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イワシ雲
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百聞は一見に如かず。
ってな訳で、アイラに外に連れ出されて空を見上げる。
「ほら、あのへんに泳いでるでしょ」
そう言われて見上げた青緑色の空には、真っ白なイワシ雲。
「……雲、だよね?」
「違うわよ。ちゃーんと、よく見てみるとイワシのお腹」
「えええ?」
言われてじっと目を凝らす。
……やっぱり、私には普通の雲にしか見えないよ。
私、特別に目が悪いわけじゃないはずなんだけど……
うーんと悩んで、ポンと手を打つ。
「ちょっと、望遠鏡作ってくるわ」
「じゃあ、あたしはその間に食料集めとく」
私は一旦、中に戻って望遠鏡作り。
昨日出来た水晶と、鉄あたりで多分出来るはず。
というわけで、早速、錬金室でグールグルのポン!
材料を入れすぎたのか、想定よりも大きな望遠鏡が出来上がった。
そういえば、流石にそろそろ大きな錬金釜用のかき混ぜ棒を作らないと。いつまでもクワの棒部分でかき混ぜてるのもナンでアレだよね。
でも、出来ることなら拾える枝を使いたいところ。
そんなものが存在するのかどうかはまた別のお話になるけど。
大急ぎでアイラの下に戻ると、彼女はせっせとカゴの中に収穫物を放り込んでいた。そんなに長く時間がかかった訳でもないのに、私が一人で集める量の倍は採れている様子だ。うーん、私も頑張らないと……
「おかえり、レイちゃん。随分と大きいのを作ったのね」
「なんか、材料入れすぎたっぽい」
おかしそうに笑うアイラに返しつつ、空に向かって望遠鏡を覗いてみる。
「うわ……ほんとだ……」
覗き込んだ先には、真っ白な、魚の腹・腹・腹・腹・腹。
ビックリするほど遠くまで、魚のお腹が並んでる。
たまにその一部がごっそりと、大きな魚に捕食されると空の青緑が一瞬だけ広がり、またすぐに魚の腹によって埋められた。
「ねね、あたしも見たい」
「あー、うん。どうぞ」
「ありがと」
クイクイと服の裾を引かれて、おねだりされたものを渡すと、アイラはソレを覗き込んで歓声を上げている。
「アイラはアレが魚だって知ってたじゃない?」
「”検索”してたからね」
「私も今夜あたり、この世界のことをお勉強してみるわ」
「そうねぇ。あたしからの伝聞よりも、自分で調べた方がいいかも」
この世界の仕組みを少し勉強して、それから魚をとる方法を考えよう。
頭上の鰯の群れを見ながら決意をしていると、アイラが何かを呟くのが聞こえた。
「ん?」
「なんでもない」
何を言ったのかと首を傾げて彼女の方を見ると、アイラは首を横に振る。
まあ、大したことじゃないんだろう。
「魚は後回しにするとなると――」
「肉ね」
「……うん、肉だね」
即座に『肉』といいだすなんて、アイラはどれだけ肉に飢えてるの。
もうちょっと、ジャーキー類をふんだんに使ったご飯を出してあげるべきだっただろうか? いや、でもそんなことをしたら二日も保たないしなぁ……
「あのウサギモドキって、結構すばやくって捕まらないのよね」
「試したの?」
「何度も追いかけてるわ。獲ったらご飯に出てくると思って」
私の想像より、ずっと切実に食べたかったっぽい。
ごめん。お昼に肉っぽいのをもうちょい出すね!
「ジャーキー類を分けてもらうのも考えたんだけど、保存のきくものは出来るだけ後に回さないと辛くなるし、やっぱり生の肉とは違うもの」
「……確かに」
ジャーキーさん達じゃ、代役にならないことが判明しました。
となると、なんとしてでも一匹は今日中に捕まえる必要があるってことだよね?
えう!?
どうしよう??
なにかいい手! なにかいい手はありませんか!?
ってな訳で、アイラに外に連れ出されて空を見上げる。
「ほら、あのへんに泳いでるでしょ」
そう言われて見上げた青緑色の空には、真っ白なイワシ雲。
「……雲、だよね?」
「違うわよ。ちゃーんと、よく見てみるとイワシのお腹」
「えええ?」
言われてじっと目を凝らす。
……やっぱり、私には普通の雲にしか見えないよ。
私、特別に目が悪いわけじゃないはずなんだけど……
うーんと悩んで、ポンと手を打つ。
「ちょっと、望遠鏡作ってくるわ」
「じゃあ、あたしはその間に食料集めとく」
私は一旦、中に戻って望遠鏡作り。
昨日出来た水晶と、鉄あたりで多分出来るはず。
というわけで、早速、錬金室でグールグルのポン!
材料を入れすぎたのか、想定よりも大きな望遠鏡が出来上がった。
そういえば、流石にそろそろ大きな錬金釜用のかき混ぜ棒を作らないと。いつまでもクワの棒部分でかき混ぜてるのもナンでアレだよね。
でも、出来ることなら拾える枝を使いたいところ。
そんなものが存在するのかどうかはまた別のお話になるけど。
大急ぎでアイラの下に戻ると、彼女はせっせとカゴの中に収穫物を放り込んでいた。そんなに長く時間がかかった訳でもないのに、私が一人で集める量の倍は採れている様子だ。うーん、私も頑張らないと……
「おかえり、レイちゃん。随分と大きいのを作ったのね」
「なんか、材料入れすぎたっぽい」
おかしそうに笑うアイラに返しつつ、空に向かって望遠鏡を覗いてみる。
「うわ……ほんとだ……」
覗き込んだ先には、真っ白な、魚の腹・腹・腹・腹・腹。
ビックリするほど遠くまで、魚のお腹が並んでる。
たまにその一部がごっそりと、大きな魚に捕食されると空の青緑が一瞬だけ広がり、またすぐに魚の腹によって埋められた。
「ねね、あたしも見たい」
「あー、うん。どうぞ」
「ありがと」
クイクイと服の裾を引かれて、おねだりされたものを渡すと、アイラはソレを覗き込んで歓声を上げている。
「アイラはアレが魚だって知ってたじゃない?」
「”検索”してたからね」
「私も今夜あたり、この世界のことをお勉強してみるわ」
「そうねぇ。あたしからの伝聞よりも、自分で調べた方がいいかも」
この世界の仕組みを少し勉強して、それから魚をとる方法を考えよう。
頭上の鰯の群れを見ながら決意をしていると、アイラが何かを呟くのが聞こえた。
「ん?」
「なんでもない」
何を言ったのかと首を傾げて彼女の方を見ると、アイラは首を横に振る。
まあ、大したことじゃないんだろう。
「魚は後回しにするとなると――」
「肉ね」
「……うん、肉だね」
即座に『肉』といいだすなんて、アイラはどれだけ肉に飢えてるの。
もうちょっと、ジャーキー類をふんだんに使ったご飯を出してあげるべきだっただろうか? いや、でもそんなことをしたら二日も保たないしなぁ……
「あのウサギモドキって、結構すばやくって捕まらないのよね」
「試したの?」
「何度も追いかけてるわ。獲ったらご飯に出てくると思って」
私の想像より、ずっと切実に食べたかったっぽい。
ごめん。お昼に肉っぽいのをもうちょい出すね!
「ジャーキー類を分けてもらうのも考えたんだけど、保存のきくものは出来るだけ後に回さないと辛くなるし、やっぱり生の肉とは違うもの」
「……確かに」
ジャーキーさん達じゃ、代役にならないことが判明しました。
となると、なんとしてでも一匹は今日中に捕まえる必要があるってことだよね?
えう!?
どうしよう??
なにかいい手! なにかいい手はありませんか!?
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