レイとアイラの異世界雪山生活

料理合成

　今日は朝の八時に起床。
正直まだ眠いけど、心を強いてアイラの横から抜け出した。
昨日みたいに、アイラの朝食を強制的に抜くような真似は、もういたしません。
――という訳で、早速朝ごはんの支度に取り掛かるつもりなんだけど……
メニューに困る、今日このごろ。
私のおやつシリーズのジャーキーさん達で、まだ使っていないのはビーフジャーキーさんお一人。他のだって全部を使ったわけじゃないから残ってはいるんだけど、どうしてもジャーキー系は風味が似通ってしまう。
それで、おにぎり＆ふりかけにしてみたり、と策は講じているんだけど。
結局、食材の種類が少なすぎるのが原因だよね。
……せめて、雪原草のモミを外しておけば良かったよ。トホホのホ。
まあ、粉に出来なきゃ料理の幅も広がらないんだけど。
石臼も作らなくては……
粉があったら、膨らまないパンなら作れるはず。
ため息混じりに脱穀済みの雪原草が入った土鍋を眺めて、ポンと手を叩く。

「そっか、”合成”の方も試してみよう」

　私が普段便利に物を作るために使っている”錬金術”スキルの技術は”融合”だ。
これは、”錬金術”スキルレベルと同種類の無機物をくっつける技術。
くっつけ終わった時の形に関しては、スキル保持者がその時々に思い浮かべた形になる。――私は、それを利用して思い浮かべた姿のものを作っているわけだ。

　”融合”が無機物なら、”合成”はなにをする技術か。
”合成”は、”錬金術”スキルレベルと同種類までの有機物の形を変える技術だ。
雪原草の茎を使ってマットを作った後は使ってなかったんだけど、なんだかイケそうな気がする！
なにせ、”錬金術”スキルの元になったと思われるゲームでも、小麦粉を始めとして、パイやケーキまでもが作れたはずだ。
そうと決まれば、善は急げ！
早速、土鍋にヘラを突っ込んでグールグルっと”合成”開始。
小麦粉――雪原草粉が出来たら、何を作ろう？
ガレットは具が足りないし、パンが妥当なラインかな。
イースト菌なんか持ってないから、ぺったんこなパンになってしまいそうだけど、ピタパンだったら具があってもなくてもそれなりに美味しく食べられるかも。
作るんだったらピタパンだなと思った瞬間、土鍋の中に光が集まりだす。
集まった光がどんどん膨らみ、土鍋よりも大きくなった。
咄嗟に”データストレージ”で溢れ出したものを受け入れられたのは、大きな物を錬金するたびにそうしていたからだと思う。
次々と”データストレージ”に飲み込まれていくピタパンを呆然と眺めながら思ったのは、『しばらく、パンは焼かなくていいな』と言う、現実逃避混じりの感想だった。

　なにはともあれ、大量に出来てしまったピタパンについては、備蓄が出来たと思うことにする。実際、出来上がったピタパンの数は百個。毎食毎に私が四つにアイラが一つ食べる計算で、二十食分。
余裕があるかどうかで言うなら七日足らずと微妙だ。それでも、現状を考えれば十分な量がある。
とりあえず、すぐには主食に困らなくなったのはいいことだ。うん。
でもまあ、美味しくいただくためには、中に入れるものを作らないとね。
悩んだ挙げ句、結局作ったのはオニオンフラワーのピリ辛炒めと、オニオンフラワーとポークジャーキーの煮込みだったのは……
食材の種類が少ないせいだと諦めて欲しい。
もっと美味しいものを色々と作れる、素敵なお料理担当じゃなくてアイラには申し訳ない限りです。