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雪山登り

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 アイラが魔力枯渇で眠り込むのを確認してから、かごを背負って拠点を出る。
彼女が寝ている間に、いつもより少しだけ遠くへ行ってみる予定。
そうは言っても、この浮島自体が小さい上に少し拠点を離れると雪が深くなる。そんなに遠くまでは行けないだろう。

 外に出ると、冷たい空気が露出している部分に突き刺さる。いつも、一人で採集に出てくれるアイラには、本当にすごい。
なんか、いつも怒ってばっかりで申し訳ない気分だ。
どうやら太陽モドキの上を通りかかる時期になってきているみたいで、周りは暗い。
”ライト”を錬金棒の先端に掛けてから、右の方に向かって歩き出す。
雪の深いところにうっかり踏み込まないように、錬金棒で地面を突きながら歩いていると、周囲にウサギモドキのスービットが近づいて来た。
もしかしたら、好奇心が旺盛なのかも。ただ、こんな見た目なのにも関わらず、ここの生き物は全部雑食性。スービットが私のことを獲物として見ている可能性は捨てきれない。容赦なく”フラッシュ”をお見舞いして、ショック死したものをせっせと”データストレージ”に放り込む。
アレだ、過剰防衛……じゃなくて、なんだっけ?
先手必勝的な方向で。

 ちなみに、進む先に右手の方を選んだのは、ライスウッドの花が落ちてることが多い方向だから。こっちの方に、使い勝手のいい素材だと思われるライスウッドが生えてるんじゃないかと期待しているのです。
拠点を庇うように広がる空間を抜けると、割とすぐに下空が見える。これ、気をつけないと、うっかり落ちちゃいそうだよね。
アイラに、きちんと注意しておかなくちゃ。狩りに夢中になって、ヒューンなんてことになったら、泣くに泣けない。

 クルリと振り返るようにして、方向転換。向きを変えたことによって左手側になった、足跡の刻まれていない上り坂を登っていけば、知らない場所にいける。
ここから見えるだけでも、大きくて透き通った木の姿が確認できた。
きっと、アレがこの島の神樹に違いない。
神樹よりも手前の方に、小規模な木立が見えるからそちらに向かう。
それにしても上り坂って、実際の距離よりも疲れやすい。雪が積もっているから、なおさらか。雪の深さが膝下までというのも疲れる原因かな。
顔がヒリヒリするのを我慢するのもキツイし、一旦休憩!
自分の周りに”ホット”を四回重ねがけして暖を取る。一回掛ける毎に五度ずつ気温が上昇するのって、随分と大きい。風が吹いていても、その風までが暖かくなる不思議仕様は、本当に素晴らしい。
水筒から白湯を飲んで一息入れたし、雪坂登りを再開する。
これ、帰りは橇で帰れたら最高だよね。そのまま、空に落ちる可能性がなかったら試してみたところだけど、ちょっとその危険は冒したくない。
楽する妄想は思考の彼方に追いやって、ひたすら登る。目的の木立に辿り着いたのは、二度目の休憩を入れた後。
目の前の白い竹林を”検索”した結果は、『ライスウッド』。
探しもの、みーつけた!

 ライスウッドの木立の中は、まるで宝の山だ。落ちた花だけでなく、花粉も雪の上に散らばっている。それらをせっせと”データストレージ”で拾い出しては雪だけを地面に戻す。

「……あれ? もしかして、歩いてきた道の雪もそうやってどかせば歩きやすかった……?」

 今更気づいても後の祭り――いやいや、帰り道で使える!
花粉だけを拾って帰っても仕方ないので、持ってきたノコギリを使って一本切り倒して”データストレージ”に入れて持ち帰る。
入る長さに切り分けたら、最終的に四つになった。最後の一本はちょっと短いけど、二十メートルくらいあったのかも。

 ライスウッドの切り分けを終え、他に使えそうなものを探すために木立を抜けた。その少し先に、小さめの木がまばらに生えているのが見える。
時間を確認してから、”データストレージ”を使って雪かきをしながらそちらを目指す。辿り着いた先で、暖を取るために一旦休憩。
初めて見るこの木は、二階建ての建物くらいの高さの、白い実がたくさんなっていて青白い色をしている。
休憩がてら”検索”してみて、結果にがっくりと肩を落とす。

・青白い木 → ビーズウッド
 外皮は強靭だが、中はスポンジのようになっている。
 食用不可。
 対応スキル:”裁縫” ”人形師” ”錬金術”

 食べれないのかぁ……
食べれるものを期待して遠出してきた身としては、ちょっとキツイ。
でもまあ、裁縫で使えるみたいだし、アイラのために採っていってみよう。とは言え、枝や実には手が届かない。仕方がないから、切り倒して必要そうな分だけ持っていくことにしよう。
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