私の管轄です。
なにせ種を採ることも出来ないらしいので、食べるくらいしか使い道がない。
せめて美味しく料理させていただこうと思います。
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