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能力育成と魔力の無駄遣い

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「ところでレイちゃん、今、魔力と体力の最大値っていくつ?」

 アイラがそう訪ねてきたのは、食後のお片付けが終わったタイミングでのこと。
唐突な質問に首を傾げつつも、プロフィールを開いて確認してみる。

「魔力は121で体力は216かな」
「そっか。体力は負けてるなぁ……」

 私の答えを聞いてアイラは唇を尖らせつつ、不満を表明。

「……あれ? アイラって体力をメインで伸ばす予定じゃなかったっけ?」

 確か、私は暖房を切らさないために魔力をメインに、アイラは食料確保のための”ファーム”スキルを活用するために体力をメインに伸ばすって話になってたはず。
なんか、方針を変えるような話し合いをしたっけ?

「そのつもりだったんだけど、体力って寝ないとそれほど回復しないのよ……」
「ああ……アイラは私ほどは回復しないんだっけ」

 その言葉で、思い出したのは”大食い”スキルのこと。このスキルのお陰で、私の体力の回復速度と成長率がおかしいかもしれないんだよね。

「なので、朝か夜に魔力なり体力なりを片方集中的に使い切ってお昼寝したらどうかなーと思って、今日は試してみました」
「んんん? どういうこと?」
「具体的には、午前中に魔力を使い切ってお昼寝して、午後には体力を使い切ってお昼寝してきました」
「まぁ、どっちかを使い切ると意識を失うのは分かるけど……」

 それで、魔力や体力が増えるとは限らないんじゃなかったっけ?

「ピンときてないみたいだけど……使い切るための消耗をはじめる時に、最大値まで回復させて実験してみたの。結果、午前中のお昼寝明けには魔力の最大値が。午後のお昼寝明けには体力の最大値が上がったわ」
「……すごいね」

 なにがすごいって、仮説を立ててすぐに行動に移すところ。
私だと、あーだこーだと悩んでしまって、すぐには動けない。

「多分、最大値まである状態で使い切ると、目が覚める頃に上限が増えるんじゃないかと思うの。明日、レイちゃんも試してみて」
「私も?」
「うん。どのみち魔力も体力も伸ばせるうちに伸ばしたほうがいいと思う。足りなくなってからじゃ遅いでしょ」
「そうだね……」

 実際、椅子を作った時には一つ分の体力が足りなくて後回しにしたし。
増やせる時に増やすとべきなのは、考えるまでもない。

「そしたら、今からでもやってみよっか」
「あたしはいつからでも構わないけど……」
「つきましては、ご相談がございます」
「改まって、なに?」
「土魔法と火魔法のレベル上げるにあたって、何をすればいいと思う?」

 姿勢を正しつつ訊ねると、アイラは緊張した表情を浮かべ、内容を聞いて椅子から転がり落ちた。

「そんなの、ひたすら使い続けるしかないじゃない!」

 スッコケるなんて、失礼な。結構真面目な問題なのに。

「結構、困ってるんだけど……火魔法は部屋の温度を上げたり料理に使ってるけど、逆に言うとそんなに頻繁に使わなくてもいいんだよね」
「ふむふむ?」
「そんでもって、土魔法。こっちは、部屋を拡張する時や改造する時くらいしか使ってない。どっちの魔法も、魔力を消耗させる用途で使う方法が思いつかないんだよ」
「あー……。無駄に使うのが苦手なのか」

 ……そういう訳でもない気がするけど。
でも、消費だけする使い方が思いつかないのは事実だ。

「いい方法、ない?」
「んー……。火魔法って、燃やすものがなくても燃えてるじゃない?」
「うん」
「水とか雪につけても燃えるの?」
「それは、すぐに消えちゃった」
「じゃあ、魔力を減らす時には水か雪につけながらやったらいいじゃない」

 なんと。

「土魔法って、”ディグ”よね」
「うん。孔を開けるやつね」
「サイズも自由に変えられるのよね?」
「四角ければ?」
「じゃあ、一ミリ角で”ディグ”を使ったらどう?」

 目からうどんこ!



 まずは、アイラの提案どおりに土魔法と火魔法を使って魔力を削る。
先に土魔法から使いはじめたのは、頑張ればレベルが上がりそうだから。
なんか、レベルが上がるって嬉しい響きがある。
特に魔法の場合だと、使える魔法が増えたりするし。
せっせと、外に放り出しっぱなしになっていた青土ブロックを削りはじめてしばらくすると、頭の中にアナウンスが流れる。

”土魔法、の、レベル、が、上がりました。”ハードニング”、が、使えるようになります”

 早速、使えるようになった”ハードニング”について調べてみると、土を岩のように固くする魔法だと言うことが分かった。しかも、レベル立方メートル分も。
土を掘り抜いて作っている今の住環境には、そこはかとない怖さもある。この魔法で崩れてきたりしないよう、補強するのもいいかもしれない。
一応、補強した場所を”ディグ”で掘れるかどうかの確認もした上で、居住空間全体を補強して回る。少しだけ補強しそこなったところもあるけど、そこはまた明日やればいいと言うことにして、寝室で最後の魔力を使い切る。
ぴったり一時間後に目を覚まして寝室を出ると、アイラが椅子で足をブラブラさせながら待っていた。

「おはよ、レイちゃん。時間感覚のアラームって、こういう時に便利よね」
「夜だけど、おはよ。133になってたよ」

 私の報告に、アイラは満足そうな笑みを浮かべる。
自分の仮説が正しいのが証明されると、何とも言えない誇らしさがあるもんね。
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