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魔力酔い

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 私が出入り口の工事を終わらせてから寝室を覗いてみると、アイラは体調を崩して寝込んでた。慌てて”検索”先生にお訊ねしたら、短時間で複数回の魔力を成長させたことによる魔力酔いだと言うお返事に青くなる。
……なんか、お察し。
今日もずーっと、寝室とお風呂の往復してたもんね……

「アイラ、魔力上限、何回増えた?」
「今日はお昼ご飯の後からで、二回……」
「なんかね、”検索”先生がおっしゃるには、短時間に魔力を何度も成長させると具合が悪くなるんだって」
「えぇぇ……」
「魔力上限を増やすのは、午前の早い時間とおやつの時間の後の二回までにしよ」

 なんか、抗議の声が聞こえたけど聞こえないふりをして寝室を後にする。
一時間もすれば症状も治まってくるみたいだし、いきなり体力切れで昏倒したり、魔力酔いでぐったりしてみたり。
心配ばっかり掛けてくるアイラには、いい薬です。

 その間に、私はご飯の用意でもしておこう。
ツルンと食べやすいおウドンなんか、いいかも。肉がほしいと言われるかもしれないから、肉うどんに出来るようにしておこうかな。
あ、居間の整備に取り掛かれるようになったんだし、調理台くらいは作っておこう。
ふふふ~ん♪
ついでに調理器具を置く用の棚も作らなきゃ。
いい加減、地面に置くのは終わりにしたい。



 という訳で、やってきました錬金室!
今日、何回目? ってかんじだけど、色々と作れるのが楽しいので気にしない。
まずは調理台から作ってしまおう。
調理台の素材は青土。食材が変に温まりすぎないですむし、これがいい。
少し、耐久性に不安を感じるけど、そこは出来上がってから”ハードニング”を掛ければ補えるんじゃないかなーと思ってる。だってほら、素材は『土』だし。
”トーチ”を配置するためのくぼみと、その上に鍋を乗せるための足は必須だね。コレを三つ配置して、そのお隣は作業台。すこーしだけ、シンクを設置する方向に向けて傾斜をつけておく。最後に調理台の奥に、目隠しを兼ねて出来上がった料理を置けるようにする……と。
頭の中で、きっちりと理想の形を思い描いてから、早速グールグル♪
光が錬金釜の上に集まっていき、実体化する瞬間を狙って”データストレージ”!
無事に調理台が収納されたのを確認してから、シンクの材料を錬金釜に投入する。
 こっちの材料はアルミニウム。調理台とサイズを合わせて作るシンクには、予め排水用の筒がついてる。料理をするたびにお外に捨てに行くのが面倒だったんだもの。
長さが一メートルもあれば、居間が水浸しになることはない……と思いたいところ。
 続いて、シンクの上に取り付ける給水タンクも、アルミニウムで作ってしまう。
毎日、雪を補充するのを忘れないようにしなければ……
たまに補充を忘れそうになるんだよね。水道って、便利だったんだとつくづく思う今日この頃。
その後も、せっせと食器棚や調理道具台、おまけの鉄鍋を大中小と三つ作る。
うーん♪ 調理道具が充実してきたね!
ウキウキしながら、鉄鍋大に中小の鍋を入れて錬金室を後にした。
まさか、居間が大変なことになってるなんて思わずに。



 居間に入って”エリアライト”。
流石に部屋が広いから、一回では明るくなりきらない。奥の方も明るくしておこうかと思いつつ、そちらに視線を向けた瞬間、思考が停止した。

「……えう!?」

 鉄鍋が手から落ちた音が鳴り響き、その音で我に返ると、慌てて再度”エリアライト”で問題の場所を照らし出す。
そこに積み上げられているのは、大量のイタチモドキ、アーフェットとスーフェット達の死骸。
そう言えば、アイラは狩りをすると言って包丁を持ち出してたっけ――
彼女の午後の行動を思い出して、ため息を吐く。
狩った獲物をどこに置くのか、きちんと事前に話し合っておけばよかった……
まだ”データストレージ”の容量が少ない彼女が、大量に獣を狩ってきたのも大きな誤算だ。こんなに獲ってきて、どうするつもりなのかと小一時間ほど問い詰めたい。

 頭を振って思考を振り払うと、アイラが狩ってきた獲物の見聞をはじめる。
小型犬程度の大きさのスーフェットは、”フラッシュ”で仕留められたみたいで全体的にきれいな状態。アーフェットの方はとどめを刺す必要があったらしく、血塗れだ。
アーフェットの血は床にまで滴っていて、もう泣きたい。ここの生物って血の色が白いから、まるで牛乳をぶちまけてしまったみたいです……
……そう言えば、母乳って血小板を除いた血液なんだって、春に赤ちゃんを生んだ従姉が言ってたっけ。……牛乳モドキ、ゲットできるかな?
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