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長い夜
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「そう言えば、外が大分暗くなってるじゃない?」
久しぶりのお茶を堪能していると、アイラが少し表情を引き締めてそんなことを言い出す。実際、昨日よりも暗くなっていたからライトがないと視界が厳しかった。
外出していた時のことを思い返しつつ、同意の言葉を口にする。
「だねー。明日には真っ暗だと思う」
「さっき少し”検索”してみたんだけど、この世界ってどの島も二十四日周期で太陽の周りを回ってるんだって」
言われて想像。確か、”検索”さんから貰ったイメージだと、太陽モドキ(正式名称は知らない)が真ん中にあって、その周りを浮島が回ってるんだよね。太陽モドキに近いほど浮島のサイズが大きくて、遠のくと小さくなる。
大きい島と小さい島だと、運行する距離に比べ物にならないくらいの差があると思うんだけど……
「……ってことは、ウチの島って、大きな島よりも移動速度が早い感じ?」
「そうなるわね」
「その割に、風はひどくないなぁ……」
今日、遠出した時も吹いていたのはそよ風程度。強風が吹くことはなかった。あまりにも風がひどいと足元も滑って危ないから、ありがたかった。
やっぱり、島について”検索”した時に見た、見えないドームが原因かな?
アレだ。地球で言うところの、大気圏みたいなやつがあるに違いない。謎は全て解けた! ……嘘だけど。
「風よりも、夜が十二日間も続くって方が問題なんだけど……」
「……二人共”ライト”が使えるよね?」
暗いことには、あまり支障を感じない。そもそも、拠点内も”ライト”で照らさないとなーんにも見えないんだもの。
でも、私の答えは不正解だったみたいで、アイラは首を振ってため息を吐いた。
「問題は、夜の間は獣が子育て期に入るってこと」
「子育て……?」
「要は、夜の方が攻撃的になるってことよ」
「それは、一人での外出は避けないとダメだね」
アイラが怪我をしたら大変だ。
「あと、多分、次に雪原草が採れるのは昼になってからね」
「マジで?」
「マジです」
「”エリアライト”で照らしても?」
「収穫期が終わっちゃったんだもの」
雪原草が取れなくなるとは思わなかったから、結構ショック。だって、何気なく土やライスウッドと同じ万能資材なんだよ。
十二日も採れないなんて、心細すぎる。
「備蓄的にはどんなかんじ?」
「脱穀したら5kgにはなると思うわ」
製粉までしたら目減りはするだろうけど、今日拾ってきた花粉米も含めれば六十食分はあったはず。もちろん、私が食べる量を勘案した上での計算だからアイラだけだったらもっとイケる。
お肉類も、アイラが狩りすぎたフェット肉が大量にあるし、野菜は収穫間近。
「……うん。朝が来るまでは、拠点内の整備に勤しもうか」
「食べ物は平気そう?」
「今日、花粉米も沢山拾ったし、乾麺の類も作ってあるから余裕はあるよ。安心して大丈夫」
私がそう請け合うと、アイラはホッとしたように頬を緩めた。
ホッとしたところで、拠点に籠もっている間にやりたいことを話し合う。
「あたしは、ライスウッドを見てからじゃないと決め辛いわ」
と言うので、とりあえず廊下に一本出してみると、アイラはしばらくあーでもないこーでもないと呟いた後に、喜びに満ちた表情で、お籠り中にやりたいことをまくし立て始めた。
話をまとめてみると、まずは”裁縫”スキルで糸の素材をとってから、”木工”や”細工”で使えるように加工して色々作るらしい。やたらと熱心に語る姿に、暇つぶし用に林間学校では到底必要なさそうな道具を持ち込むくらいに手仕事が好きなんだっけと思い出す。
なんか、魔力を伸ばすのに必死になってる姿に隠れていて気付かなかったけど……
手仕事で体力が減っていくのも、アイラ的には結構なプレッシャーだったかも。
気晴らししようにも、手芸関係は全部スキルになってるから体力を使う。”ファーム”スキルを優先的に使って食料を確保しなきゃいけない状況で、気晴らしも出来ないなんて辛すぎる。
私の場合は料理を作って、食べるのが一番の発散方法。お陰で何のストレスもなく過ごせていたから、ちょっと申し訳ない。むしろ、アイラがずっと近くにいたから、ソレが嬉しくて不満なんてなかったような……
いや、あったわ。アイラが二回もぶっ倒れてくれたのは、不満だった。まあ、ソレ以外は心配することはあっても不満はなかったんだけどね。
アイラに請われるままにライスウッドの切り分けを手伝う。スキルの効果なのか、彼女がノコギリで切り分けていくと、ライスウッドが引き締まって艶を増す。こころなし、真っ直ぐになったようにもみえる。
作業の手伝いをしながら考えるのは、自分の予定だ。
とりあえず、食料庫が欲しい。ちょっと、”データストレージ”の容量が不安です。
拠点の中は”ホット”を掛けなければ基本的に気温は低いし、湿度も高くない。天然の冷蔵庫で生活しているようなものだし、少し加工するだけでも結構な日数、保存ができるだろうと思う。
問題は、場所。
”地図”を確認してみると、キッチンの奥にそこそこの広さを確保できそう。かわりに、せっかく作った食器棚を作り直さないといけないか。
なにはともあれ、十二日間。今度はのんびりと拠点拡張に勤しむことにしよう。
久しぶりのお茶を堪能していると、アイラが少し表情を引き締めてそんなことを言い出す。実際、昨日よりも暗くなっていたからライトがないと視界が厳しかった。
外出していた時のことを思い返しつつ、同意の言葉を口にする。
「だねー。明日には真っ暗だと思う」
「さっき少し”検索”してみたんだけど、この世界ってどの島も二十四日周期で太陽の周りを回ってるんだって」
言われて想像。確か、”検索”さんから貰ったイメージだと、太陽モドキ(正式名称は知らない)が真ん中にあって、その周りを浮島が回ってるんだよね。太陽モドキに近いほど浮島のサイズが大きくて、遠のくと小さくなる。
大きい島と小さい島だと、運行する距離に比べ物にならないくらいの差があると思うんだけど……
「……ってことは、ウチの島って、大きな島よりも移動速度が早い感じ?」
「そうなるわね」
「その割に、風はひどくないなぁ……」
今日、遠出した時も吹いていたのはそよ風程度。強風が吹くことはなかった。あまりにも風がひどいと足元も滑って危ないから、ありがたかった。
やっぱり、島について”検索”した時に見た、見えないドームが原因かな?
アレだ。地球で言うところの、大気圏みたいなやつがあるに違いない。謎は全て解けた! ……嘘だけど。
「風よりも、夜が十二日間も続くって方が問題なんだけど……」
「……二人共”ライト”が使えるよね?」
暗いことには、あまり支障を感じない。そもそも、拠点内も”ライト”で照らさないとなーんにも見えないんだもの。
でも、私の答えは不正解だったみたいで、アイラは首を振ってため息を吐いた。
「問題は、夜の間は獣が子育て期に入るってこと」
「子育て……?」
「要は、夜の方が攻撃的になるってことよ」
「それは、一人での外出は避けないとダメだね」
アイラが怪我をしたら大変だ。
「あと、多分、次に雪原草が採れるのは昼になってからね」
「マジで?」
「マジです」
「”エリアライト”で照らしても?」
「収穫期が終わっちゃったんだもの」
雪原草が取れなくなるとは思わなかったから、結構ショック。だって、何気なく土やライスウッドと同じ万能資材なんだよ。
十二日も採れないなんて、心細すぎる。
「備蓄的にはどんなかんじ?」
「脱穀したら5kgにはなると思うわ」
製粉までしたら目減りはするだろうけど、今日拾ってきた花粉米も含めれば六十食分はあったはず。もちろん、私が食べる量を勘案した上での計算だからアイラだけだったらもっとイケる。
お肉類も、アイラが狩りすぎたフェット肉が大量にあるし、野菜は収穫間近。
「……うん。朝が来るまでは、拠点内の整備に勤しもうか」
「食べ物は平気そう?」
「今日、花粉米も沢山拾ったし、乾麺の類も作ってあるから余裕はあるよ。安心して大丈夫」
私がそう請け合うと、アイラはホッとしたように頬を緩めた。
ホッとしたところで、拠点に籠もっている間にやりたいことを話し合う。
「あたしは、ライスウッドを見てからじゃないと決め辛いわ」
と言うので、とりあえず廊下に一本出してみると、アイラはしばらくあーでもないこーでもないと呟いた後に、喜びに満ちた表情で、お籠り中にやりたいことをまくし立て始めた。
話をまとめてみると、まずは”裁縫”スキルで糸の素材をとってから、”木工”や”細工”で使えるように加工して色々作るらしい。やたらと熱心に語る姿に、暇つぶし用に林間学校では到底必要なさそうな道具を持ち込むくらいに手仕事が好きなんだっけと思い出す。
なんか、魔力を伸ばすのに必死になってる姿に隠れていて気付かなかったけど……
手仕事で体力が減っていくのも、アイラ的には結構なプレッシャーだったかも。
気晴らししようにも、手芸関係は全部スキルになってるから体力を使う。”ファーム”スキルを優先的に使って食料を確保しなきゃいけない状況で、気晴らしも出来ないなんて辛すぎる。
私の場合は料理を作って、食べるのが一番の発散方法。お陰で何のストレスもなく過ごせていたから、ちょっと申し訳ない。むしろ、アイラがずっと近くにいたから、ソレが嬉しくて不満なんてなかったような……
いや、あったわ。アイラが二回もぶっ倒れてくれたのは、不満だった。まあ、ソレ以外は心配することはあっても不満はなかったんだけどね。
アイラに請われるままにライスウッドの切り分けを手伝う。スキルの効果なのか、彼女がノコギリで切り分けていくと、ライスウッドが引き締まって艶を増す。こころなし、真っ直ぐになったようにもみえる。
作業の手伝いをしながら考えるのは、自分の予定だ。
とりあえず、食料庫が欲しい。ちょっと、”データストレージ”の容量が不安です。
拠点の中は”ホット”を掛けなければ基本的に気温は低いし、湿度も高くない。天然の冷蔵庫で生活しているようなものだし、少し加工するだけでも結構な日数、保存ができるだろうと思う。
問題は、場所。
”地図”を確認してみると、キッチンの奥にそこそこの広さを確保できそう。かわりに、せっかく作った食器棚を作り直さないといけないか。
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